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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

参議院 予算委員会 平成22年3月8日(月)

植松恵美子君

それでは、川端大臣にお伺いいたします。平成二十年九月に施行されましたいわゆる教科書バリアフリー法について伺います。

これらの法律の制定によりまして、今までボランティアの皆さんが手書きなどによって手作りで作っていただいた状況から、拡大教科書を教科書会社より出版してもらえるよう前進をすることができて一年目を迎えます。

まだすべての拡大教科書を必要としている子供さんたちに教科書が届いているわけではありませんから、義務教育である小中学校の全児童や生徒はもちろん、高等学校で学んでいる生徒さんたちにも今後は対象を広げていくことは重要であると考えておりますけれども、どうもデジタルデータが非常に複雑で、ボランティアの方が拡大教科書を作るのに大変な手間が掛かり、デジタルデータを使い勝手のいいものにするために、データ管理だけに、民間企業に委託しているんですが、年間六千万円も掛かっていまして、そして、その教科書デジタルデータ提供者及び充実事業に一億一千五百万円必要となっている。実際に教科書を買う購入費用が約二億円に対してこれだけのデータ管理のお金が掛かっているんですね。

私は、もちろん子供たちがひとしく教育を受ける権利を保障することをコストに換算することはふさわしくないということは重々承知でありますが、一方で、弱視の子供さんたちのニーズに幅広く対応できる方法として教科書のデジタル化ということは今後中長期的に見据えていかなければならないのではないかと思っております。

微妙な並び替えだとか見やすいフォント、あるいは白黒反転、黒地に白い文字をなど、障害の程度によってベストだと言われる教科書は十人十色です。また、教科書の発行部数によっては一冊が十万円以上する教科書も販売されていると聞いております。また、拡大教科書は大変重くて持ち運びも不便なんですね。

ですから、まずは、いわゆる弱視の障害を持つ子供さんだけでなく、将来的には全児童にデジタル教科書の導入もあり得ると思いますので、今後、文科省としてのデジタル教科書への取組について、方向性について教えていただけますでしょうか。

国務大臣(川端達夫君)

お答えいたします。

非常に関心を持って熱心に取り組んでいただいて、有り難く思っております。

御承知のとおり、法案ができまして、義務教育で現在検定教科書が四百二十七点、そのうちボランティア団体からのデータ提供の要望が二百九十三点で提供が二百九十三点、高等学校では八百八十一の教科書点数で、要望がこれはまだ少ないんですが五十二点で提供が五十二点ということで、御要望があったものは全部出しているんですが、御指摘のように、受けられたところからは使い勝手が悪いから使えないと。

一つは、データの容量が非常に大きい。それから、文字が文字化けして読めない場合があるとか、あるいは画像が取り出せない。これは、教科書会社自体は、もういわゆるDTPソフトというんですけれども、デスク・トップ・パブリッシング、要するに卓上出版ソフトという、これはこういう書籍を出版するときに、特に画像とか図形とかいろんなものが入っているときにはそのページ自体をコンピューターでデータも入れながら編集してしまうという、そういうデータです。ところが、ボランティアの皆さんとかが拡大教科書を作ろうとすると、例えば一ページ目には解説の文字だけにして、それから次のページに画像を入れてというふうにそれぞれのデータが必要である。ところが、それを打ち出しますと、何か行が合わなかったり、全く文字が化けたりということでもう使えなくなる。

御指摘のように、それでそのレイアウトも含めて変更するということにしようと思うと、そういう編集の校正費が六百万円で、著作権料が二百二十五万円、合計八百八十五万円も掛かると。単純に拡大、いわゆるコピーの拡大みたいに大きくすれば、著作権料の百五万円だけで済むと。しかし、大きくするということはどんどん大きな教科書になるということですから、それはもう不可能であるということが一番問題になっています。

そういう意味で、データを教科書会社の人が提供していただくときに、編集したそのページのデータではなくて、個々のデータとして取り出せるように変えて出していただくと使い勝手が非常に良くなると。そこの部分でどういうことができるのかという調査研究費を約一億余り今度で付けまして、出版社の方等も含めて議論をして何とかこの壁が乗り越えられるように努力してまいりたいと思います。

それから、まだ具体化はしてないんですが、トータルとしては、こういう拡大教科書も含めたいわゆる教科書のデジタル化というのは、教室におけるいわゆるテレビを全部で開始するというと、そのテレビ画面を使うということと同時に、いわゆる端末の応用で、これは総務省なんかも一生懸命ICT化ということで、教科書自体のその電子情報自体をそのまま使えるという端末なんかの工夫とかいうものもこれからの時代にはあるべきではないかと私は思っていますので、そういうことも含めて総合的に取り組んで、あらゆる人が、子供たちが勉強の、教科書がきちっとアクセスできるように努力してまいりたいと思っています。

植松恵美子君

ありがとうございました。