日頃より視覚に障害のある児童・生徒の学習環境の充実にご理解とご尽力を賜り、深く感謝申し上げます。
既にご案内の通り、我が国は2014年1月20日、障害者の権利に関する条約を批准しました。また「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)も成立し、2016年4月から施行されようとしています。障害者差別解消法は、障害者の機会の平等を実現するために公共機関に対し合理的配慮の提供を義務付けており、合理的配慮の不提供は差別に当たるとしています。そこで弱視者問題研究会は、学校教育現場における教科書保障に関し、以下のような合理的配慮、及び環境を整備をしていただくことをここに要望いたします。障害者差別解消法に基づき、今後作成される対応要領においてご配慮いただけますようお願い申し上げます。
記【理由】
弱視生徒の学習に必要不可欠な拡大教科書ですが、義務教育段階は全ての教化で発行されているにも関わらず、高校段階となると視覚障害教育の専門機関である盲学校採択の教科書でさえ文部科学省が定めた標準的な規格通りには発行されておりません。盲学校は北海道から沖縄まで教科書採択を統一しているため、四十数種類の拡大教科書が発行されれば多くの弱視生徒の学習環境が整うことになります。現状は比較的軽度の弱視生徒が使う単純に拡大された拡大教科書は多く発行されていますが、中・重度の弱視生徒が希望する18,22,26ポイントの拡大教科書はほとんど発行されておりません。この状況は教育の機会均等を定めた日本国憲法、拡大教科書の発行を求めた教科書バリアフリー法、障害者への合理的な配慮を義務付けた障害者差別解消法などに抵触しかねません。盲学校高等部の採択教科書につきましても義務教育段階と同様に標準規格通りの拡大教科書が発行されますよう要望いたします。
【理由】
障害のある児童・生徒が特別支援学校に就学している場合、小学部から高等部まで就学奨励費制度が適用になっています。また、平成25年度からは障害児が地域の小・中学校の通常の学級に在籍していても就学奨励費制度が適用されることになりました。これは国連障害者権利条約も推奨し、文部科学省もシステム構築を目指しているインクルーシブ教育の流れを受けたものだと思われます。しかし、ここでなぜ高等学校が対象にならなかったのか、理解できません。全国には多くの視覚障害生徒が高等学校に在籍していますが、就学奨励費が適用されていないため、通常の検定教科書の数十倍に及ぶ拡大教科書や点字教科書を自己負担しなければならない状況が続いています。これは法の下の平等にも反しているとも考えられますので、早期に国、または地方公共団体などの公費で価格差を補償するなどの措置を講じていただけますよう要望いたします。