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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

参議院 文教科学委員会 平成20年3月25日(火)

林久美子君

民主党・新緑風会・国民新・日本の林久美子でございます。

本日は、大臣所信に対する質疑を行わせていただきます。よろしくお願いいたします。

先日の予算委員会では、渡海大臣に拡大教科書についてお伺いをさせていただきました。非常に前向きな御答弁をいただきまして、あの予算委員会の数日後でございましたか、大臣の方から各教科書発行会社に対しまして書簡を出していただきました。そのスピード感ある行動と前向きな姿勢に、まずは心から感謝と敬意を表させていただきたいと思います。ありがとうございました。

この書簡の内容につきましては後ほどじっくりとお伺いをさせていただきたいと思いますが、この拡大教科書に関しまして早速お伺いをしてまいりたいと思います。

日本政府は、昨年の九月に国連の障害者権利条約に署名をいたしました。これから関係国内法の整備を進めて批准手続に入っていくことになるわけでございます。

そこで、渡海大臣にお伺いをしたいんですが、まず、昨年から実施されている全国一斉学力調査と言われる調査、これは制度上、全数調査になっているんでしょうか。特別支援学校、特別支援学級で通常の教科書を使っていない場合はテストの対象となっているのかどうか、お伺いいたします。

国務大臣(渡海紀三朗君)

点字・拡大教科書を使用されております児童生徒、これは、国語、算数、数学について、通常の教育課程の授業を受けておられればという前提でこの学力調査、実施をいたしております。そういう意味からすると、今の御質問の趣旨からすれば、通常の授業を受けておられないというか、方に対しては現段階では対象となっていないというふうに理解をいたしております。

林久美子君

では、弱視の子供さんたちで、弱視であるけれどもしっかりと学んでいるというお子様方は対象になっているという理解でよろしいということでございますよね。

国務大臣(渡海紀三朗君)

通常の教育課程の授業を受けておられるということでございますから、対象として入っておられるというふうに考えていただいて結構でございます。

林久美子君

非常に、点字のテストあるいは拡大のテストでも対応なさっているということでございまして、これはしっかりと配慮がなされているということであるかと思うんですが、しかしながら、前回の委員会でも申し上げさせていただきましたように、テストでは対応がされているけれども、肝心の学びの場である通常の授業において拡大教科書が行き渡っていないという現実があるわけでございます。

ここでまず確認をさせていただきたいんですが、普通学校に通う弱視の児童生徒に対しまして、これは、国公私立の小中学校の通常学級に在籍する弱視の児童生徒さんが今現在何人いらっしゃって、そのうちの何人に拡大教科書が無償給与されているのか、お伺いしたいと思います。

政府参考人(金森越哉君)

お答えを申し上げます。

小中学校の通常学級に在籍する弱視児童生徒数につきましては、平成十七年に文部科学省が行った調査によりますと、小中学校合わせて千七百三十九人でございます。また、平成十六年度から、小中学校の通常学級に在籍する児童生徒に対しまして拡大教科書を無償で給与しているところでございます。拡大教科書を給与した児童生徒数は、平成十七年度は六百四人に対しまして約九千冊を給与いたしました。また、平成十八年度は六百三十四人に対しまして約一万一千冊を給与したところでございます。

林久美子君

今併せて冊数のお話もございましたが、子供の数で見ると平成十七年は六百三十四人ということで、大体三人に一人にしか届いていないという現実があるわけでございます。

さらに、この拡大教科書で学んでいる子供たちの多くは、もう皆さんよく御存じかと思いますが、八割以上が実はボランティアの皆様の手作りの教科書によって支えられているという現実がございます。このボランティア団体は全国でおよそ七十団体ございますけれども、もう実際の現場というのは、依頼が殺到して、そこにきちっとこたえてあげたくてもとてもじゃない、こたえられないという状況が生まれてしまっていると。

さらには、弱視のお子さんをお持ちの御両親にしても、保護者の方も、相談窓口すら分からない。どこに言ったら教科書がもらえるのかも分からない。さらには、対応し切れないときは、学校の授業でもう本当に拡大コピーをして子供が学んでいるという現状があるわけでございます。そういうことを考えますと、この拡大教科書に関しましては相当な潜在的なニーズがあるのではないかということも考えられると思います。

