民主党の肥田美代子でございます。
中山文部科学大臣に対する初めての質問をさせていただきます。
私は、まず義務教育に関して大臣の御所見を伺いたいと思います。
今回の三位一体改革の中で、大臣は改めて義務教育は国の責任であると主張されました。午前中の審議の中でも、土俵際で踏みとどまった、これからは押し返すのみともおっしゃいましたし、さらには国庫全額負担もあり得ると、数えていたら四回か五回おっしゃいました。大臣の熱さが伝わってくるようでございます。
そこで改めて、いま一度、すべての子供について教育を受ける権利、それを保障して教育の機会を確保することは国の責任であるという御所見を伺っておきたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。
私が日ごろから大変尊敬申し上げている肥田委員からこうして質問を受ける立場になりまして、大変恐縮しているところでございます。
今の義務教育、国の責任であるということについて大臣どう考えるかという御質問でございましたが、まさに私はそのように考えているわけでございまして、義務教育というのは、憲法の要請に基づき、知育、徳育、体育の調和のとれた児童生徒を育成し、国民として共通に身につけるべき基礎的資質を養うものでありまして、国はすべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な責任を負っている、このように認識しておるところでございます。また、義務教育は、憲法が保障する国民の権利であるとともに、国家社会の発展を担う人材育成という国家戦略に位置づけられているものでございます。
厳しい経済環境の中で国際競争を生き抜くたくましい人材の育成とともに、個人として見ますと、幸せを自覚しながら、そして有意義な人生を送れるようにするための土台づくりとして国が全国的な視野に立って教育改革の方針を打ち出す必要がある、このようにも考えているわけでございまして、今後とも国の果たす役割は極めて大きい、このように考えておるところでございます。
ただいまの御所見の中にも、もちろん障害を持つ子供たちも含まれていると受けとめました。この子供たちのために国がなすべき課題は本当に山ほどございます。きょうは限られた時間の中でございますので、目の不自由な子供の教育について質問いたします。
盲学校に通う視力障害の子供たちにつきましては、全盲であれ弱視であれ、教科書一つとりましてもそれなりの配慮がなされております。ところが、通常の学校に在籍する弱視の子供たちは、全盲の子供と晴眼の子供の谷間に置き去りにされているというのが実情でございます。私たちも随分長い間そのことに気づかなかった。このことを私も深く反省をいたしております。
この子供たちの教科書問題について、当時、遠山文科大臣は平成十五年六月の本委員会で、拡大教科書を無償という形で予算措置すると明言されました。谷間の子供たちに光を与えてくださったわけでございます。そして、河村前文科大臣も平成十六年五月の本委員会で、児童生徒のすべてに国が最終的な責任を持って適切な教育を受けられるように教育環境を整備する、そういう御趣旨の御答弁をいただきました。これは、歴代の文科大臣が忘れられていた弱視の子供たちに高い見識を示してくださったと私は大変評価しております。
こうした国会論議を経まして、拡大教科書の製作費用も保護者負担から国の無償給付となりました。しかし、大きな制度転換でありましたので、初年度のことし、実施過程では改善すべき幾つかの点も浮き彫りになりました。どんな改革の課題が明確にされたのか、現行制度の運用について順次質問させていただきたいと思います。
まず、弱視学級や普通学級に在籍する弱視の子供の中で二〇〇四年度に拡大教科書の無償措置を受けた子供たちの数は何人ぐらいか、また、無償措置された拡大教科書の冊数はどのくらいか、お尋ねしたいと思います。
先生からお話がございましたように、障害のある子供たちについて一人一人の教育ニーズに応じて適切な教育に努めていくことが大切でございまして、弱視の子供たちにとって、いわゆる拡大教科書を使用するということは学習を進める上で有効な方策の一つだと考えております。
