民主党の高井美穂です。
きょうは、どうぞよろしくお願いいたします。
私は、きょうは、いわゆる教科書バリアフリー法案、障害のある児童及び生徒のための教科用図書の普及の促進等に関する法律案というのが去年成立しまして、それに関することを中心にお伺いをしたいと思っています。
実は、私の娘もあしたが入学式です。小学校一年生になることになりました。(発言する者あり)ありがとうございます。
さっき申し上げたいわゆるバリアフリー法案が成立してから十カ月がたちまして、きょう八日から多くの学校で新学期が始まって、弱視の生徒の皆さん、目の見えない児童をお持ちの皆さんも、新しい拡大教科書で勉強ができるというふうに期待に胸を弾ませておられる方も多いと思います。
義務教育段階については、この法案が通ってから、おおむね当初期待していたとおり、かなり普及が進んでまいりまして、本当に関係各位の皆さんにまず感謝を申し上げたいと思っております。
しかし、問題は高等学校の方であります。この点を中心に質問させていただきたいと思います。
理事の皆さんの了解を得まして、実は、特別支援学校で実際に教えていらっしゃる先生方の御協力を得て、こうしたものをお借りしてきました。これは、また質疑の途中で皆さんにも見ていただきたいし、大臣にも一回試していただきたいと思うんですが、これをかけて、弱視の生徒さんがどのように苦労して教科書を読まれているかということをぜひ皆さんにも体験してほしいということでお借りをしてきました。
こうかけると、左側の目の方が弱視の皆さんが見えている状態で、こうしたルーペを使って教科書を実際に読んでおられるわけです。私も試してみましたが、やはりかなり見づらいですし、本当に肩が凝ります。こうやって苦労して勉強されているんだなと本当にしみじみと感じましたので、ぜひ皆さんで回していただいて、体験をしていただければと思います。
それで、特に、視覚障害を持つ児童の皆さんの中で、点字を必要とする方と拡大教科書を必要とする方とおられると思います。まず、分けてお聞きをしたいと思います。
まず、点字教科書についてであります。点字教科書を必要としている児童生徒の実数を文部科学省として調査して、適切に対応していただく必要があるんではないかと思うんですが、この点、まず政府参考人の方からで結構でございますが、実数把握の状況を教えていただきたいと思います。
小中学校の通常の学級に在籍する児童生徒につきましては予算措置で、また、特別支援学校の小中学部や小中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒につきましては教科書無償給与制度により、それぞれ点字教科書を給与してございます。
これに基づきまして、義務教育段階におきましては、点字教科書を必要とする児童生徒の概数については把握をし、適切な対応を図っているところでございます。
今、高等学校の方のお話はございませんでしたけれども、義務教育についてはそういう適切な把握をされているということでございますが、ぜひ高等学校の方も把握に努めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
高等学校段階につきましては、先般、拡大教科書普及推進会議から第二次報告が提出されました。その中でも、高等学校等に在籍する弱視生徒の実態調査を実施する際、あわせて点字教科書を必要とする生徒についての実態把握を行うことを検討したいと考えているところでございます。
大臣、今御答弁が検討したいということでございましたけれども、ぜひこれは積極的に進めていただきたいと思います。
本来ならば、この法案には平成二十一年度から使用される検定教科用図書等から適用されるようにということで、今年度から本当は実施をされないといけなかったはずなんです。できれば高等学校においてもそうしていただきたかった、でも現実的にそうではないので、いろいろとその点について細かく質問を申し上げていきたいと思います。
拡大教科書の方は、拡大教科書普及推進会議というのが設置をされて、国としての取り組み方針を関係者を交えながら議論していっております。点字の方も、つくり方が違いますので別途早急に検討してほしいので、点字教科書普及推進会議という形を並行して設置されればいいのではないかと思いますし、こうした要望も関係団体から出されているんですが、この点、いかがでございますでしょうか。
拡大教科書と同様に点字教科書も重要な課題と考えておりまして、拡大教科書普及推進会議での報告を踏まえて、教科書デジタルデータの提供を開始したり、また、点字教科書製作者等にも対象として提供しているところでございますが、今お話ございましたように、点字教科書普及に関する意見交換会を本年一月十九日に開催しまして、拡大教科書と同様に今後しっかりと推進してまいりたいと考えておるところでございます。
