民主党・新緑風会の神本美恵子でございます。
林委員に続きまして質問させていただきます。
私は、学教法の法律に入る前に、弱視の子供さんの拡大教科書の問題についてまず質問させていただきたいと思います。
この問題については、先般の一般質疑でも我が党の鈴木委員からも質問がございました。私も、著作権法の一部改正のときにもこの問題について質問させていただきまして、当時の遠山文科大臣の方から、すべての通常学級で学ぶ弱視の子供たちに例外なく教科書が無償で渡るように最大限努力をしたいという答弁をいただきまして、それを受けて、(発言する者あり)ありがとうございます。それを受けて、文部科学省としてもすぐに着手されて取り組まれたことは私も知っております。
ところが、それで一定の改善は見られましたが、まだ遠山大臣がおっしゃった例外なく教科書が手渡るというところまでいっていないという実態を党のヒアリング等で聞きまして、私もちょっと茫然としたんですが、すっかりもう手渡っていると、無償でと思っていたんですけれども、現状どうなっているかということをまず御紹介したいと思います。
今日、委員の皆様にもお手元に資料を配らせていただいています。これ、先般の視察の折に筑波大盲学校でもいただいた資料なんですけれども、視覚障害児の教科書の実態ということで、現状、盲学校においては点字教科書は無償ですべて発行されて手渡っているわけですが、拡大教科書については、盲学校においても、国語、算数、理科、社会、それから中学校はそれに英語がプラスされたものは民間の出版会社が発行しておりまして、それが手渡っているわけですけれども、右の方の弱視学級、通常の学級、ここにいる子供さんたちのための拡大教科書は発行されておりません。無償にはなったんですね。しかし、発行されておりませんので、ただ一部、※の一というふうに書いて、下の方に欄外に書いておりますけれども、盲学校で採択された教科書と同じ教科書が採択された地区の学校に行っていればこの拡大教科書が手に入るわけですけれども、それ以外はほとんどボランティア作成による教科書になっております。
今日、これは盲学校の先生にお借りしたんですが、これが民間の出版会社が発行している拡大教科書で、こういう、これは何ポイントかな、二十二かな、ああ、十八ポイントですかね、そしてこれが二十二ポイント、それから二十六ポイントというふうに三種類、これは東京書籍が大活字という出版社に依頼して、委託して作ったものであります。
その資料の裏にどういうところがどういう教科書を出版しているかという一覧表がございますけれども、光村、それから東京書籍がこういう教科について、ポイントは、文字の大きさというところにありますけれども、十八、二十二、二十六ポイント出しているところと、二十六ポイントや二十二ポイントというふうに一つずつの種類しか出していないところもございますけれども、こういう状態です。
で、これ以外の教科書を採択した地域の学校に通っている弱視の子供さんには、ボランティアが作成したこういう、手書きなんですね。本当に私は感動したというか、何かこう、何とも言えない気持ちがしたんですが、サインペンで、本当に整った字で、手書きの教科書が一冊一冊作られているということです。これは英語の一と書いてありますが、恐らく拡大しますので、普通の教科書がこの厚さであれば、この何分冊かになるというお話も聞いております。
今、現状としてはそういう状況にあるということです。これ、よろしければ回して、皆さん方、手に取って見ていただけたらと思います。
この拡大教科書をボランティアで作成されている、そのボランティアが現在全国で約六十団体あるそうです。その方たちが、一人一人のニーズに合わせて今のような手書きで行われているということです。
しかし、二〇〇五年度で既にこのボランティアが作成する教科書のその供給体制といいますか、それはもう能力を超えて、もう悲鳴が上がっているんですね。いつまでボランティアに任せるのかというような悲鳴が上がっております。実際には、依頼をされた分の六、七割しか供給できていないという現状にございます。
そこで、今現状、通常の学級に通いながら検定教科書の文字が読みづらい、いわゆる弱視児童生徒数は千七百三十九名いるのに対し、実際に拡大教科書が無償で給与されたという子供さんは五百十八名、三分の一以下なんですね、というような現状にあります。これは本当に、すべての子供に例外なく無償で教科書が与えられるというのは、これは憲法、教育基本法をまつまでもなくもう当たり前のことですので、それが供給されていないということについて、是非これはもう、何というか、国の責務としてやるべき問題だと思いますので、早急な供給体制の確立をということで幾つか御質問をします。
