日本弱視者ネットワーク ロゴ画像

日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

2016年4月1日 文部科学大臣 馳浩様 弱視者問題研究会 代表 並木 正

要望書

日頃より弱視児童・生徒の学習環境の充実につきまして、ご理解とご尽力を賜り、深く感謝申し上げます。

既にご案内の通り、本日より「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されました。つきましては見え方が一人ひとり異なる弱視児童・生徒に対する合理的な配慮として以下の2点について特段のご配慮を賜りますようお願い申し上げます。

1.視覚に障害のある高校生のために、その使用文字に合わせ拡大版と点字版を作成し、配布すること。

弱視児の学習に必要不可欠な拡大教科書ですが、義務教育段階は全ての教科で発行されているにも関わらず、高校段階となると視覚障害教育の専門機関である盲学校でさえ文部科学省が定めた標準的な規格通りには発行されておりません。盲学校は北海道から沖縄まで教科書採択を統一しているため、四十数種類の拡大教科書が発行されれば多くの弱視生徒の学習環境が整うことになります。現状はボランティア団体の協力もあり、比較的軽度の弱視生徒が使う単純に拡大された拡大教科書はすべて発行されていますが、中・重度の弱視生徒が希望する18,22,26Pの拡大教科書はあまり発行されておりません。この状況は、障害者への合理的な配慮を義務付けた障害者差別解消法のみならず、教育の機会均等や法の下の平等を定めた日本国憲法、拡大教科書の発行を求めた教科書バリアフリー法にも抵触しかねません。盲学校高等部の採択教科書につきましても義務教育段階と同様に標準規格通りの拡大教科書が発行されますよう教科書出版社へのご指導をお願い致します。

2.高等学校における拡大教科書・点字教科書と検定教科書の価格差補償

障害のある児童・生徒が特別支援学校に就学している場合、小学部から高等部まで就学奨励費制度が適用になっていますので、高等部においても拡大教科書や点字教科書は無償で給与されています。また、平成25年度からは障害児が地域の小・中学校の通常の学級に在籍していても就学奨励費制度が適用されることになりました。これは国連障害者権利条約も推奨しているインクルーシブ教育の流れを受けたものだと思われますが、ここでなぜ高等学校が対象にならなかったのか、理解に苦しみます。全国には多くの視覚障害生徒が高等学校に在籍していますが、就学奨励費が適用されていないため、一部の自治体を除き、通常の検定教科書の数十倍に及ぶ拡大教科書や点字教科書を自己負担しなければならない状況が続いています。既に国会の衆参の委員会では2006年に付帯決議として「就学奨励費等、障害のある子どもへの支援措置に関しては、高等学校の拡大教科書の自己負担軽減など、必要な具体的支援を把握しつつ、総合的な検討を進めること。」という項目が決議されていますが、それから10年経っても状況は変わっておりません。この状態は、障害者差別解消法が禁ずる不当な差別的取扱いとも言えますので、早期に就学奨励費などの公費で検定教科書との価格差を補償するなどの措置を講じていただけますようお願い致します。

弱視者問題研究会 代表 並木 正 <連絡先省略>