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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

参議院 文教科学委員会 平成20年6月5日(木)

委員長(関口昌一君)

教育、文化、スポーツ、学術及び科学技術に関する調査のうち、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案に関する件を議題といたします。

本件につきましては、理事会において協議をいたしました結果、お手元に配付しておりますとおり、草案がまとまりました。

この際、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案の草案の趣旨及び主な内容について御説明申し上げます。

憲法には、すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有すると規定されております。また、教育基本法には、国と地方公共団体に対し、障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上の必要な支援が義務付けられております。

しかし、現実には、障害者は障害のない人に比べて大きな負担を強いられながら教育を受けている場合も見受けられます。例えば、本法律案提出のきっかけとなった小中学校の通常学級や高等学校に在学する弱視の児童生徒については、その多くが、ルーペ等を使用しながら学校教育を受けているため、教科書の読解や授業の進度に苦労するなど、大きなハンディキャップを背負って勉強しております。この問題を解決するためには、教科書の文字、図形等を拡大した拡大教科書が必要となることから、小中学校の通常学級で学ぶ弱視の児童生徒に対しては、平成十六年度から予算措置により拡大教科書の無償給与が始まりましたが、その作成のほとんどを各地のボランティア団体等に依存しているため、限られた教科と部数しか供給されていません。

また、近年、教科書等について、視覚障害に限らず、例えば発達障害のある児童生徒など、様々な障害等を有する児童生徒にとって可能な限り使いやすいものとするように配慮していくことが求められております。

こうした現状にかんがみ、本法律案は、幅広く障害等のある児童生徒に配慮した教科書等の普及促進等を目指そうとするものであります。

以下、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。

第一に、この法律は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害のある児童生徒のための拡大教科書や点字教科書等を教科用特定図書等と位置付け、その発行の促進、使用の支援等により、その普及の促進等を図り、児童生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず、十分な教育が受けられる学校教育の推進に資することを目的としております。

第二に、国は、教科用特定図書等の普及の促進等に関して必要な措置を講じなければならないこととするとともに、教科書発行者は、その発行する検定教科用図書等について適切な配慮をするよう努めることとしております。

第三に、教科書発行者は、文部科学省令で定めるところにより、検定教科用図書等の電子データを文部科学大臣等に提供しなければならないこととし、提供された電子データは、教科用特定図書等を発行する者に対して提供することができることとしております。

第四に、文部科学大臣は、教科用特定図書等について、標準的な規格を定め、公表するとともに、教科書発行者は、文部科学大臣が指定した種目の検定教科用図書等について、この規格に適合した標準教科用特定図書等の発行に努めなければならないこととしております。

第五に、国は、教科書発行者による電子データの提供方法及び教科用特定図書等作成への活用並びに標準教科用特定図書等の発行に関して、助言その他必要な援助を行うこととするとともに、発達障害等のため検定教科用図書等において通常使用される文字や図形等の認識が困難な児童生徒が使用する教科用特定図書等の整備充実のための調査研究等の推進をすることとしております。

第六に、小中学校の通常学級及び高等学校においては、在学する視覚障害その他の障害のある児童生徒が、検定教科用図書等に代えて教科用特定図書等を使用することができるよう必要な配慮をするとともに、国及び地方公共団体は、教科用特定図書等の発行に関する情報の収集、提供その他必要な措置を講ずることとしております。

第七に、国は、視覚障害その他の障害のある児童生徒が検定教科用図書等に代えて使用する教科用特定図書等を小中学校の設置者に無償給付し、設置者は、各学校の校長を通じてこれらの児童生徒に給与することとしております。

第八に、標準教科用特定図書等の円滑な発行を確保するため、その需要数の教育委員会から国への報告及び国から発行者への通知の制度を設けることとしております。

最後に、国は高等学校において障害のある生徒が使用する教科用拡大図書等の普及の在り方及び特別支援学校に就学する児童生徒について行う援助の在り方について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとするとともに、教科書発行者による電子データの提供等について、所要の著作権法の規定の整備を行うこととしております。

なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、平成二十一年度において使用される検定教科用図書等及び教科用特定図書等から適用することとしております。

以上がこの法律案の草案の趣旨及び主な内容であります。

それでは、本草案を障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

委員長(関口昌一君)

御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。

なお、本会議における趣旨説明の内容につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

委員長(関口昌一君)

御異議ないと認め、さよう決定いたします。

この際、林君から発言を求められておりますので、これを許します。林久美子君。

林久美子君

私は、民主党・新緑風会・国民新・日本、自由民主党・無所属の会及び公明党の各派共同提案による障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する決議案を提出いたします。

案文を朗読いたします。

   障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する決議(案)

 政府及び関係者は、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一、拡大教科書等の供給・普及の促進という国の責務を果たすためには、教科書発行者による拡大教科書等の発行が重要であることにかんがみ、その発行が一層促進されるよう、必要な措置を講ずること。

二、教科書発行者からの教科書のデジタルデータの提供については、その提供が円滑に行われるとともに、提供されたデジタルデータが適切に管理・活用されるよう、必要な支援措置を講ずること。

三、高等学校において障害のある生徒が使用する拡大教科書等の普及の在り方の検討に当たっては、拡大教科書等購入費の自己負担の軽減など必要な具体的支援について検討し、その結果に基づいて適切な措置を講ずること。

四、特別支援学校における就学援助の在り方の検討に当たっては、幼稚部及び高等部専攻科の支援策を含めて検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

五、特別支援学校高等部専攻科において、いわゆる音声教科書購入費の自己負担の軽減が図られるよう、必要な措置を講ずること。

六、将来の教科書や教材のデジタル化に備え、すべての児童生徒が障害の有無や程度にかかわらず、快適に利用できる電子教科書や電子教材が開発されることとなるよう、継続的に調査研究を推進すること。

七、無償給与の実施に当たっては、障害のある児童及び生徒に対して、必要となる検定教科書及び教科用特定図書等が確実に給与されるよう、適切な措置を講ずること。

  右決議する。

以上でございます。

何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

委員長(関口昌一君)

ただいまの林君提出の決議案の採決を行います。

本決議案に賛成の方の挙手を願います。

  〔賛成者挙手〕

委員長(関口昌一君)

全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。

ただいまの決議に対して、渡海文部科学大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。渡海文部科学大臣。

国務大臣(渡海紀三朗君)

ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。