まず、ボランティアや弱視問題研究会の方々にお聞きしますと、教科書会社が二十二ポイント版の拡大教科書を出版すれば約七割のニーズにこたえられると。あわせて、三十ポイント程度の拡大教科書も出版されればほぼすべて、一〇〇%近くそれでカバーできると言うんですね。ですから、一番早いのは、教科書無償法を改正して、それを出版社に義務付ければいいと思うんです。それが一番簡単に国が責任持って供給するということになるんですが、恐らくこれは多分駄目っておっしゃるかもしれませんけど、ちょっといったん聞いてみたいと思います。いかがですか。どういう駄目な条件があるのかということも含めて。予告していませんでしたけれど。
ただいまお話がございましたように、拡大教科書を必要とする児童生徒に拡大教科書が確実に無償で給与されるということは大変重要なことだと思っております。文部科学省としても、各教科書発行者に対して、拡大教科書の作成について取組を促しているところでございますけれども、まだ各教科書発行者が拡大教科書を発行するというところまでは至っていないのはただいま先生からお話があったとおりでございます。新たな義務を課すということになりますと民間の企業に対して規制を掛けるということになるわけでございますので、直ちにはなかなか難しい状況にはございます。
ただ、私ども、一日も早く必要な児童生徒に拡大教科書が給与されることを目指しまして、各教科書発行者と具体的な方策について検討していきたいと、こう思っております。
直ちに義務を課すことは難しいということなんですけれども、ずっとこの作成に携わってきたボランティアの方たちから言わせれば、いつまでさせるんだと、まあさせるんだ、本当に善意で子供たちのためにやってこられた方たちの言葉だからこそそのままに聞いてほしいんですね。国がやるべきことを自分たちがやっている。しかし、それでも電話が掛かってきて、うちの子の視力に応じたこういう教科書欲しいと言ってもそれを断らざるを得ないという、そのつらさを含めておっしゃっております。しかも、皆さん退職された方や主婦の方たちで、しかも、今、回していますように、本当に同じ形のゆがみのない手書きの文字ですから、熟練も要するわけですね。これ以上、その人材育成、高齢化しているということで、熟練をしていくというような人材養成についてもなかなかそう簡単ではないという現状であることをまずしっかり認識していただきたいと思います。
そこで、じゃ一歩譲って、すぐにそれができないとして、拡大教科書のためのすべての教科書のデータの提供、これを義務化することはできないかということですね。まあ、文科省としても努力をしていただいて、教科書会社の協会の方に指示をされて、今年の四月七日、出版社にデータ提供の協力要請を行われております。これについては関係者の皆さんも一定評価をなさっております。
しかしながら、それはあくまで協力要請でありますし、提供されているデータも、お聞きしますと、すべての子供が手に持っている教科書の全データではなくて、例えば教師用指導書のデータであったり、教科書の一部であったり、挿絵とか写真とかのデータが抜けていたりと、完全なものではないと言うんですね。
ですから、そこですべての教科書のすべての情報が含まれるデータがこのボランティアの方たちに入手しやすいように、提供されるよう出版社に義務付ける、これはいかがですか。
教科書のデジタルデータの提供につきましては、三月の本委員会におきましても御指摘をいただいたところでございます。私ども、その審議を踏まえまして、社団法人教科書協会に対しまして加盟各社にデジタルデータの提供について協力要請をするよう指示をいたしまして、教科書協会は、四月四日付けで加盟各社に対しまして国会での議事録を添付して協力要請の文書を発出をしたところでございます。
また、デジタルデータ等の提供の仕組みにつきまして、改めてボランティアの方々に対しまして周知するように教科書協会に対しまして指示をいたしまして、教科書協会では四月七日付けで個々のボランティア団体の方々に、現時点で提供できるデジタルデータの一覧を添付をしまして、提供の仕組みなどについてお知らせする文書を発出をしたところでございます。
さらに、ボランティア団体の方々にとりまして使い勝手の良いデジタルデータとすべての教科書のデジタルデータが提供されるように、社団法人教科書協会に対しまして早急に検討するように今指示をいたしております。
教科書協会は、四月の十日に著作権専門委員会を開催をいたしまして、提供するデータの内容、提供する教科書の種類数が改善されるように検討を開始をしたと承知をいたしております。
いずれにいたしましても、義務付けというのはなかなか難しい状況もあるわけでございますが、このデジタルデータの提供につきまして、私どもとしても最善の努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
今、この手書きの、正に最初は印刷だと思ったんですが、この後ろの方の百五十九ページ辺りは印刷なんですが、手前の方は全部明らかに、これ百四十四ページ辺りはこれ手書きなんですよね。本当に活字と同じように手書きで努力をされて読みやすいように作っているとか、大変な御苦労をいただいております。