文科省は、今回渡海大臣が書簡を出してくださいましたが、その以前に小坂文科大臣の時代にも、各教科書会社に対しまして、拡大教科書の発行あるいはデジタルデータの提供を積極的に行うように呼びかける書簡を出していただいております。こうした結果なのかもしれませんが、昨年末から多少デジタルデータの取組がボランティア団体でも受けやすくなっていたりしているんですけれども、実際はまだまだ不十分であるというふうに思っています。

大臣書簡を出してもなかなか進まないという現状がある中で、先日、教科書発行会社の皆様方でつくる教科書協会の方々とお話しする機会をいただきました。できるだけ早く拡大教科書の発行に努めていただきたいと、教科書発行会社というのは教科書を発行するのが業務の本分であるわけですから、やはりしっかりとそれを十分にできていないというのは問題ではないでしょうかということを申し上げさせていただきました。

しかしながら、非常にデジタルデータの加工をしたりするのも大変だという意見であるとか、あるいはやはり採算の問題をかなり強くおっしゃっていらっしゃった、この部分を何とかしてほしいという声が相当ありました。ただ、現実を見ると、拡大教科書を無償給与するときはきちっと一回国の方で買って給与しているわけですから、実際には採算の話はどうなのかなというのは正直私あるんですけれども、教科書発行会社の言い分としてはそういうことをおっしゃるわけです。

さらには、こんなふうにおっしゃいました。平成二十三年から予定されている新教育課程の小学校用教科書から実施することが現実的であると、こういう報告書もまとめていらっしゃいまして、お持ちになられました。

でも、今平成二十年でございまして、午前中、谷岡議員の質疑にもございましたが、今この瞬間も子供たちは育っていっている、今この瞬間も子供たちにはしっかりとした適切な配慮を、合理的配慮をなされながら教材は提供されるべきだし、学びの環境は支えられなくてはいけないということを考えたときに、大臣御自身は二十三年からでよしと考えていらっしゃるのかということが一点と、今回大臣書簡を出していただきました、小坂大臣に続いて二回目、出していただいたわけですけれども、なお、それでも進まない場合というのは、より一層強い手段をもって各教科書発行者に対しまして要請をされると考えていらっしゃるのかどうか、お聞かせください。

国務大臣(渡海紀三朗君)

まず、二十三年で構わないと、これは決してそういうことを考えているわけではありません。現実的な対応としてそういう答えをされるという教科書協会側のそういう御意見があるということは私も聞いておったところでございますけれども、これはまだ、今現実に、二十三年でございます、先のことでありますから、やっぱりそれ以前にできるだけやってくれということはきっちりと要請をいたしまして、そして同時に、先日もお答えをいたしましたが、検討会議というのを立ち上げまして、視覚障害者の専門家とか教科書発行者、また拡大教材の製作会社、そして今御苦労をいただいておりますボランティア団体、教育委員会、学校、こういった方々の代表者をお集まりをいただきまして、この問題にどう対応していくか、どういうことを今やるのが一番教科書会社にもやっていただけやすくて、またボランティアの皆さんに負荷が掛からなくてやれるのかということを早急にこの会議で検討していただいて、そしてしかるべき対応を取っていただくと、そのように進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

林久美子君

では、その二十三年、書簡を出してもなお進まない場合により強い対応を考えていらっしゃるのかどうかという点についてはいかがでしょうか。

国務大臣(渡海紀三朗君)

これは、まずは現状の中で実は様子を見ていきたい、見守りたいということでございますし、今申し上げましたように、この予算が成立しまして二十年度になりましたら早急に先ほどの検討会議というものも立ち上げ、しっかりこれ対応していきたいというふうに考えておりますので、今の段階でできなかったらどうだということをお答えするのはむしろ適当でないというふうに考えます。やるんだという下でこの検討会議を活用していきたいというふうに考えております。