特に、点字教科書作成のために提供される教科書デジタルデータのあり方、あるいは視覚に障害のある児童生徒の学習に対する配慮がなされた点字教科書の作成方法等、積極的に議論をいただいているところでございますので、その結果を踏まえて、今後、普及方策を講じてまいりたいと考えております。
点字教科書の方は意見交換会が一回だけということだったので、点字を必要とされる方が拡大教科書を必要とされる方に比べておくれているんじゃないかということを御心配されておりますので、さっき御答弁あったとおり、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
そして、全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会という特定非営利法人がございます。二〇〇五年に設立されております。ここから聞いたお話なんですけれども、一九八〇年代から、通常の地域の高等学校に進学をする点字を使用している生徒さんがおりまして、東京都や大阪府などでは、点字の教科書や副教材を製作する費用が保障されているようであります。だが一方、点字教科書を全く保障していない都道府県も高等学校で見られていまして、大きな格差が出ている。特別支援学校、いわゆる盲学校というところの高等部においては就学奨励費により点字教科書が保障されているということを考えれば、少し平等性に欠けるのではないかということを心配いたします。
点字教科書に関しても、高等学校段階における課題解決を図ることを急いでやっていただきたいと思いますし、文部科学省が全都道府県に対して教科書保障措置を講じるように指導する必要もあるのではないかと思います。国費による保障を創設するなど、こうした不合理な地域格差をできるだけ解消していく努力をしてほしいという要望が出ておりますが、この点はいかがお考えになりますでしょうか。事実関係は参考人でも結構でございますが、ぜひ大臣からも御意思をお聞かせいただきたいと思います。
事実関係についてのお尋ねでございますが、一部の自治体におきましては、御指摘ございましたように、それぞれの実情やニーズなどを踏まえ、高等学校に進学する全盲の生徒に対して教科書や副教材を点訳するための経費を負担している事例もあるものと承知いたしております。
各自治体でそういった措置をしているということで格差が生じていることは問題だという御指摘だと思います。
高校について、義務教育と違って各自治体の判断にゆだねているという点で、すぐに国費で保障する制度等を創設することはなかなか難しいかと思いますが、各自治体にできるだけそういう措置をするように今後何らかの方策で指導してまいりたいと考えております。今の御指摘の点は今後しっかり検討してまいりたいと思っております。
ありがとうございます。ぜひよろしくお願いをいたします。
次に、今度は拡大教科書の方の実施状況について御質問させていただきたいと思います。
教科書バリアフリー法の第九条には、小中のみならず高等学校においても「視覚障害その他の障害のある児童及び生徒が、その障害の状態に応じ、採択された検定教科用図書等に代えて、当該検定教科用図書等に係る教科用特定図書等を使用することができるよう、必要な配慮をしなければならない。」というふうに入ってございます。附則にも、先ほど申し上げた平成二十一年度において使用される教科書から適用するというふうになっています。
言うまでもなく、義務教育では先ほど申し上げたように実施されておりますが、高校一年という新しいスタートを切るに当たって、受験などを考えても待ったなしの状況で、この子たちにもぜひ、本当は高等学校にもこうした拡大教科書が今年度から手に渡るようにしていただきたかったというふうに思います。
実は、現場の方からも新学期に間に合わないのではないかと心配する声が以前から上がっておりまして、私もいろいろ聞いておりました。二月、三月等も、早くしないと間に合わない、ぎりぎり、いつになったらできるんだろうかということを心配し続けておりましたけれども、結局、今度の拡大教科書は出版ベースでは今年度には一種類も弱視の生徒の手に渡っていないという状況が、現在、四月八日の現状でございます。
ボランティア団体を中心に義務教育段階の拡大教科書の作成に頑張っていただいて、そちらの方に今手がかかって、その業務に追われて、高校段階の方の教科書作成には少し手が回っていないというのが現状だというふうに思います。
私が先般聞きました質問主意書に対して、政府の御答弁が、「視覚障害のある児童生徒のための教科用特定図書等の普及促進は、教育の機会均等の観点から重要であり、必要とする児童生徒に教科用特定図書等が速やかに、かつ、確実に給与されるよう措置することは、喫緊の課題と考えており、今後とも、教科用特定図書等の普及に向けて必要な措置を講じてまいりたい。」という御回答を得ました。
