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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

衆議院 文部科学委員会 平成20年4月9日(水)

高井委員

民主党の高井美穂と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

きょうは、弱視の子供たちへの拡大教科書についてということと、情報教育についてという二点からお伺いをさせていただきたいと思います。二十五分しかございませんので、早速質問の方に入りたいと思うんです。

先般、渡海大臣も参議院の文教科学委員会で我が党の林久美子委員からさまざまな御質問があったと思います。私も議事録をよく拝見いたしまして、それに追加する形でもお伺いをしたいと思っているんですが、そのときにも申し上げましたけれども、弱視など視覚障害を持つ子供にも憲法に保障された教育を受ける権利をきちんと保障するために、党として、教科書バリアフリー関連三法案というのを参議院に提出いたしました。そして、そのときの渡海大臣の御答弁の中でも、拡大教科書に対し、大変積極的な御発言をしていただいていることにまず感謝を申し上げたいと思っています。

しかしながら、当時小坂大臣のときにも書簡を出されるなど、極めて積極的に教科書会社に要請をしていただいてはいるものの、拡大教科書がボランティアの皆様の努力に頼り、弱視の子供の三人に一人しかまだ行き渡っていないという現実があると思います。大臣も御存じだというふうに思います。そして、参議院の質問の中に出ていましたけれども、教科書会社が、二十三年の、つまり三年先の新教育課程の小学校用教科書から実施するのが現実的であるというふうな話があったということも聞いておりますが、まず、文部科学省にお伺いをいたします。

四月から新学期が始まったばかりですけれども、本年度、平成二十年の全国の小中学校通常学級の弱視児童生徒の数は何人いらっしゃるというふうに把握しておられるでしょうか。また、通常の高校にはどれくらいの人数いらっしゃるか把握しておられるか。御答弁をお願いいたします。

金森政府参考人

お答えを申し上げます。

文部科学省が行った調査によりますと、小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち弱視の児童生徒は、平成十七年、千七百三十九名となっておりますが、平成二十年度につきましては、あいにく把握をいたしていないところでございます。

また、高等学校に在籍する弱視生徒につきましては、これまで文部科学省として調査は行っていないところでございます。

高井委員

大臣、平成十七年といったら三年前ですよね。なぜこのように調査が進まないのか、というか、むしろ高等学校においてはされないのか。なぜでしょうか。各都道府県、細やかに教育委員会もございますし、各学校の先生方、自分が持っているクラスの子供に弱視の子供がいるということは多分承知をしておられると思いますし、ヒアリング等をすればすぐに数などはわかるものではないかと思いますけれども、こういう努力をなされないのはなぜなんでしょうか。

渡海国務大臣

この拡大教科書の問題、我々も、小坂大臣から要請をしていただいて、先日、林参議院議員からも質問をいただきまして、すぐ再度要請もさせていただいております。また、あらゆる機会を通じて教科書会社にお願いもさせていただいております。

一点は、やはり、熱心なところと熱心でないところ、具体的にどうとは言いませんが、どうしてもございまして、はっきり言いまして強制力がそれほどないものですから、たびたびお願いはしておるわけでございますが、なかなか進んでいない。この現状を少しでも進めたいというのが今の率直な気持ちでございます。

この調査につきましても、学校の負担ということを考えたときに、今私が一番取り組んでいますのは、少しだけ時間下さい、要するに、教師が子供に向き合う時間をできるだけふやしたい、そのことを最大の課題と取り組んでおります。そうしますと、できるだけ無駄な調査はやめようという、これを無駄とは言いませんよ、言いません、誤解しないでください、語彙が不足しているものですから時々誤解を与えますが。そういうことでやっている中で、全部の数でやるとしても、弱視の調査、一概に視力のみによってなかなか判断できないということで、聞けばわかるというほど実は簡単なものでないということをまず御理解いただきたい。

それから、高校などについていいますと、通信制も含め、もっと複雑になってくるというような状況がございまして、現実に我々の方から要請はさせていただいておるわけでございますけれども、実は、今先生がおっしゃったような状況にあるというのが現状でございます。

これはちょっと言いわけになりますけれども、その中で、なおどういうようなことでやれるのかということは、そのやり方も含めて検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