林久美子君

大臣は、そういう意味では教科書発行会社はしっかりとやってくれるというふうに信じていらっしゃるんだと思うんですが。どうも、済みません、前回、小坂大臣のときから余り進んでいませんので、どうしてもちょっとその辺が懐疑的になってしまっておりまして、しっかりとより一層進めるように、大臣の強いリーダーシップをお願いをしたいというふうに思います。

ちょっと、これ通告してなくて大変申し訳ないんですが、少しお聞かせいただきたいんですが、先ほど全国一斉学力テストは拡大テストも対応できるというふうなお話があったんですが、ちょっとこれ分かればなんですが、今公立高校の普通学級で学んでいる弱視の生徒さんが何人いらっしゃって、高校入試のテストは拡大入試問題となっているのかどうか、ちょっと分かればお聞かせいただきたいんですが、どうですか。

政府参考人(金森越哉君)

高校入試につきましては、各都道府県の教育委員会が入試問題を作成し、また入試を実施いたしますので、そこでどういう取扱いがなされているかということにつきまして、今手元にデータを持っておりませんけれども、通常、学校でいろいろと入試問題あるいは試験問題を行います際には、障害を持った方への配慮ということも考えて実施をしているところでございます。

例えば、点字や代筆による解答とか、あるいは調査時間を延長いたしましたりとか、あるいは場合によっては別室で実施をいたしましたり、調査時間中を含めた付添い者の同伴、こういった配慮を行って障害を持った方々への入試や試験の実施に配慮をしているところもあると承知をいたしております。

林久美子君

人数は分かりますか。

政府参考人(金森越哉君)

恐縮でございます。突然のお尋ねでございますので、ちょっと今人数につきましては持ち合わせてございません。

林久美子君

それでは、済みません、委員長の方に資料要求でお願いしたいんですが、生徒さんが何人いらっしゃって、そして入試問題が各都道府県によって違うというお話もございましたので、実態がどうなっているのかというのをちょっと資料要求としてお願いをいたします。

では、済みません、話を戻したいと思います。

先ほど、渡海大臣が、新年度以降検討会議を立ち上げると、これは書簡の中でも触れていただきました。メンバーについても、先ほど、専門家であるとか教科書発行会社であるとか、あるいはボランティア団体の皆様にも参加をいただくという御答弁をいただきました。

では、お伺いをしたいのですが、具体的にはいつごろ検討会議を立ち上げて、メンバーは何人ぐらいを想定していらっしゃるのか、お聞かせください。

国務大臣(渡海紀三朗君)

先ほど申し上げましたような方々、十数名というふうに考えております。

検討会議を立ち上げるのは、この予算が通りまして二十年度へ入りましたらできるだけ早急に、まあ二十年度当初からというふうにお考えをいただいて結構かと思いますが。

林久美子君

じゃ、二十年度当初からということなので、四月ぐらいから是非立ち上げていただきたいと思うわけでございますが、この書簡の中に、今回の書簡の特徴としては、教科書発行会社にちゃんとやってよということと併せて、文科省としてもちゃんと頑張るんだよという姿勢を示されたところが前回と違うところなのかなとも思いながら大臣書簡を拝見させていただいておったんですが、この中にいろんなことをやりますよというお話が書かれておりまして、書簡の中に標準規格の策定をするというような記述があるわけでございますが、これは具体的にどのようなことを考えていらっしゃるんでしょうか。

国務大臣(渡海紀三朗君)

これはもう委員は御承知のことでございますが、弱視の児童生徒の障害の程度に対応して、文字の例えば大きさとか、レイアウトとか、また配色などの様々な工夫が実はなされているわけでございます。

これがほとんど今はボランティアによってなされているということでございますけれども、できるだけ多くの弱視の児童生徒のニーズに対応することができるような規格を作るということでございまして、そういった意味で、この検討会議において、教科書の発行者や拡大教材の製作会社、こういった方々の知恵も借りながら、先ほど申し上げましたように、できるだけ多くの弱視の児童生徒のニーズに対応した拡大教科書、こういった標準的なものを検討したいというふうに、これを標準規格というふうに表現をさせていただいたところでございます。

