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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

衆議院 文部科学委員会 平成15年6月11日(水)

肥田委員

民主党の肥田美代子でございます。

著作権法の一部を改正する法律案につきまして、特に拡大教科書に関する部分を中心にお尋ねするとともに、この法改正に至った弱視の子供たちへの対策の充実について質問させていただきたいと思います。

今回の法改正は、弱視の子供たちにとっては遅きに失した、そういうふうな感想は持ちますけれども、しかし、この問題が提起されましてから法案が国会に提出されるまでの時間としては、率直に言いまして異例の速さでございます。政府におかれまして迅速な対応をしてくださったことに、私は敬意を表したいと思います。

さて、これまで弱視の子供たちのいわゆる拡大教科書をつくるのは、全国各地のボランティアの方々の努力に負うところが大でございました。今後、本改正案をよりどころにいたしましてボランティアの皆さんは作業を進めてまいりますけれども、今の段階で、実務的なことを二、三確認させていただきたいと思います。

まず第一でございますけれども、拡大教科書と呼ばれているものの中には、教科書一冊丸ごとコピーして本の体裁にしたものだけでなく、何冊かの分冊を順次作成していくものもあり、また場合によっては、一部の見えにくいページだけを拡大する場合もございます。これらのすべてについて、三十三条の二の規定が適用されるかどうか。

それから二つ目には、第二項に通知義務と補償金支払い義務の二つのことが規定されております。この両者の関係はどのようなことになるのか。

それから三つ目でございますが、この補償金支払い義務についてですが、これは営利目的の場合のみに課せられるというわけでございますけれども、拡大教科書を作成しているボランティアの方々の中には、紙代とかコピー代などの実費を受けられる方も当然いらっしゃいます。このような実費の受け取りは営利目的に当たらず、ボランティアの方々は補償金を支払う必要がないと私は思っておりますけれども、以上三点についてお願い申し上げます。

銭谷政府参考人

三点お尋ねがございました。

まず第一点目の拡大複製ができる範囲についてでございますけれども、著作権法の第三十三条の二第一項では、教科用図書に掲載された著作物すべてについて拡大して複製することができると規定をしております。したがいまして、まず、拡大複製できる範囲については、既存の教科書の全部についてでも、その一部についてでも適用されるものであるということでございます。

それから、二つ目のお尋ねの通知義務と補償金支払い義務についてでございますけれども、ただいま申し上げましたように、第一項におきましては、既存の教科書の全部についても一部についても拡大して複製できる旨を定めておりますけれども、第二項においては、既存の教科書の全部または相当部分を拡大複製する場合について定めておりまして、これを教科用拡大図書と呼ぶこととしております。

具体的な第二項の規定内容としては、そのような教科用拡大図書を作成する場合につきまして、通知義務と補償金支払い義務を課す旨を定めているわけでございますけれども、通知義務と支払い義務は対象となる者の範囲が異なっているということでございます。

ちょっと長くなって恐縮でございますが、通知義務については、営利、非営利を問わず、教科用拡大図書を作成するすべての者に対して、もととなる教科書の発行者への通知を義務づけております。ただ、これは、例えばはがきや電話で教科用拡大図書を作成するということを伝えればよいというふうに考えております。

一方、補償金の支払い義務でございますけれども、これは、こうした教科用拡大図書を営利目的で作成する者に対してのみ課されるというものでございます。

最後に、三点目の、営利目的の意味についてのお尋ねがございましたけれども、営利とは、一般に、収益を上げた上でこれを構成員などに分配することを意味いたしておりまして、ボランティアの方々が実費の範囲内で費用を徴収するようなことは営利目的には該当しない。したがって、先生お尋ねの件について申し上げれば、この場合は、補償金を著作権者に支払う必要はないということでございます。

