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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

2009年4月30日 衆議院議長 河野 洋平殿 参議院議長 江田 五月殿 弱視者問題研究会 代表 並木 正

教科書バリアフリー法の一部改正を求める要望書

日頃より視覚に障害のある児童・生徒の教育にご理解とご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。また昨年6月には、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」いわゆる「教科書バリアフリー法」を可決していただきましたことに深く敬意を表します。

この教科書バリアフリー法の適用は、平成21年度使用教科書からとなっておりましたので、全国の約3200名の弱視児童・生徒は今度こそ確実に拡大教科書が給与されるものと信じておりました。しかしながら、実際に目の見えにくい子どもたちに適切な拡大教科書が給与されるという状況には至りませんでした。昨年4月段階では義務教育の検定教科書427点のうち、出版されている拡大教科書は69点でした。教科書バリアフリー法が施行され、文部科学省が定める標準規格が公表され、教科書出版社に拡大教科書の発行の努力義務が課せられたにも関わらず、09年度から新たに出版される拡大教科書は、85点に留まることが明らかになりました。これまでに出版されていた69点と併せても154点で全体の約36%です。図画工作や美術といった教科は全く発行されず、義務教育の検定教科書を発行している19社のうち8社は1種類も拡大教科書を発行しないということです。

高校段階については、09年3月30日に文部科学省より第二次報告が公表されましたが、そこには「高等学校段階における拡大教科書は、標準規格に適合する標準拡大教科書を小中学校段階と同様に提供するとともに、高等学校段階のより一層多様化したニーズにも応えられるように、単純拡大教科書も選択肢として、提供していくことが適当と考える。」と記述されています。しかしながら、4月の始業日に配布された拡大教科書は盲学校の高等部を含めて1種類もありませんでした。拡大教科書の供給体制の充実は、3度の国会付帯決議や2度の文部科学大臣の書簡でもほとんど進まず、最終的に教科書バリアフリー法の制定によって教科書出版社の努力義務が規定されたところでした。このままでは今度こそ確実に拡大教科書が入手できると信じていた弱視児や保護者の期待も再度裏切られ、教科書を読むという最低限の学習環境すら整えられない子どもたちのニーズが引き続き取り残されることになります。

また、通常の高校に在籍する弱視生徒の拡大教科書の購入費の軽減策も未だ講じられておりません。たとえ拡大教科書の供給体制が整えられたとしても、家庭の経済状況によっては高額な拡大教科書を購入できないという自体も起こり得ます。これは憲法が定める法の下の平等や教育の機会均等という精神から考えても問題があると言えます。

米国の連邦議会は2006年に教科書出版社から提出される教科書データのファイルフォーマットを拡大教科書や点字教科書、電子教科書などに展開しやすい型式に統一するとともに、国立教材アクセスセンターを設立し、障害のある児童・生徒の教科書保障を行っています。

我が国も批准予定である国連障害者の権利条約では、「障害のある児童が障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられること。」と規定されています。

国連障害者の権利条約に抵触しないためにも、また憲法違反とも言えるこのような状態を改善するためにも教科書バリアフリー法を改正し、下記事項の実現をを要望する次第です。何卒よろしくお願い申し上げます。

(連絡先) 弱視者問題研究会 代表 並木 正 <<住所等省略>>