林久美子君

では、続きまして、拡大教科書の作成ノウハウの普及啓発、そして実践モデル集の作成ということも書かれておりますけれども、どういうことをなさるのか。

この実践モデル集というのは、本当にモデルとして何か作るだけなのか、それとも何冊も発行するようなものなのか、そうした具体的なイメージがちょっとわきませんので、その辺もお聞かせください。

政府参考人(金森越哉君)

お答えをいたします。

現状におきましては、教科書発行者から発行される拡大教科書が依然として少なく、また拡大教科書製作ノウハウの普及が進んでいない状況にございます。このため、私どもでは、多くの弱視児童生徒のニーズがカバーできます標準規格を策定いたしますとともに、この標準規格に基づく教科や学年ごとの特質に配慮した拡大教科書の作成の具体的な実例をまとめた実践的モデル集を作成することが必要と考えているところでございます。

また、こういったものを活用いたしまして、教科書編集者や全国のボランティア団体などを対象とした研修会などによりまして、標準規格やまた拡大教科書作成のノウハウの普及を図っていくことが必要であると考えているところでございます。

林久美子君

この実践モデル集とは何部ぐらい作るとかというのは、大体見通しというのはおありなんですか。それも併せて伺ったかと思うんですが。

政府参考人(金森越哉君)

まだこの実践モデル集を何部作成するかということについてはこれからの検討でございますけれども、できるだけたくさんの方が利用できるような形で発行いたしたいと考えているところでございます。

林久美子君

ありがとうございました。

この大臣書簡の中で大きく柱が四つほどございまして、今これについて順次伺わせていただいたわけでございます。

まず、一つ目が検討会議の設置による標準規格の策定等、二つ目が実践的モデル集の作成、これがまだ、できるだけ多くの方にという話ですね。標準規格、拡大教科書製作ノウハウの普及、さらにはデジタルデータ提供拡大の支援と、四本柱で出していらっしゃるわけですけれども、これそれぞれ、検討会議は新年度早々にもというお話がございましたが、いつぐらいまでに着手をして、いつぐらいまでにモデル集は作り上げるのかとか、タイムスケジュールを教えていただきたいと思います。

国務大臣(渡海紀三朗君)

今、正直申し上げまして、いつまでにということが明確にお答えできるという状況にはございません。検討会議を立ち上げてその中で見極めを付けようというふうに考えておりますが、できるだけ早くやっぱりやるということがこういうのは大事だと思いますので、そういったことで取り組んでいきたい。まず検討会議の中で少しいろいろ意見を聞きまして、それならばこれぐらいのタイムスケジュールでできるんではないかとか、そういった見極めを付けさせていただきたい。もういましばらく、いつということは実はお待ちをいただきたいというふうに考えております。そのことが、むしろ逆に言いますと、やっぱり誠実な態度といいますか、ちゃんとしたことがやれるというふうに思いますので、少し時間をいただきたいというふうに思います。

林久美子君

一部聞くところによりますと、遅くとも二十三年までにはみたいな話もちらっと聞いたりもするわけでございますね。この二十三年というのは教科書発行会社が言っている時期と重なってしまうわけですけれども、まさかそんなに遅くなるということはないんだと信じておりますが。

大臣、しっかりとしたものを作っていただくのは大いに結構だと思うんですが、やはりこれ、先ほども申し上げましたように、今この瞬間も子供たちが育っていっておりますので、そのスピード感というのは非常に重要になってくると思うんですね。そこにはやはり政治のリーダーシップというのが必要なわけで、とりわけこの文部科学行政においては渡海大臣のリーダーシップあってこそだと思いますので、いつというのはなかなか言いにくいところもあるのかもしれませんけれども、もう私の思いとしては、もうここ一年ぐらいで決着は付けていただきたいということはお願いをさせていただきたいと思います。

たしか今回の事業は大体二十年度予算で二千数百万円を見込んでいらっしゃったかと思うんですけれども、いろいろマニュアルを作ったりされるということではあったんですが、実はもう、このマニュアルというのは以前作られたことがあるわけですね。文科省所管の独法の国立特殊教育総合研究所、今これ、特別支援教育のときに名称が変わりまして国立特別支援教育総合研究所というふうに名称は変わっておるんですけれども、ここが拡大教科書作成へのアプローチ、拡大教科書作成マニュアルというのを作っていらっしゃいます。