肥田委員

次に、大臣にお尋ねしたいと思います。

今回の法改正の趣旨を生かしまして、文部科学省では弱視の子供たちのための教育をどのように充実していくか、それを伺いたいと思います。

この問題は、実は、大きく二つに分けられます。第一は、弱視の子供たちへの教育環境をどう整備していくか、その対策が必要ですね。もう一つは、やはりその一部としての拡大教科書の問題があるというわけです。この両者を混同してはいけないと思うんですね。

これまで弱視の子供たちは大変理不尽な扱いを受けてきたと私は思っております。ですから、私たちはこれから障害ということについて根本的に発想の転換をしなければいけない時期に来ていると思うんです。私たちは、ややもすると、心身の障害をその人の欠陥と見て、特別の場所で特別の処遇によって治そう、そういう考えに陥りがちでございます。しかし、今日の国際社会におきましては、そして国内においてもそうですが、障害は治療の対象ではなく、その人の個性である、そういう考え方が普通でございます。そして、その個性を尊重して、配慮されるべき個として、その個に合った指導を行うという流れになってきたと私は思っております。

大臣は、障害児の心身のハンディを欠陥とごらんになりますか、それとも個性として尊重されますか。また、文科省は、個の尊重あるいは個を重視した指導とおっしゃっていらっしゃいますが、その指導上配慮されるべき個の中には弱視の子供たちも含まれておりますか。

遠山国務大臣

障害のある児童生徒につきましては、障害の種類あるいは程度に応じて、その可能性を最大限に伸ばして、児童生徒が将来自立し、社会参加するために必要な力を培うということは大変大事だと思っておりまして、さまざまな指導形態で教育を行っているところでございます。

ことし三月に、今後の特別支援教育の在り方についての最終報告が出ましたけれども、その中でも、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行うことが提言されておりまして、私は、弱視の児童生徒につきましても、引き続き、個々の教育的ニーズあるいは必要性に応じた適切な支援に努める必要があると思っております。

障害者のハンディは欠陥か個性かということでございますが、日本語はなかなか難しいわけでございますけれども、私は、欠陥というふうなとらえ方はどうかなと思いますね。それから、個性というのかどうかよくわかりませんけれども、少なくとも、その子の持っている資質の特性といいますか、そういうものであるように思うわけでございます。

いずれにしましても、どのような障害のある児童生徒であっても、一人一人、その教育的ニーズに応じた適切な教育に努めるということは非常に大事だというふうに考えております。

肥田委員

大臣の御答弁に関連いたしまして、弱視のような障害を持つ子供たちの学ぶ場所、学ぶ場について伺いたいと思います。

少しきつい言葉になりますけれども、これまで障害児教育をめぐる文科省や教育委員会の対応は、親の意見を十分聞こうとせずに、盲学校や養護学校に振り分けることを障害に配慮した指導と呼んできたと思っております。障害児の就学をめぐり、親と教育機関との間で対立とかトラブルが起きている、これがその証左だと私は思うわけでございます。しかし、今日では、障害はその人の心身の欠陥ではなく個性として認識され、私たちの発想もやはり大きな転換を求められておると思います。

そういう時代の趨勢を踏まえましたときに、私は、弱視の子供たちにも、普通学級を選択できる、選択の自由が与えられるべきだと考えてまいりました。そのことを前提といたしまして初等中等教育局は今回の法改正を文化庁に要望されたと私は理解しておりますけれども、私の理解で正しいですか。

矢野政府参考人

委員のお尋ねの、まず、普通学級を選択できる自由ということについてでございますが、私どもといたしましては、障害を持っている児童生徒につきましては、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な支援を行うことが重要であると考えておりまして、このために、弱視の児童生徒につきましても、それぞれの市町村、またそれぞれの学校におきまして、障害の種類、程度等に応じた適切な教育の内容及び方法、また教育を行う場を、専門家の意見や保護者の意見を聞いて、児童生徒にとって最もふさわしい教育を行う、そういう観点に立ちまして、そういう視点に立って適切に判断することが重要であるというふうに考えているわけでございます。