こうした観点から、平成十六年度から、通常の学級に在籍可能な視覚に障害のある子供たちに対しましても拡大教科書を無償給与できる取り扱いとしたところでございます。平成十六年度において、都道府県教育委員会からの報告に基づき国が無償給与を行った通常の学級に在籍して拡大教科書を使用する児童生徒数及び給与冊数は、小中学校合わせまして五百十八名分、四千三百三十八冊となってございます。
今答弁がございました五百十八名、私はどう考えても少ないなと実感いたしております。
弱視の子供は現在二千名から三千名と推定されております。その根拠は、全国で全盲の人たちが三十万人いらっしゃる、発生率から考えて、就学適齢期の子供は三千人から五千人と推定されております。このうち拡大教科書を必要とする子供が約六割と計算するならば、三千人だとすれば千八百人の子供たち、それから五千人だとすれば三千人ということになりますが、この二千から三千人の子供たちの中で、今回、国の計らいで教科書が手にできた子供が五百十八名でございます。ちょっと少ないなという気がいたします。
これは、学校現場や子供たちが、拡大教科書の無償措置について情報を持たなかったか、それとも知る機会がなかったという結果ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
通常学級に在籍可能な視覚に障害のある児童生徒に対する拡大教科書の無償措置につきましては、昨年の十二月以降、私どもといたしましても、会議や文書などさまざまな機会をとらえまして、教育委員会に対する周知に努めてきたところでございます。いろいろな事務連絡あるいは関係者の連絡協議会、説明会等々を通じまして周知に努めたところでございます。
今後とも、拡大教科書の無償措置につきましては、より一層の周知が図られますよう、引き続きさまざまな機会をとらえて対応してまいりたいと思っております。
拡大教科書の無償給付は、就学適齢期にある弱視の子供の実態把握とも関連しております。今のところ、何度お聞きしましても、現状を把握していないというお答えが参っておりますけれども、政府の責任で拡大教科書が無償給付されることになった以上、この現実を踏まえたら、これまでのように把握しておりませんでは済まないんじゃないかと私は思います。
さらに、私、先ほど二千人から三千人と言いましたけれども、本当に子供は一人一人なんですよね。ですから、そういう大ざっぱなくくりをすること自体が、私は子供たちに対して大変失礼だと思っております。
それで、実態の把握のないまま今後の方策を考えることは、暗やみで鉄砲を撃つということに等しいと思いますので、ぜひ子供たちの教育環境をよりよいものにするためにも、基本的なデータであります弱視の子供たちの就学実態を調査していただきたいと思います。どうしてもできないとおっしゃるならば、できない理由を述べていただきたいと思います。
通常の学校の特殊学級に在籍しております弱視児童の数につきましては、平成十五年五月一日現在で、小学校百八十三名、中学校五十四名でございますが、通常の学級に在籍している数は把握しておりません。
私の、思い出したんですけれども、いつも机、一番前に座っている同級生がいたんですね。どうしてかなと思って後で聞きましたら、実はこうだったんだという話を聞きましたが、そのように、やはり知られたくないという子供もいるわけでございまして、通常の学校に在籍する弱視児童の実態調査につきましては、一つには視力の数値のみで特定できるものではありませんし、また障害を知られたくない保護者とかあるいは児童生徒への配慮も必要であるということから慎重に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。
お言葉を返すようですけれども、もちろん子供のプライバシーも大事でございます。しかし、一番最初に申し上げましたように、そういうことの結果、谷間に落ち込んでしまって、今まで教科書も何もなくてボランティアの人たちに助けられてきた子供たちのことを考えますと、大臣、やはり視力検査もするわけですし、大体の数をきっちりつかんでほしいんですが、できるだけのことは一度調査してみるという御答弁をいただきとうございますが、いかがですか。