具体的にお伺いをしたいと思いますが、この拡大教科書作成マニュアルはいつ作られて、どのように使われているのかお答えをいただきたいと思います。

政府参考人(金森越哉君)

お答えを申し上げます。

国立特別支援教育総合研究所におきましては、平成十四年度から十五年度にかけて実施をいたしましたプロジェクト研究である弱視児の視覚特性を踏まえた拡大教材に関する調査研究、弱視用拡大教材作成に関する開発及び支援についてというプロジェクト研究の成果を踏まえまして、平成十七年一月に拡大教科書作成マニュアルを発行いたしました。このマニュアルの内容は、理科や社会の拡大教科書作成に関しまして、文字の大きさや配色などの基本的事項について解説をいたしたものでございます。

この拡大教科書作成マニュアルにつきましては当初三百部ほど発行をいたしまして、各都道府県の特殊教育センターや盲学校、また全国拡大教材作製協議会、全国教材作成ボランティアグループ、教科書会社その他に配付をいたしたところでございます。また併せて、民間の会社からも市販をいたしているところでございまして、発行部数が二千部と伺っているところでございます。

さらに、特別支援教育総合研究所におきましては、ホームページにおいてこの拡大教科書作成マニュアルを公開いたしまして、拡大教科書作成に関するノウハウを広く一般にも提供いたしているところでございます。

林久美子君

済みません、どういうふうに使われているのかということについての御答弁もお願いします。

政府参考人(金森越哉君)

お答えを申し上げます。

この国立特別支援教育総合研究所が作成いたしました拡大教科書作成マニュアルでございますけれども、全国で拡大教科書を作成いたしておりますボランティアグループの方でございますとか教科書会社がこれを参考に拡大教科書の作成に取り組んでいると承知をいたしております。

林久美子君

ということは、これから作ろうと思っているものと一体何が違うのだろうかと思うわけでございます。しかも、この独法がやっている事業をいろいろ見ると、いろいろ報告書を作るということもやっていらっしゃいまして、いわゆる特別支援教育にかかわること全般に取り組んでいらっしゃいまして、弱視児童にとって見やすいコンピューターフォントの分析と試作とかいう研究もしていらっしゃいます。これは、今お話しいただいたように、社会や理科の作成に関するノウハウでございますが、これより前にも国語、算数、数学についてのノウハウの冊子も出ているはずです。

では、今回、わざわざ検討会議を立ち上げて作成をされるマニュアル集ですね、何が違うんでしょうか。

政府参考人(金森越哉君)

お答えを申し上げます。

国立特別支援教育総合研究所が作成をいたしました拡大教科書作成マニュアルは、文字の大きさや配色など、拡大教科書を作成する際のノウハウが示されているところでございますが、平成十八年度におきましても、ボランティア団体作成の拡大教科書が八割を占めているということ、また、教科書発行者などが作成する拡大教科書の態様なども依然として一様でないということがございます。必ずしも教科書発行者における拡大教科書の作成のノウハウの普及が十分に進んでいるとは言えないというのが現状でございます。

私どもといたしましては、この国立特別支援教育総合研究所で作成いたしました拡大教科書作成マニュアルをベースとしつつも、ボランティア団体や拡大教材作成会社、また特別支援教育の専門家の方々の知見もお借りしながら、文部科学省が設置する検討会議におきまして、多くの弱視の児童生徒のニーズに対応した標準的な拡大教科書作成に当たっての障害に配慮した体裁や態様などのきめ細やかな留意事項を示した標準規格の策定を行いますとともに、外部機関にも委託をいたしまして、標準規格に基づく教科や学年ごとの特質に配慮した拡大教科書作成の具体的な実践的モデル集を作成する予定といたしております。

こういったことによりまして、教科書発行者等への拡大教科書作成の普及、充実を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

