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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

衆議院 文部科学委員会 平成16年3月17日(水)

肥田委員

次に、義務教育を受ける世代の中で大きな不条理を背負わされている弱視児の教科書問題について質問いたします。

昨年来、文科省はこの件に関してはまれに見る迅速な対応で行ってくださったことに対しては、感謝申し上げたいと思います。

文科省は二〇〇三年十二月二十五日、「通常の学級に在籍する視覚に障害のある児童生徒に対する「拡大教科書」の無償給与について」、こういう事務連絡文書を各都道府県教育委員会に送付していらっしゃいます。内容は、一月三十日までに、拡大教科書を必要とする弱視児の数を調査して、拡大教科書希望の有無やボランティアとの契約などを報告するようにというものでございますけれども、契約予定冊数や児童生徒数についてどのような御報告がございましたか。

原田副大臣

弱視児童生徒に対する拡大教科書の問題でありますけれども、御指摘の、また評価いただきましたように、文部科学省としては常にそう心がけてはおりますけれども、この件についても迅速な対応をしたところであります。

また、その陰に肥田議員が中心となって御活動いただいたということも伺っております。

それで、来年度、十六年度から御指摘のように拡大教科書について無償化をする、予算化措置も現在の予算案にものせておるところでございます。

調査をした限りでは、三月十七日現在、取りまとめておりますけれども、小中学校合わせて五百十四名分、三千九百四十八冊、こういうふうに報告を受けておるところであります。

肥田委員

通常の学校に在籍する弱視児が二千人から三千人と言われておりますから、五百十四名というのは大変少ない数のように思うんですね。

私が聞きましたところでは、拡大教科書の製作依頼がボランティアに殺到しました、それで納期の関係で泣く泣く依頼を断った、そういうケースもかなり出ております。また、ボランティアは首都圏に偏在しておりまして、地域によってはボランティアに依頼できずに拡大教科書が入手できなかった例もございます。

そうした子供たちの姿は報告をお聞きする限り見えてまいりませんけれども、都道府県教育委員会あるいは関係団体から、これまで無償措置に伴った混乱が生じたケースというのは報告がございますか。

原田副大臣

先ほどの数字もきちっと各都道府県から上がってきた数字でありまして、それ以外にもあればまたぜひ対応したいと思います。

また、混乱、トラブルについては特段の御報告はいただいておりませんけれども、何分始まったばかりのあれでありますし、いろいろお聞きいたしますと、数少ない関係者が、また恐らくたくさんの種類の教科書を数少なく印刷する、そういう問題もございまして、ボランティアの方が一生懸命のようであります。例えば納期の問題とか、さらに契約手続等でまだ十分なれていない、私どももまた十分習熟していないところがございますから、できるだけそういうことのないように、また契約等につきましても、できるだけ緩やかに、弾力的に対応するように、こういう指導をしているところであります。

いずれにしましても、何か個別の問題でもありましたら、ぜひ前広に連絡をいただければ、できるだけきちっと対応するようにしたいと思っております。

肥田委員

確かに初めての経験ですから、多少の混乱は私は仕方がないと思います。

ただ、今おっしゃっていただきましたように、緩やかな契約でありますとか、納期の問題とか、かなり大切なところがありますので、件数も少ないと思いますので、ぜひ調査報告をしてくださればありがたいんですが、お願いできますか。

原田副大臣

この問題は、教科書の配付につきましては、大体年度末から年度初めに、まず文科省で各都道府県の担当者を集めて説明会も開いておりますし、また、特に今回の無償措置については新しい制度でありますから、そういうちゃんとした状況の把握を行うということには努めておるところでございます。

この拡大教科書の問題につきましては、いずれにいたしましても、円滑にその制度が導入されるように努力をしたい、こう思っております。

肥田委員

例えばボランティアの人たちの中で、文字の大きさについて、児童生徒の中でいろいろ差があるわけですから、これは個性的な教科書をつくるわけなんですね。ですから、教科書が何分冊になるかというのは、これまた事前に予測することは難しいわけですよ。

ところが、分冊形態の変更によって今後の冊数の増減もあるとしていらっしゃるけれども、途中で分冊変更したら契約違反だと言われたという例もあるわけですよ。ですから、円滑な施行をされるためには、今回とても大事ですから、どんな報告が上がっているか、どんなところに混乱があったということを、再度申し上げますが、ぜひ調査をしていただきたいと思います。