先ほど来お話し申し上げておりますように、通常の学校に在籍する弱視の児童生徒の実態については、視力の数値のみで特定できるものでもなく、また障害を知られたくないという保護者への配慮、子供たちへの配慮も必要であることでございますので、私ども、もう少しこの点については研究をさせていただきたいと思っております。
知られたくないということの配慮ということで、もしどうしても調査をされないということでしたら、私は今回教科書を無償にされる政府の姿勢としては間違いだと思うんですよ、税金を使うわけですから。
では、対象がどれだけいるかということは、知られたくないか知られたいか、子供たちに聞けばいいわけでございまして、文科省が勝手に決めることじゃないと思いますが。もう一度お願いします。
よく研究してまいりたいと思います。
前向きの御答弁ととらえさせていただきます。次の質問ではぜひ人数を教えていただきたいと思っております。
そこで、拡大教科書の無償措置の手続が煩雑過ぎる、こういう問題が浮き彫りになってまいりました。ここで、拡大教科書に係るボランティアの事務作業を考えてみたいと思います。
ボランティアの方々は、まず学校と話し合います。次に市町村教育委員会への手続、都道府県教育委員会への手続、最後に文部科学省に手続をとります。このほか、四月には前期分、九月には後期分、転学扱い分といった事務作業に加えて、納入通知書、完了通知書の書類も提出しなければならないんです。過渡的にはやむを得ないとしても、すべての子供の義務教育に国が責任を持つという大臣の重い決意からしますと、せめて申請手続は行政が行うことが正しいのではないかと私は思います。そして、ボランティアの人々には拡大教科書製作に専念してもらいたい、なるべくいい本をつくってもらいたい、その努力の方に力を傾けてもらいたいと私は思うわけですが、申請手続はまだボランティアでないといけませんか。それとも、行政でやりましょうというお答えが出ますでしょうか。改善すべき点があったら、お答えください。
拡大教科書の無償給与は、国と拡大教科書を作成しているボランティア団体等との間で購入契約を締結して行うということになります。この教科書の無償給与に係る事務手続につきましては、したがって国の会計制度等にのっとって拡大教科書の確実な供給や納入完了後の速やかな購入代金の支払い等の会計処理を遅滞なく行うために必要な手続ということになります。やはり国の会計制度等にのっとって行う必要があるわけでございます。
ただ、実際の事務処理においては、契約の当事者でありますボランティア団体が行っている事務の簡素化について、会計制度の範囲内でいろいろ検討するなどして、拡大教科書の無償措置が円滑に行われるように私ども努めてまいりたいと思っております。
例えば、これはまだ一つのアイデアでございますけれども、今は国が個々にボランティア団体と契約をするわけでございますけれども、ボランティア団体が約四十ぐらいあったと思います、それらのボランティア団体がネットワークを構築いたしまして、その拠点となる団体と国が一括で契約をするといったようなことになれば、双方の事務作業の一層の合理化、簡素化が図られるということもあるのかなと思ったりもして、よくこの辺も検討してまいりたい、あるいは御相談をしてまいりたいというふうに思っております。
当然ボランティアがするべきだという発想には立たないでいただきたいと思います。これは国がやるべき仕事です。そのことを私はもう一度申し上げておきたいと思います。
それから、現行の申請期限にも問題がございます。盲学校や弱視学級に在籍する弱視の子供たちが拡大教科書を使用する場合、申請期限は九月末です。
この申請期限につきまして、二〇〇四年の五月二十八日の本委員会でも質問いたしました。そのとき、平成十七年度用の拡大教科書についても、申請期限後に生じた追加分は無償給与の対象とする、拡大教科書の納期とか申請期限の弾力的な扱いについても都道府県の担当者に周知徹底を図ったという御答弁をいただきました。私も十分に納得できる答弁でございました。
しかし、平成十六年九月十日に教科書課無償給与係から各都道府県教育委員会に出された連絡事務、弾力的な扱いがどのように表現されたかと申しますと、「やむを得ない理由により需要数に変更が生じた場合はその都度速やかに報告願います」と記述されているんですね。これを弾力的扱いと読み取れない教育委員会もあったらしいんです。原則として九月末でなければいけないと行政側が弾力的な扱いを求めるボランティアに押しつけたものだから、混乱が生じたという例もございます。