林久美子君

検討会議、先ほど十数人で立ち上げるというお話ございましたけれども、このマニュアルを作るときには、研究者とか、それこそいろいろ専門家ですよね、入れて二十二人がかかわっているわけです。その上での知見を結集して作られているわけですね。

今、お話にございました、外部機関に委託をするというお話もございましたが、どこに何を委託されるんですか。

政府参考人(金森越哉君)

まだ具体的にどこにということが決まっているわけではございません。これから検討会を立ち上げまして、そういったことも含め検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。

林久美子君

では、何を、何について委託をされるんですか。

政府参考人(金森越哉君)

拡大教科書に関しまして、標準規格に基づく教科や学年ごとの特質に配慮した拡大教科書作成の具体的な実践マニュアルの作成につきまして、外部の方々のお知恵もお借りをしたいと考えておるところでございます。

林久美子君

じゃ、外部の方々のお知恵というのは、検討会議のメンバーに含まれないんですか、外部の方々のお知恵というのは。しかも、各学年に配慮したということは、これ十分書かれていますよ、マニュアルに。いかがですか。

政府参考人(金森越哉君)

お答えを申し上げます。

拡大教科書の標準規格の策定など、拡大教科書を普及充実するための検討会議のメンバーにつきましては、視覚障害教育の専門家のほかに、教科書発行者や拡大教材作成会社、ボランティア団体、教育委員会、学校などの関係者十数名程度を予定しているところでございますが、こういった拡大教科書の発行やまたその普及ということにつきましては、できるだけいろいろな方々のお知恵もお借りしながら進めてまいりたいと考えているところでございまして、既に国立特殊教育総合研究所におきましても拡大教科書作成マニュアルというのがございますが、この既にあるマニュアルもベースにしながら更により良いものにしていきたいと、こう考えているところでございます。

林久美子君

今おっしゃったメンバーは、すべてこのマニュアルを作るときにも入っていらっしゃる方々ですよ。人が替わるかもしれません。肩書きが替わるかもしれない。だけど、それぞれの専門家であり、それぞれの発行会社の代表であり、それぞれの研究機関の代表が二十二人も入ってやっているわけですよね。

そう考えていただけば、じゃそれを、これをおいてもなおわざわざ検討会議をつくるんだというのであれば、まさかこれがあることを御存じないわけがないと思います。ここの何が問題があって、何が足りないから、何をこれをベースにして作っていくのかと、それをやることで本当に教科書発行会社が作りやすくなるんですかと、ボランティアの方が利用しやすくなるんですかと、子供たちにちゃんと拡大教科書が届くようになるんですかということを伺っているわけです。

政府参考人(金森越哉君)

お答えを申し上げます。

平成十四年度から平成十五年度にかけまして国立特殊教育総合研究所におきまして拡大教科書に関する調査研究が行われ、その研究成果として拡大教科書作成マニュアルが取りまとめられたところでございます。

ただ、その後の現状を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、平成十八年度におきましてもボランティア団体作成のものが八割を占めておること、また教科書発行者などが作成する拡大教科書の態様なども依然として一様でないということから、必ずしも教科書発行者における拡大教科書作成のノウハウの普及が十分に進んでいるとは言えない状況にあるのが現状でございます。

私どもといたしましては、このマニュアルをベースにしつつも、ボランティア団体やまた拡大教材作成会社、特別支援教育の専門家の方々のお知恵もお借りしながら、教科書発行者等への拡大教科書作成への普及充実を図ってまいりたいと考えているところでございまして、現在のマニュアルに何が足らないのか、もう少しどこを補うと効果的なのかということにつきましても具体的に検討会議の中で検討していきたいと考えているところでございます。

林久美子君

先ほど図らずもおっしゃいました、これ、ホームページで見れるわけです、ホームページで見れる。しかも、こんなことを申し上げたくありませんけれども、ここの独法、四人役員がいて、二人、常勤役員は文科省の方が、天下りの方ですよ。しかも、要するにこれを作ってホームページで出しても、ダウンロードできるようにしてもなお進まないと、拡大教科書が普及をしないと、発行会社はなかなか協力しないと。そうしたら、もうこれの意味がないわけですよね。そうしたら、本当に無駄遣いじゃないですかみたいな話も出てきちゃうわけですよ。

