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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

2005年5月26日 文部科学大臣 中山成彬殿 弱視者問題研究会 代表 並木 正

拡大教科書の確実な供給体制確立に関する要望書

視覚に障害のある児童・生徒の学習環境の充実につきまして、日頃よりご理解とご尽力を賜り心より感謝申し上げます。拡大教科書につきましては、著作権法を改正され、その後も無償給与制度の周知等にご努力いただいていることに深く敬意を表します。

しかしながら、すべての弱視の児童・生徒が例外なく、一人一人のニーズに合わせた適切な拡大教科書を手にする状況には未だ至っておりません。出版されている拡大教科書は小学校段階では国語・算数・理科・社会、中学校段階では国語・数学・英語・理科・社会のみです。それも全国の盲学校が一括で採択している1社の教科書に限られるため、地域の学校に在籍する弱視の子どもたちにとっては、たまたま教科書会社が一致していればその拡大教科書を使用することができますが、多くの場合は教科書出版社が異なるため、実際はほとんど拡大教科書を入手することはできません。全国で約60の拡大写本ボランティアグループが一人一人のニーズに合わせた拡大教科書を製作していますが、現在その応需能力を超え、依頼の6割~7割程度しか供給できないという状況です。2004年度の拡大教科書の無償給与申請数は518名ということですが、その陰にはボランティアに依頼しても拡大教科書を製作してもらえず、見えにくさというハンディを背負ったまま学習せざるを得なかった子どもたちが数百名単位で潜在していたのです。更に拡大写本ボランティアの窓口である全国拡大教材製作協議会に依頼できるということさえ知らなかった子どもたちも相当数いると考えられます。また、養護学校の中にも視覚に障害のある児童・生徒が存在し、その子どもたちにとっても拡大教科書が有効な読書媒体であるということも分かってきました。知的に障害のある子どもたちにとっても大きな文字の教材は興味・関心を引きやすいということも言われています。つまり、それぞれの障害に合わせ、その子にとって適切な教科書を確実に供給するということは、特別支援教育体制を推進する上でも必要不可欠な環境整備と考えます。そこで、全ての児童・生徒が平等に教育を受けられるために、拡大教科書が確実に供給されるような体制の確立を要望致します。