こうした混乱の再発を避けるために、国会答弁にもありますが、弾力的な扱いをするということを明記したらどうですか。
ただいま先生からもお話がございましたように、拡大教科書の無償給与に係る申請期限の弾力的な取り扱いにつきましては、各都道府県教育委員会に対しまして周知をしているところでございます。文部科学省への申請期限である九月三十日以降に生じた追加分についても、その都度速やかに御報告するようお願いをしているところでございます。
これがわかりにくいというお話もあったわけでございます。私どもとしては、このような申請期限の弾力的な取り扱いにつきましては、事務担当者を対象とした会議、事務連絡などによりまして、都道府県教育委員会を通じまして域内の市町村教育委員会への周知を図ってきたところでございます。ただいまも先生から御指摘がございました申請期限の弾力的な取り扱いについては、より一層周知が図られるように工夫をして努めてまいりたいというふうに思っております。
もう一つ周知徹底を図っていただきたいことがあるんですね。これは納品期限の話なんです。
ボランティアの皆さんにとって、無償措置契約の条件が四月十五日までに全冊納品する、これは相当過酷な条件なんですね。文部科学省はボランティアと新規に無償契約を結ぶに当たり、納品期限が守れるかの確認を求めていらっしゃいます。もちろん当然のことだと私は思います。
しかし、ボランティアと教育委員会の間で納品期限の解釈をめぐって折り合いがつかず、拡大教科書の無償措置を進めることができないという事態が起きております。ボランティア側は、四月に一分冊を納め、あとは授業に間に合うように納めると説明しても、行政側は、四月十五日までにすべて納入することが規則であると主張しているわけですよ。
本委員会における文部科学省のこれまでの答弁は、四月の授業開始までに納入することにしているが、四月以降の納入にも柔軟に対応できる、そういうことをちゃんと答弁でおっしゃっているわけでございますから、こういう答弁を受けて頑張っていただいていると思います。
しかし、現場では空回りしているということを認識していただきまして、現場の担当者にわかりやすい事務連絡文書を出していただきたいんですよ。よく理解できるような文書をお願いします。
拡大教科書の納期の問題でございますけれども、これも先生お話がございましたように、分冊になっているものにつきまして、学校での授業に支障が生じないように、年度当初の授業から使用される分の分冊については四月の授業開始時までに納入する、その後に使用される予定の分冊につきましては、四月以降の納入にも柔軟に対応できるようにしているところでございまして、学校での授業に支障が生じない範囲で弾力的に取り扱っているところでございます。
お話ございましたように、このような納期の弾力的な取り扱いについて、私どもとしては、事務担当者を対象とした会議や事務連絡などによりまして、都道府県教育委員会を通じて市町村教育委員会への周知を図っているところでございますし、ボランティアの団体の方々に対しましても、団体主催の会議等で御説明するなど、納入期限の弾力的な扱いについては周知に努めてきているところでございます。
ただ、円滑な納入ということが本当に必要なことでございますので、私どもとしては、拡大教科書の無償措置が円滑に実施をされるよう、引き続き納入期限の弾力的な取り扱いの周知に努めてまいりたいと思っております。
情報公開ということも私は文部科学省の大切な仕事だと思っております。
そこで、どのように拡大教科書や点字教科書が製作されているか、こういう情報は保護者や学校現場に十分に伝わっていないんです。文部科学省は、居住地にかかわらず、どの地域のボランティアにでも作成を依頼することができると柔軟な方針で臨んでいらっしゃるわけでございますから、そうであるならば、この方針の実効性を高めるためにも情報公開は絶対に必要だと思います。拡大教科書や点字教科書に関する総合的な情報を各教育現場に通知したり、文部科学省のホームページに掲載して広く周知する方法があろうかと思います。