高井委員

私どもはすごく厳密な調査を求めているわけではないんですね、〇・三以上とか医者の診断書とか。そういうわけではなくて、やはり、自分の高等学校に弱視の子供がいると思わなければ拡大教科書が欲しいということに手を挙げないし、それもあって普及が進まない。そうしたら、その子供たちは、結局、拡大教科書は得られないまま、義務教育段階であるにもかかわらず義務教育がきちんと受けられない状況に置かれているということを大変懸念しているわけであります。

これは、筑波大学の附属視覚特別支援学校の宇野和博先生がおっしゃっていたんですけれども、義務教育段階にもかかわらず、盲学校という専門教育機関でさえ、音楽や技術・家庭といった実技教科の拡大教科書は保障されていません、大臣も御存じだと思います、高等部に至っては一教科もありませんと。

本当に、義務教育というのはすべての子供に無償で教育を提供するという原則がございますので、ぜひ今言った点、難しいという話もわからなくもないんですけれども、でも、もっともっと努力をしていただければ私はできると思うんですね。

そして、学校教育法第三十四条ですけれども、ここに教科書の、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校で法的な教科書、検定教科書または文部科学省著作の教科書を使用することが義務づけられているという規定がございます。その後、改正でできました附則の第九条においては、高等学校、中等教育学校の課程、特別支援学級においては、当分の間、この第三十四条一項の規定にかかわらず、文部科学大臣の定めるところにより、第三十四条第一項に規定する教科用図書以外の教科書を使用することができるというふうにもちろんなっておりますよね。

ただ、この拡大教科書や点字教科書は、旧条項でいわゆる百七条教科書というふうに呼ばれていると思うんですけれども、この条項はつまり小学校と中学校を対象としていませんので、検定を受けていない拡大教科書や点字教科書を中小学校で利用するということは基本的に法律に反してしまうということになっていますね。

そもそも、検定教科書を、受けたものを拡大する、別の形で大きくして子供たちに見えるように用いるということで、中身は一切変更はないというふうに思っていますが、なぜこれを検定教科書というふうにみなすことができないのか。これを、やはりこういうふうに、検定教科書であるとみなせば、きちんと無償で提供する扱いの中に入るのではないかと思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

金森政府参考人

お答えを申し上げます。

拡大教科書は、視覚に障害のある児童生徒が使用するため、検定教科書の文字などを拡大などした図書でございますが、視覚に障害のある児童生徒が使いやすいように検定教科書のレイアウトなど態様や体裁の変更をしているところでございます。したがいまして、視覚に障害のある児童生徒が通常学級で使用する拡大教科書は、厳密な意味では学校教育法第三十四条に言う文部科学大臣の検定を経た教科用図書とは言えないものでございます。

ただし、拡大教科書の内容につきましては、検定教科書と基本的に同一の内容と認められる図書でございまして、また、これを無償給与することは、教育における機会均等の実質的な保障及び視覚に障害のある児童生徒の教育条件の改善に資することとなることにかんがみまして、平成十六年度より、検定教科書と同様に無償給与するという取り扱いをしているところでございます。

こうした拡大教科書の普及充実のためには、教科書デジタルデータの提供拡大や教科書発行者による拡大教科書作成の促進方策が重要でございまして、そのための具体的施策を進めていくということがまず必要であると考えているところでございます。

高井委員

今、厳密な意味では検定教科書とは言えないという御答弁がありましたけれども、そのほかの部分では、無償供与できるように努力しているというお話がありましたけれども、厳密な意味でも適用できるようにできないんですかね。私はなぜできないのかよくわからないんですが、どうでしょうか。ある意味で違法状態のような形になっていますよね。これをまず解消することが大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

渡海国務大臣

今も局長から説明をさせていただいたところでございますが、無償で提供をするという意味も含めて、実質上は検定教科書と同じ取り扱いをしているということでありますから、確かに、法律論をぎりぎりやっていくと、違法というふうに先生が言われるようになるのかもしれませんが、実態上としては同じ扱いとして取り扱えるということでありますから、そのように御理解をいただいたらいいのではないかというふうに思っております。

高井委員

いや、大臣、実態がそうなので、実態に合わすように法律を変えればいいんじゃないですかということを申し上げているんです。やはり法的根拠というのは結構大事ですので、実態が今そうなっているんですから、実態に合わすように、政省令でできるのか、この法律改正をきちんとしなくてはいけないんじゃないかなと私は思うんですけれども、ぜひその点もお願いを申し上げたいと思っています。

