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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

拡大教科書問題

多くの弱視児童・生徒にとって拡大教科書は学習上なくてはならないものです。しかし以前は拡大教科書は法的には教科書とは位置付けられておらず、盲学校のごく一部の教科でしか発行されていませんでした。よって、拡大教科書を必要とする弱視児は、拡大写本ボランティアに依頼し、製作してもらうしかないという状態でした。そこで2000年から弱視者問題研究会は、必要とする全ての弱視児童・生徒にニーズに応じた拡大教科書を確実に手渡せるよう運動を開始しました。

まず拡大教科書の普及の足かせになっていたのは著作権問題でした。そこで著作権法改正が最初の目標となりました。

また、肥田美代子元衆議院議員や鈴木寛元参議院議員をはじめ、多くの理解ある国会議員も国会の委員会で取り上げて下さいました。

そして、2002年6月、著作権法改正が実現しました。著作権法第三十三条に第二項が追加され、拡大教科書に関する著作権の制限が規定されたのです。

次の課題は無償給与です。当時、盲学校に在籍する弱視児童・生徒には拡大教科書が無償で給与されていましたが、小学校、中学校、高等学校に在籍している場合、全額自己負担しなければならないという状態でした。

このような国会での質疑を経て、2004年度から義務教育段階の拡大教科書を無償にする予算措置が講じられました。これにより、小学校、中学校に在籍する弱視児童・生徒の拡大教科書は、盲学校と同じように教科書出版社発行のものでも拡大写本ボランティア製作のものでも無償で給与されるようになったのです。しかし、この時高校についての予算措置はなされませんでした。

また、拡大教科書の無償給与が始まった2004年度は情報が弱視児やその保護者に十分に伝わらなかったり、拡大写本ボランティアグループが国との複雑な契約手続に戸惑ったり、ボランティアでも年度当初に全ての拡大教科書を納入しなければならないという期限に右往左往させられるなど全国各地でさまざまな混乱が生じました。

その後、徐々に弱視児やその保護者に拡大教科書に関する情報が伝わっていきました。同時に拡大教科書製作の依頼が拡大写本ボランティアに殺到し、拡大教科書製作がパンク状態に陥り、最終的に依頼を断らざるを得ないという状況になりました。そこで弱視者問題研究会は、安定的な拡大教科書供給体制の構築と拡大写本ボランティアへの使いやすい教科書デジタルデータの提供を求めていきました。

そして2008年6月、悲願であった「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」いわゆる教科書バリアフリー法が成立します。この法律により教科書出版社には拡大教科書の発行の努力義務と教科書デジタルデータの提供義務が課せられました。

しかし、教科書バリアフリー法が制定された翌年から全ての弱視児に拡大教科書が行き渡るという状況にはなりませんでした。

そして2011年度の小学校教科書全面改定時、2012年度の中学校教科書全面改定時からすべての教科の拡大教科書が発行されるようになりました。これで義務教育段階においては拡大教科書の安定的な供給という私たちの悲願が達成されたことになります。

しかし、高等学校段階については視覚障害教育の専門機関である盲学校でさえ必要な拡大教科書が十分に発行されていないという問題が残っています。また、通常の高校学校については供給体制を考える前に、まずは費用負担の問題を解決しなければなりません。

教科書ではありませんが、2015年11月、総務省と文部科学省は選挙に関する副教材を作成し、全国の高校生に配布しました。しかし、拡大版や点字版は作成されませんでした。そこで、弱視者問題研究会は総務大臣と文部科学大臣に次の要望書を送付しました。

拡大教科書の自己負担問題について、舩後靖彦議員が2021年6月8日に国会で質問されました。次の文書はこの質問の議事録です。