注意していただきたいことは、通知文書を出す場合に、拡大教科書等と書くのではなくて、拡大教科書及び点字教科書と明記した方が解釈の余地がなく風通しがいいと思いますので、そのこともつけ加えさせていただきたいと思います。
そこで、この情報公開、しっかりとやっていくぞという御意思を伺いたいと思います。
平成十六年度でございますけれども、都道府県教育委員会からの報告に基づき、国がボランティア団体等を含む発行者と契約をした実績は、拡大教科書については千六百九十八種類、点字教科書については六十二種類でございます。これらの実績は、契約予定一覧として各都道府県教育委員会へ情報提供をしているところでございます。引き続き、情報提供に努力してまいりたいと思っております。
例えば全国で拡大教科書を製作しているボランティアグループ、約七十団体あると伺っております。このグループが首都圏に偏在しているんです。首都圏を離れたところに住む弱視の子供は、ボランティアとのつながりも少ないわけですね。ですから、拡大教科書を希望しても入手できないという厳しい現実もございます。
また、数少ないボランティアに依頼や問い合わせが殺到して、全国教材製作協議会は、今回の拡大教科書の製作に当たって、七割の子供の依頼は受けることができた、しかし三割の子供の依頼は断らざるを得なかったとおっしゃっているわけでございます。
ボランティアに依存することの限界、これは明らかだと思います。ボランティア、保護者の努力に左右されるのではなくて、安定した拡大教科書の供給体制のあり方について文科省はどのような対策を今後講じていかれるつもりか、お聞きしたいと思います。
拡大教科書につきましては、視覚に障害のある児童生徒にとって大変有益な教材でございまして、お話のように、安定的に供給をするということが重要であると認識をいたしております。
現在、ちょっと教科別に見てみますと、国語、英語、数学の拡大教科書につきましては、民間の出版社から刊行されております。そして、図表等が大変多くて編集が難しいとされている理科、社会については、独立行政法人国立特殊教育総合研究所の編集により刊行しているところでございます。
独立行政法人国立特殊教育総合研究所では、作成についてのノウハウの普及を図るため、平成十六年に拡大教科書の作成マニュアルというものを作成いたしまして、教科書会社やボランティア、都道府県等の教育委員会などへ配付をしているところでございます。
こういった作成マニュアルなどの活用をしていただきながら、拡大教科書の安定した供給に私どもも留意してまいりたいと思っております。
今、局長のお話を伺いましたけれども、安定供給にはまだちょっとほど遠いなという実感を持ちます。これは今後の課題なんですね、本当に大きな課題なんです。この拡大教科書の製作、今、試行錯誤しておりますが、関係者の連携についても文科省の努力が期待されているところでございます。
例えば、拡大写本ボランティアは、現在、手書きやパソコンで入力する、写真、挿絵はスキャナーで読み取る、そういう方法で拡大していらっしゃいます。しかし、検定教科書出版社にはすべてのデータがあるわけでございますから、欧米のようにすべての教科書の内容をデジタルデータ化してだれでも手に入れられるようにするという、そこまでのシステムを今後組んでいこうという方向に努力していただけませんか。
今、教育出版社では、教科書の電子データをボランティアに提供する試みについて話し合いが持たれているというふうに聞いておりまして、そういった取り組みを引き続き見守っていきたい、このように考えております。
データを集めてくださっているのは伺っております。ただ、あの表を見ますと、先生のための指導本にくっついたCD―ROMとかなんとかなんですね。ですから、本当にデジタルデータ化してだれでも手に入れられるというシステムをもう少しきちっとつくっていく必要があると私は思います。
それからもう一つ、次の段階でありますけれども、検定教科書を出版している会社にこれからは同じように拡大教科書をつくることを義務化していく、そういう方向も次のステップで大事だと私は思うんですが、いかがですか。
ただいまの御提案については、やはりそれぞれの会社の御判断ということになるのかなと思っております。