今、OCRとか読み取り機で電子的にデータをデジタルデータにして、そして拡大して印刷するということは可能だとは思いますが、それでも正誤訂正の努力とか相当なマンパワーが掛かってまいります。そういうことからすると、今答弁、局長が申し上げたように、デジタルデータを提供していただければ、それが一番簡単なわけでございますから、拡大教科書を発行しない場合にはデジタルデータを積極的に提供してほしいと。これは義務化するのはやはり、ビジネスとしてやっている教科書の出版社に対して私は命令することはできませんが、私の名前でもう一度、この委員会で積極的に答弁したということで、再度担当の方から教科書協会に対して依頼を出すということで、これを積極的にやってもらえるように私も努力したいと思います。
ありがとうございました。
ボランティアの方たちも大臣がじかにその作成教科書を見ていただいて、そして今のような前向きの御答弁いただいたこと、きっと喜んでいただけると思います。私も一歩譲ったかいがありました。
ただ、今のことで本当に前向きな答弁をいただいて有り難いんですが、実は支援者の方からいただいた資料で、二〇〇四年の十一月の点字毎日の新聞記事なんですが、例えばアメリカなどでは障害児教育法の改正案が審議されておりまして、その中で、こういう教材のアクセシビリティーを確保するための基準を国が策定すると。そして、教材出版社に対して、新たに設立する国立教材アクセスセンターというようなものを設立しまして、そこが今のような電子データをきちっと整備をして、そしてだれがその教科書を必要としていて、必要としている子の教科書はこれで、それをどこに依頼するというようなことをコーディネートする。国がそういうことをするというような動きが今出ている。これ、おととしの記事ですので、恐らく今成立しているのではないかと思われます。
国の責任でやるということで、当面は大臣のお名前で先ほどのようにしていただき、早急に供給体制を取るための一歩をしていただく。で、後は安定的に継続的に、毎年これは必要なことですので、安定的な供給体制ということでそういうコーディネートをする機関といいますか、それ文科省にやっていただいてもいいんですが、きちんとやりますよということについてはいかがでしょうか。
今の神本委員の御指摘は、実は与党の皆さんの部会等でも私、直接聞いたこともありますし、また、委員からまた御提言をいただきました。
私は、IT、ICTの教育振興という観点から、そういった教材がどこにあるのか、それから先生方が努力して作られた教材で版権を主張しない、著作権を主張しないようなものについてはどこかにプールして、そして全国からアクセスをしてダウンロードできるようなポータルを作るべきだと私は思っているんです。
そういうことを今検討してもらっておりますので、そういった検討の中で、そういうポータルに、今の電子データ等についても、視覚障害者等の障害のための教材はこういうところにアクセスしていただいて、こういう条件でできますよとか、そういったものの提供というものを併せて検討する必要があるかなと、こういう認識を持ちましたので、今ここでやるとかやらないとか明確に答弁することはちょっとまだ猶予をいただきたいと思いますが、ちょっと研究さしていただきたいというふうに思います。
教科書本文のデジタルデータの提供促進につきましては、大臣の方から先ほど御答弁をいただいたところでございまして、私どもの担当といたしましてもしっかり取り組んでいきたいと思っております。
なお、具体的には、各都道府県においてもどのぐらいの子供さんが拡大教科書を必要としているのか、あるいは拡大教科書を製作するボランティアの方々からいろいろな相談や情報の提供依頼などに対応していく窓口というものをしっかりつくってもらう必要があると思っておりまして、近く、今月末に都道府県の教科書担当者の事務連絡協議会がございますので、その席におきまして、各都道府県教育委員会に拡大教科書の相談窓口をきちんとそれぞれつくっていただくということをまた要請をしてまいりたいと思っております。
まあ前向きにやるという大臣の力強い御答弁をいただきましたので、もうそれで結構だと思います。
あと、こういうふうに文科省として、国として拡大教科書が手渡るように努力しています、こういうふうになっていますよということを是非当事者の弱視の子供さん、保護者の方に、周知徹底ができないとアクセスができないわけですね。通知が国から都道府県、市町村、教育委員会から学校まで行って、学校の先生からその子供さん、保護者まで行かないと手渡らないわけですので、そういう保護者、すべての保護者が知ることができるように、これはもうお願いをしたいと思います。例えば文科省のホームページとか、あらゆる手段を使って周知できるように御努力も併せてお願いしたいと思います。