原田副大臣

御指摘のように、契約といいましても、ボランティアもなれておりませんし、制度自体も新しいものですから、何かありましたら、また皆さん方にしっかり御報告したいと思っております。

肥田委員

ぜひよろしくお願いいたします。

それから、弱視児が自分が必要とする拡大教科書を手に入れるためには、ボランティアを探し始めますね。これが大変な苦労なんです。それで、当面はボランティアに依存するということは仕方がないことなんだけれども、将来的には、ほかの子供たちと同じように、学校の責任で安定した教科書供給を行う体制を確立することが本来の姿だと思いますが、大臣、いかがですか。

河村国務大臣

現時点については、ボランティア団体の御理解と御協力をお願いいたしておるところでございまして、当面そういう形で、今回、この制度、対応したわけでございます。

しかし、本来的には、委員のおっしゃるとおり、学校において責任を持ってやる部分というのはたくさんあると思うんですね。そういう視点に立って、これにはきちっと対応できるように、今後どういう形でやっていくか検討しながら対応してまいりたい、こういうふうに思います。

肥田委員

引き続き熱い期待をしてまいりたいと思っております。

高校に通う弱視の生徒は、検定教科書の何十倍という値段で拡大教科書を購入しているわけですね。この現状は、「乳幼児期から学校卒業まで一貫して計画的に教育や療育を行う」と盛り込んだ「今後の特別支援教育の在り方」に照らし合わせましても、放置できない問題でございます。また、盲学校に通う生徒は奨励金で教科書の無償給与を受けていることからも、やはり不条理なことだと思います。検定教科書代を超える費用に対して、国が何らかの形で経済的な支援と配慮を行うことを検討すべきでないかと思いますが、高等学校に通う弱視の生徒、この教科書代について御答弁いただきます。

河村国務大臣

御指摘の点、確かに費用が一般の方よりかかっているということは承知をいたしております。高等学校段階は義務教育でないという点もあって、無償制度をしいていないわけでありますが、やはりどこまでが学校が責任を持つべきことなのか。非常に高額なものですね。そういうものについては、やはり国、国がといいますか、最終的に学校が用意しているということは、これは、高等学校の場合には、県立でありますから、県が一義的にお考えをいただかなきゃなりません。それをまた国が支援するという形をこれまでもとってきているわけでございます。

高等学校が義務教育でない、この制度の趣旨、また教育内容、これはどのぐらい格差があるんだということも含めて、今後の検討課題でありますが、できるだけ教育の機会均等、これはもう障害者であろうと健常児であろうと適用されることでありますから、そういうことの障害にならないように考えていく、こういう基本的な考え方に立って、まさにこれからの特別支援教育のあり方も含めて、前向きに検討していきたい、このように思います。

肥田委員

ぜひ前向きにお願いいたします。

それから、学校図書館と弱視児の支援について伺いたいと思いますが、大臣も御承知のように、子どもの読書活動推進法は、すべての子供があらゆる機会とあらゆる場所において自主的に図書活動を行うことができる環境を整備するとなっております。弱視というハンディに加えて、学校図書館を利用できない、これは二重のハンディになります。ですから、学習参考書、それから一般図書も読めるように、長期計画で各種書籍の拡大文字化をしていったらどうか。弱視児が学校図書館を活用できるように環境整備をしなければならないと私は思っております。国もその技術開発に努めることはもちろんのことでございますが、自治体に対してもその責任を果たすように奨励をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

河村国務大臣

学校図書館にも当然そういうことが考えられなくてはいけない、こう思いまして、教科書は、拡大教科書という形で今取り組みを始めたわけでございます。学校図書館にもそういう考え方が当然入ってくるわけでございますので、これはぜひ、ボランティアの皆さんにも御協力いただく面がまた多々あろうと思いますが、そういうことを踏まえながら、弱視の児童生徒の教育の充実のために、学校図書館もそれに応じた充実を図っていくということが大事なことであろう、このように認識をいたしておりまして、これに向けて、さらに検討を踏まえながら努力していかなきゃいかぬ課題だ、こういうふうに思います。