そこで、改めてまた伺いますが、高校の拡大教科書はなぜ新学期から給付されるようにならなかったのでしょうか。この給付の状況と、もしくは給付が欠ける理由を教えていただきたいと思います。
御指摘のとおり、拡大教科書については、小中のみならず高校段階においても早期に提供できるように精力的に取り組んでまいった次第でございますが、高等学校段階については、現状では拡大教科書使用実績が極めて少ないということで、効果的な拡大教科書のあり方について十分な実証データが得られていない点がありまして、このために、推進会議の提言も踏まえて、高等学校の必修教科等、需要の高いものを中心に拡大教科書を試行的に作成しまして、適切な標準規格を早期に定めるために、実証データ的な収集をすることとしております。
したがって、ことし、今年度については、今まで使用実績がない中で標準をどうするかということで、多分二種類ぐらいの試行の教科書を各現場に配付して、そして実際にどちらが標準にふさわしいかという検証をした上で本格的な拡大教科書の作成をしていかなければならない段階でございまして、まことに残念ながら、それが間に合わなかったということでございます。
また一方で、高等学校段階では、いろいろないわゆるニーズが、義務教育とは違って、科目もそうですし、学校現場におけるいわゆる授業内容ですか、そういったことも多様化されておりますので、そういうことにも対応するために多少時間がかかっているということで、大変おくれた面は申しわけないと思っておりますが、今そういう状況の中で鋭意努力をしているところでございまして、速やかに標準等を決定し、そして拡大教科書の発行に努めてまいりたいと考えております。
教科書バリアフリー法第六条第一項に基づく、教科書出版社等が拡大教科書を作成する際の標準的な規格が文部科学省より昨年末に公表されました。これが、さっき大臣もおっしゃった検討の中の有識者による拡大教科書普及推進会議で出された結果を踏まえて、こうした標準規格を出されたわけでございますし、まず義務教育段階についてすべての教科書を対象としてこういう標準規格が出されたことで普及が進んだことは間違いございません。
そして、なぜそれが、義務教育だけじゃなく、高校段階の標準規格が先送りされたのかということが疑問でございます。さっき大臣がおっしゃったように、いろいろと教科がレベルが上がって難しくなっているし、その他さまざまな実証データが少なくてまだ検討中だということもおっしゃっておられましたが、高校段階の基準、この標準規格をするということに関して、三月三十日に出された拡大教科書普及推進会議の中でも、実証的な研究に早期に取り組むべきと考えると出されていますし、さっき大臣がおっしゃったとおり、需要の高いものから中心に、試行的に発行、供給し、実証データの収集を行って、早期に高等学校段階の標準規格を作成する必要があるというふうにまさに出されておられるし、大臣もそのように御認識をされていると思います。
この高校の教育方法、教材のあり方を検討するワーキング会議というのも昨年五月から八回も開かれておきながら、結局その八回、この結論は、こうした早期に検討、早期に検討ということだったのですが、ここに書かれているとおり、本当に、さっき大臣おっしゃったように、二種類でもいいですから、まず高校生に渡して試して見てもらう、そうでなければ前に進まないと思いますので、それぐらいでしたら早急にできるのではないかというふうに思うんですが、ぜひお願いを申し上げたいと思います。
出版社やボランティアがどんなに頑張っても一週間では作成することは不可能ですので、できるだけ早く、会議ばかり八回も開いても、前に進んでいなければ、会議を開いても結果として果実が得られないということでは、期待していた関係者の皆さんも残念でありますし、会議を開く意味を考えると、費用もかかるわけですから、ぜひ前向きに進めていただきたいと思います。
もう一度聞きますが、ここまで八回も開いておきながら、試行的に高校生にお渡しすることがなぜこんなにおくれたんでしょうか。
拡大教科書普及推進会議におきましては、平成二十年四月から、拡大教科書標準規格、それから教科書デジタルデータ提供促進、また高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方の三つのワーキンググループを設置し、議論が進められました。平成二十年十二月に小中学校段階を対象とした第一次報告がまとめられ、高等学校段階につきましては、この第一次報告も踏まえて議論が進められ、ことし三月三十日に第二次報告を取りまとめたところでございます。
先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、高等学校段階におきましては、教科書発行者から拡大教科書は発行されておらず、また、その利用実績も小中学校に比べて少ない上、生徒のニーズや教科、科目も小中学校段階に比べてより一層多様化いたしますことから、どのような拡大教科書が効果的かについての実証データがないのが現状でございます。