そう冷たいことをおっしゃらないでください。といいますのは、納本制度だって法律をつくればできるわけです。ですから、法律でもってそのようにお願いをすればできるんですよ。もう一度お願いします。私は最終的にはそのような方向がいいんじゃないかと思います。
そして、次のステップです。これはやはり、先ほどの大臣の意気込みから思えば、私は拡大教科書を検定教科書にするべきだと思います。そして、国が責任を持って文部科学省著作の教科書を発行しますと、今まで私が申し上げたすべての問題が解決するんです。そうじゃないと、ボランティアも大変、そして最終的には子供たちが救われません。ですから、検定教科書にするべく、もし私たちの力が必要ならば努力いたしますから、その方向で大臣、頑張っていただきますようにお願いいたします。
検定教科書になるためは、個々の図書ごとに文部科学大臣の行う教科書検定に合格することが必要である、これはもう御承知のとおりでございます。
拡大教科書につきましては、もととなります検定教科書の文字等を単に拡大するとともに、文字や図形の配置を変更するなど、弱視の児童生徒が使用しやすいように編集されているものでございます。このため、それ自体が検定を経たものではなく、検定教科書として位置づけることはできないものであります。
また、拡大教科書は、教科書会社などの出版社が発行するとともに、見え方の違う児童生徒に応じたボランティアが編集したものなど、多様な発行形態が存在するわけでございまして、文部科学省発行にはなじまないもの、このように考えているわけでございます。
なお、拡大教科書の作成を適正かつ円滑に行うため、作成の際に、検定教科書と同様に、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できるよう著作権法の一部を改正するなどを行ってきたところでございまして、今肥田議員がおっしゃいましたように、文部科学省といたしましても、今後とも、障害のある児童生徒の教育ニーズに応じた支援を行うための施策を推進してまいりたい、このようには考えておるところでございます。
今できない理由をるる述べていただきましたけれども、私、これでは発展がないと思います。
確かに、子供たちの見えにくい度合いもいろいろあります。拡大しなきゃいけない。いろいろなことも工夫しなきゃいけない。しかし、大臣が最初おっしゃいましたように、子供の教育は国が面倒を見るんだ、最後まで面倒を見るんだとおっしゃった、あの気迫をいま一度、この拡大教科書、弱視の子供たちは今まで教科書がなかったんです。やっと国が措置をしてくれることになった。しかし、その次の段階は、やはり検定教科書として、すべての子供が同じように学べる、そういうチャンスを大臣、私はつくるべきだと思います。
もう一度、できない理由はお述べいただかなくて結構ですが、頑張ってみようというお言葉をちょうだいしたいと思います。
できない理由はるる説明する必要はないとおっしゃいましたが、やはり今のこの検定の仕方、検定教科書として文部省が認めるかどうかという問題もございますし、また、先ほど来申し上げていますように、個々の生徒の見えぐあいというのは違うわけでございます。そういう意味で、個々に当たりまして、まさにボランティアの方々にはお世話になっているわけですけれども、そういった方々のお力もおかりして、個々の子供たちの本当の実情に合わせた、そういった教科書をつくっていきたいということと、検定教科書として文部省が果たして認められるかどうかということは、また別の問題だ、こう思うわけでございます。
まさに、委員の熱意もあるわけでございまして、そういった方向でできないものかということについては検討させていただきたい、このように考えております。
ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。
次に、センター入試について一問だけお尋ねしたいと思います。
大学入試センターでは、現在、弱視の受験生に対して特別措置をとってくださっております。ただ、この特別措置の範囲なんでございますが、弱視受験生の問題用紙の文字は、十四ポイントに拡大コピーされております。明朝体となっております。ところが、弱視用の教科書で使われている教材は、その多くが二十二ポイント、ゴシック体なんです。ですから、試験用文字を十四ポイントからせめて英検並みの十八ポイントへ。そして、時間延長もしてくださっているんですが、現在は一・三倍です。しかし、筑波大学の附属学校なんかは一・五倍になっております。それから、視力制限も、〇・一五から盲学校基準の〇・三未満へ。