そして、この四月から文科省において、有識者を交えて拡大教科書の標準的な規格について検討されるということも御答弁の中でありましたけれども、どんなに立派に規格ができても、出版社が実際にその規格で拡大教科書を発行してくれなければ絵にかいたもちに終わってしまうわけでございますから、現に、教育出版という出版社を除いて、一昨年に国会の附帯決議や大臣書簡が出た後も、迅速な動きが残念ながらそんなに見られていません。これは、大臣、なぜだと思われますか。

渡海国務大臣

そこのところはちょっと明快に私は今答えは持ちませんが、私が聞いている範囲では、例えばデータを渡すといっても、データそのままでは実は簡単には使えない。そうすると、それを使えるようなソフトにしていく等の作業において、これは無償ですから、かかった費用は出すわけでありますから、やってもらえたらありがたいと思うんですが、なかなか現実に教科書会社の方も対応がし切れていないというような実態があるのではないかなと。教科書というのは、次々出していくわけでありますから、新たな検定という、教科書の編集の作業もあるわけでございますから、実態はそういうことが起こっているのではないかなというふうに推測をしているところでございます。

高井委員

済みません、質問に夢中になって、委員長や理事の皆様の御了解をいただいて、拡大教科書を皆さんにぜひごらんいただこうと思っていたのを、遅くなりましたけれども、回してよろしいでしょうか。

佐藤委員長

はい、結構です。

高井委員

ぜひ、ごらんください。

確かに、一冊一冊大変時間がかかると。丁寧にオーダーメードでやっているならば大変時間がかかるのもよくわかりますし、教科書会社も大変だというのもよくわかるつもりなんですけれども、多分、今見ていただいたらわかると思うんですが、今のこの御時世において、これをデジタルデータで提供して、また、微調整というか、いろいろなところを細やかに直すことはボランティアに頼むというふうな形に逆にできないだろうかと私は思うわけであります。

つまり、多くの弱視児童をカバーできる最低二種類ぐらいの文字の大きさの拡大教科書を文科省が規定して、それを出してはどうか。出してくれということを教科書会社に依頼して、もちろん義務教育の教科書だったら無償なので、教科書提供会社も、採算に乗らないということでさほど負担はかからないのではないかとも思います。それ以外の細やかな部分はボランティアの方に担ってもらう。その方がボランティアの方々にとっての負担も、今パンクしているという話も聞いていますので、負担も軽いのではないかと思いますし、もしくは、教科書について、文科省がボランティアのノウハウを買う形で専門職として成り立たせる仕組みをつくる。今検討会議をなさっているということなので、そういうことも検討されていると思うんですけれども、もうこの問題、随分前から議論に上がっていることですので、ぜひ早急にお願いしたいというふうに思っています。

基本的に、供給のあり方について、弱視の見え方が一人一人異なるので、ボランティア製作が望ましいというお考えではないんですね、文科省として責任を持ってやっていくということでよろしいんですね。

金森政府参考人

お答えを申し上げます。

御指摘がございましたように、拡大教科書につきましては、その大半がボランティア団体の努力によって製作されているものでございます。

このような状況を踏まえまして、私どもでは、ことし三月十八日に、渡海文部科学大臣から、拡大教科書の普及充実を図るため、教科書発行者に対して改めて拡大教科書の発行を要請したところでございます。

文部科学省といたしましては、教科書発行者や拡大教材製作会社ができるだけ多くの弱視児童生徒のニーズに対応した拡大教科書を発行することができるよう、視覚障害教育の専門家や教科書発行者などの関係者によって構成する拡大教科書の標準規格を策定するための検討会議を早急に設置いたしまして、拡大教科書の具体的事例を集めた実践的モデル集を作成し、そのノウハウの普及啓発に努めてまいりたいと考えております。

また、デジタルデータの提供につきましても、データを円滑に提供するためのルールづくりや、また管理運営組織の立ち上げの検討を行い、その提供の拡大を図ってまいりたいと考えているところでございます。

高井委員

いずれにせよ、きちんと行政として予算をつけて拡大教科書の供給体制を確立することにぜひ尽力をしていただきたいと思いますし、全国で今弱視の子供たちが教科書を待っています。一人残らずすべての児童に教科書を提供するという義務教育の大前提を果たすためにも、ぜひ努力をお願いしたいというふうに思っています。