こうした状況を踏まえながら、この推進会議におきまして精力的に検討、討議が進められた結果、第二次報告において、小中学校の標準規格に準じた拡大教科書を試行的に発行、供給し、望ましい体裁、態様等の実証データの収集等を行った上で、高等学校段階の標準規格を文部科学省において策定すべき旨が提言されたところでございます。
利用実績も少ないというかないですし、教科書出版社から発行されていないということですが、逆に言うと、高校段階の標準規格を先送りしたということは、逆にまた出版社に拡大教科書発行の努力義務が課せられないということになって、それはどっちが先かわからないわけですね。だって、標準規格をつくらなければ発行させることができないですし、標準規格がまだ決まっていないから、実証データが少ないから決まらないということであれば、行ったり来たりの繰り返しです。
本当に早く、少なくとも試行的に、さっき大臣がおっしゃった二種類でもいいです、とりあえずそれを決めてみて、またうまくいかなければ来年やり直す。やはり実際にやってみていただきたい、実際に教科書を手に渡してあげていただきたい、一刻も早く渡してあげていただきたいというふうに思いますので、ぜひ今後ともの御尽力をいただきたいと思っています。
予算的な裏づけについても一つ確認をしたいと思うんですが、特別支援学校の場合は就学奨励費により教科書も無償提供されております。私が先ほど申し上げた質問主意書に対する答弁書によると、二十一年度の就学奨励費の総予算額が七十一億七百万ということでしたが、これは二十年度と比べ幾ら増額されたんでしょうか。つまり、せっかく教科書バリアフリー法ができて教科書が給与されることになったにもかかわらず、こうした予算をきちんと計上されていたのかどうか、ちょっと心配ですので教えていただきたいと思います。
平成二十一年度における特別支援教育就学奨励費の予算総額は七十一億七百万円でございまして、二十年度に比べて二億五千七百万円の増額となっております。
この特別支援教育就学奨励費の補助対象には教科用図書購入費がございまして、その中には拡大教科書の購入費も含まれているところでございます。この拡大教科書の購入費に係る予算額を区分計上はいたしておりませんが、先ほど申しましたように、この教科用図書購入費の中に拡大教科書の購入費が含まれているということでございます。
特別支援学校高等部において使用される教科用拡大図書給与に係る予算は区分して計上していないということでしたけれども、結果として高等学校の方は拡大教科書が行き渡っていませんので、結局申請されていないということになります。
規格ができていないから出せなかったという、本当にどっちが先かわかりませんけれども、予算の枠は少しふえていらっしゃるので、実際にそういう要望があればきちんと本当は対応できたということで多分理解をしていいんだろうと思いますので、これからも現場で使用できるように御尽力をいただきたい。そして、要求があれば即対応できるような予算の方も検討をお願いしたいというふうに思います。
特別支援学校でさえ拡大教科書が十分行き渡っていないという現状は、やはり憲法や教育基本法、先般できた教科書バリアフリー法自体にも抵触しかねないと私は思います。特に弱視生徒の皆さんの期待を裏切ってはならないと思います。関係団体の皆さんもこの法律ができたことを大変喜んでおられて、期待をしておられる。
そして、私自身も、どう考えても、日本の印刷技術は世界でもトップレベルだと思いますし、書店に行くといろいろな週刊誌や月刊誌はどんどん速いペースで並んでおりますのに、なぜ子供にとって最も必要な教科書というものが、高等学校レベルでもすぐこういうふうに提供できないのか、不思議でなりません。印刷に時間がかかるわけでもないだろうと思いますし。
特別支援学校、いわゆる盲学校の先生方には、どのようなレイアウトをすれば子供たちに見やすいか、いろいろな知識も経験もございます。専門的な知識があります。それを一冊でもまず印刷、製本して取り組んでいく。オンデマンド印刷という技術もございますし、日本にはいろいろな技術があると私は思いますので、こうした方々が連帯すれば拡大教科書を安定的に供給することができる日も近いと思いますので、ぜひ大臣、よろしくお願いしたいと思います。
最後に一言、積極的な御答弁をお願いします。
先ほども御答弁申し上げましたが、高校の拡大教科書については、いろいろな状況によって今準備を進めているところでございますが、とにかく早く、まずは試行的な教科書で、皆さん方にそれを使っていただいて、しっかりとした標準規格を設けて、それに伴ってその普及、作成にしっかり努めてまいりたいと思っております。
ありがとうございます。大臣の指導力に御期待を申し上げたいと思います。