そうじゃなくて、ちゃんと本当に子供たちの手に拡大教科書が届くようにするためには、これの何に問題があって、これからやるんじゃなくて、立ち上げる前にそれは精査をしてくださいよ、考えてくださいよ。これから考えるんじゃ余りにも遅い。時間稼ぎをしているようにしか見えないというのはまさにそこなわけです。

この瞬間も子供たちは大きくなっていく。大臣が書簡を出した。一生懸命やろうとしている。でも、片一方でこんなことが行われているわけですよ。だから、こういうことでいいんですかということを、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(渡海紀三朗君)

今も局長がお答えをしましたように、やっぱり歴史があるんだと思うんですね。そのマニュアルを作って普及を図ったと、しかし考えていたようになかなか思うように進まない。

ですから、林委員がおっしゃっているように、じゃそこは、どこが原因だったのかなという分析は確かにできてなきゃいけないのかもしれません。かもしれませんが、それは例えば、一点を挙げれば、なかなか現実には、教科書会社の持っているソフトと現実にこのデジタルデータをうまく組み合わせてボランティアの方々に供給できないとか、そういった支援体制の問題も分かってきたわけでありますから、そういったことも含めて改めて、やっぱりこの普及をさせるためにはもう一度、これはスピード感を持ってやりますよ。やりますが、そのしっかりとした検討をするというのは私はあってもいいんじゃないかと。

何か物すごいものを立ち上げてどうのこうのするわけじゃありませんから、そういう意味で今回もこういう提起がされておるわけでございますし、以前から予算委員会等でも、ほかの委員からも実はこういった問題が提起されているわけでありますから、きっちりとここで、やっぱりもっと現実に、今まさにお話しされているように、子供たちにちゃんと供給できるためには今何をやらなきゃいけないのかということをやっぱり一度しっかりと検証をして、そして目的は子供たちの手元に教科書が届くことでありますから、決して我々は何も引き延ばしをしようというふうに図っているわけではございませんので、そこは私の責任においてスピード感を持って検討させていただくというふうにお答えをさせていただきたいと思いますので、御理解をいただきたい。

やっぱり、過去やったことがすべてではないと思うんですよ。やっぱり見直すときは見直して、しかも仕切り直すこともあっていいと思いますので、御理解をいただきたいというふうに思っております。

林久美子君

検討会議の立ち上げ等々で二十年度予算案では二千数百万円、そしてこの拡大教科書作成マニュアルで掛かっているのは十四年度で一千十二万三千円、十五年度では八百万円、二千万弱掛かっているわけです。だから、そうしたことをしっかりと踏まえていただいて、そうじゃなくても教育予算が少ないと、ちゃんと拡充していかなきゃいけないって、これはもうみんなの認識としてあるわけですよね。ですから、無駄にしないでいただきたいと思うわけです。

スピード感を持ってとおっしゃっていただきました。これは本当にもう大臣、是非、本当は期限を切って言っていただきたいぐらいなんです、私としては。もう二十一年度までにきちっとめどを付けるんだとか。そこら辺の大臣の決意を伺いたいんですが、いかがでしょうか。

国務大臣(渡海紀三朗君)

期限の問題は先ほどお答えをいたしました。

これは正直、私もお答えをいたしますけれども、一度そういった今議論が出てきたようなやつをちょっと整理させてください。その結果としてこれぐらいの感じでいけるだろうと責任を持ってお答えをさしていただかないと、後ろを切ったからうまくいくというものじゃないというふうに思っておりますし、そこは御信頼をいただいて、二十年度早急に立ち上げるということを今お答えをしておりますので、その中でどういう作業が要るのか、またそのためにどれぐらい時間が掛かるのか。

決して、私はどっちかというとせっかちでございますから、できるだけスピード感を持って結論を出したいと思いますので、御理解をいただきたいと思います。

林久美子君

では、是非またこうして大臣と次に質疑をさせていただくときまでに、いつぐらいにはめどを付けるよというようなお答えがいただけると有り難いなと思いますので、是非お願いします。