これは、細かい数値の話になりますけれども、子供たちにとって大変大事なんですね、受験の場ですから。やはり一生懸命頑張っている子供たちが正々堂々と入試試験に臨めるように変更してくださる方向でお願いしたいと思うんですが、いかがですか。
大学入試センター試験におきましては、弱視受験者に対する試験実施上の特別措置として、昭和五十九年度から、十四ポイントに拡大した試験問題冊子を作成しております。また、昭和六十三年度から、試験時間を一・三倍に延長しておるところでございます。
文字サイズを十八ポイントにすることにつきましては、結果として、一般的に一ページの文字数が少なくなるため一つの設問が複数にわたってしまう、あるいは、図表に伴う設問においては図表が大きくなり過ぎて全体を見ることができなくなる、さらに、問題冊子の分量が膨大になり扱いづらくなるなどの可能性がありまして、拡大鏡などを利用する弱視受験者にとってはかえって見づらくなることも考えられるわけでございます。
また、試験時間のさらなる延長や視力制限の緩和につきましては、現在は、弱視受験者と点字受験者を対象とした研究結果を踏まえまして、視力〇・一五以下の者については試験時間一・三倍延長の特別措置を講じておりまして、これを変更するのであれば、通常の受験者や点字受験者との均衡や公平性を十分考える必要があるわけでございます。
受験機会の公平性を確保する観点から、大学入試センター試験におきまして受験者の障害の種類、程度に応じた特別措置を講ずることは重要であると考えておりますけれども、弱視者の受験の実態、実情等を見きわめながら、今後必要に応じて特別措置の内容について検討してまいりたい、このように考えております。
今さっき申し上げましたことは、子供たち自身が陳情しているんです。ですから、文科省がどうおっしゃっても、現場で試験を受ける子供たちの陳情なんです。だから、そのことをしっかりと認識をしていただきたいと思います。
それで、ここまで教育問題について、わずかでございますが、取り上げてまいりました。私、文科省の御努力も大変大きいと思っております。評価しております。しかし、大臣、今なお障害を持つ子供たちの教育環境の改善については、相当まだ努力の余地があると私は思いますけれども、大臣はどのように考えていらっしゃいますか。
ただいままで肥田委員がるるいろいろとお話しされました。また、これまでの御尽力につきましても承ったわけでございます。
障害のある児童生徒については、障害の状態に応じましてその可能性を最大限に伸ばす、そして自立して社会参加するために必要な力を培うというために一人一人の状態に応じた適切な教育を行う必要がある、これが重要であると考えております。また、教育の機会均等を保障するため、障害のあるなしにかかわらず、義務教育を受けている児童生徒すべてに対して国は最終的な責任を持っているものとも考えておるところでございます。
今後とも、すべての児童生徒一人一人が十分に適切な教育を受けられるよう、教育環境の整備に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
視力に障害を持った子供たちは、障害を持ったこと自体、私は決して不幸なことだと思っておりません。それは、子供たちが精いっぱい生きようとする、その真摯な姿からも十分に想像できます。彼ら、彼女たちにとっては、不幸なことは、生きていく上で余りにも社会的障害が厚いということでございます。厚く広く存在するということなんです。障害を持つ子供たちの個性を認めて、その尊厳を守るには、学校教育を含む社会的な障害を一つ一つ取り除いていって、差別扱いされることがないよう環境を少しずつ整えていくことが、私たち政治に身を置く者の責任じゃないかと思います。教科書問題、受験問題は、その象徴的な事例にすぎません。
きょうの大臣の積極的な御答弁を受けまして、事務方もきっとなお一層張り切って頑張ってくださることと信じておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。