もう一つ、こうやってマニュアルを作りましたと、今度検討会議も立ち上げますと、しかも大臣も書簡を出しましたということで来ているわけですね、過去から。それが進んでいないと。私、これは行政指導の一つとしての大臣書簡だとは思うんですけれども、やはりもっと強く国が指導力を発揮しなきゃいけないと思うわけですね。

そのためには、やはり教科書発行会社に拡大教科書の発行を義務付けるような法整備を行うことが私は大切であるというふうに思っております。実際、アメリカでは国立教材アクセスセンターを立ち上げて国として障害児の教科書の保障を進めているという現状もございまして、これやはり、予算でもそうですね、法律に裏付けられていればしっかりと何とか乗せていける部分もあるわけで、やはり各教科書会社にもしっかりと指導力を発揮するためにも、そしてその先にある子供たちに拡大教科書を必要なところに届けるためにもやはり法整備の必要があると思います。

私たち民主党は、先週の火曜日に、教科書バリアフリー法という形で議員立法で参議院に提出をさせていただきました。これ、是非成立に向けて取り組んでいきたいというふうに思っているんですが、大臣御自身はこうしたものの法整備についてどのようにお考えなのか、御答弁お願いします。

国務大臣(渡海紀三朗君)

そのようなことも念頭に入れて検討会議で検討されるべきというふうに思っております。また、これは民主党さんはもう既にお出しになったということでありますから、国会での議論というものもあるんだろうと思うんですね。そういったことも踏まえて判断をしていきたいというふうに思っております。

林久美子君

ありがとうございます。

是非、念頭に入れてという御答弁がございましたので、そこに期待を掛けて検討会議の議論の行方を見守りたいと思いますし、私たちも委員会でしっかりと我が党案についても質疑をさせていただきたいというふうに思っています。

これは非常に将来的な長い長いテーマになるんですが、この拡大教科書に関して、やはり私は法的位置付けって大事だと思うんですね。確認なんですが、この拡大教科書はいわゆる法律に位置付けられた教科用図書でしょうか、どうでしょうか。

政府参考人(金森越哉君)

お答えを申し上げます。

拡大教科書は、視覚に障害のある児童生徒が使用するため、検定教科書の文字などを拡大などした図書でございますが、視覚に障害のある児童生徒が使いやすいように検定教科書のレイアウトなど体裁や態様の変更をいたしてございます。したがいまして、視覚に障害のある児童生徒が通常学級で使用いたします拡大教科書は、厳密な意味では学校教育法第三十四条に言う文部科学大臣の検定を経た教科用図書とは言えないものでございます。

林久美子君

やはりこの辺の問題というのが根底に私はあると思っております。非常に、簡単なことではないと思うんですね、この教科用図書の規定を見直していくということは。様々な法律にも絡んでくるし、じゃどこでどういうふうにしていくんだというのはかなり議論を積み重ねないといけない。しかし、やっぱり本来教科書なわけで、これは、子供たちにとってですね、ということであれば、やはり教科用図書にしっかりと位置付けるということも含めてこれから法整備に取り組んでいくと、そういう長い視点で向き合っていくということが重要かと思いますが、大臣、この点についてはいかがでしょうか。認識を共有させていただければと思います。

国務大臣(渡海紀三朗君)

これも先ほどと同じ検討課題だとは認識はいたしております。ただ、実態上は、今まだ普及率が非常に低いということでありますから、これがしっかり普及すれば、無償で提供するという意味も含めて、教科書と同じ扱いに実態上はなるんじゃないかなというふうには思いますが。

林久美子君

是非、様々な面で我々は法整備が必要だとも訴えておりますし、この教科用図書の規定もしっかりと議論をしていかなくちゃいけないと思っておりますので。教育というのは本当に、ある意味では与野党を超えて、そこにいる子供たちの教育環境をどうやってつくっていくかということに尽きると思いますので、もうこれは、でも大臣のリーダーシップというのが非常に重要になってきますので、どうか御尽力いただきますようにお願いをいたします。