なお、このことにつきましては、平成十四年、昨年の九月には、社会のノーマライゼーションの進展あるいは教育の地方分権、そういう考え方を踏まえまして、学校教育法施行令を改正いたしまして、盲学校等に就学すべき、そういう障害の基準に該当する子供でありましても、市町村教育委員会が、その障害の状態に照らして、小中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情がある、そういうふうに判断いたしますときには、小中学校に就学させることを可能とする、そういう就学手続の弾力化を図ったところであるわけでございます。

文部科学省といたしましては、今後とも、障害のある児童生徒のニーズに応じた教育を行うための制度あるいは施策の改善充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。

肥田委員

次に副大臣にお尋ねしたいと思います。

文科省の答弁の中には、これまで弱視の子供たちについては、見え方が多様である、そういう御答弁が続いてまいりました。盲学校で学ぶことがよいのかあるいは普通学級で学ぶのがよいのかということは、一概には言えないと思います。そうだとすれば、個を重視し、また、その個をどのように伸ばすかという親の考え方も尊重する必要があると私は思うんですね。ですから、盲学校で学ばせるか普通学級で学ばせるかということは、親の意向を最大限尊重すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

河村副大臣

委員御指摘の点でございますが、やはり保護者といいますか親が、一番自分の子供のことをわかっていると思いますので、親の意見を十分聞くということは非常に大事なことですが、一方、その専門的な所見というのもあると思うんですね。教育学、医学、心理学、そういった専門家もおられますから、保護者は、やはりそういう方ともしっかり話し合って、我が子のためにどの選択が最良であろうかということを十分考えた上で、最終的に親が決断される、できるだけそれを尊重する、そういうことが私は大事だろうと思います。

やはり、そこに立つ、いわゆる教育を施さなきゃいかぬ側も一緒になってその子供を中心に考えていく、総合的に考えていくということが大事だろうと思いますが、一義的には、やはり親の御意見というのは非常に尊重しなきゃいかぬ、このように思います。

肥田委員

次も副大臣にお尋ねしたいんです。

ここで、普通学級の授業風景を思い浮かべていただきたいと思うんですね。同じ四十五分間の授業の中で、弱視の子と普通に見える子がいるわけですが、お隣の子はぱらぱらと教科書をめくって読んでおりますけれども、弱視の子はルーペを使って時間をかけて必死に読んでいるわけですね。これでは平等な教育とは言えないと思うんです。

文科省は従来から、お考えの中に、社会に出てからルーペで新聞を読むのだから、学校でもルーペで教科書を読むように訓練しておいた方がいいというふうにおっしゃるんです。

ところが、私はこの考え方は完全に間違っていると思います。社会に出てからでしたら、新聞を読むのに十分時間をかけてもいいわけですね。ところが、教室の中で、限られた四十五分という授業の中で読みこなさなければいけないということは、弱視の子供たちにとっては大変な苦痛、苦労なんですね。

つまり、普通学級で学ぶ弱視の子供たちは、国語や算数などの教科書、教科等についてほかの子供たちと平等に学ぶべき、この環境整備をしなければいけないことと、もう一つは、社会に出てから困らないような弱視者向けの学習や訓練を、例えばルーペなんかで訓練する、この二つが必要なんですね。それが私は個の尊重ということだと思うんですけれども、これまでの文科省の考え方はこの二つを混同していらっしゃったと思います。この二つは全く別のことです。そしてまた、別に実施しなければいけないことだと思います。

それで、普通学級の中に弱視の子供たちがいるという前提で、先ほど申し上げた弱視の子供たちのみを対象とした訓練、そういうものをぜひ位置づけなければいけないと思うんですが、さらに申し上げれば、普通学級で他の子供たちと平等に学べることと弱視者向けの学習や訓練、そのバランスも必要だと思いますけれども、副大臣はこのことについてどう考えられますか。

河村副大臣

肥田委員おっしゃるように、社会に出てからのために今から準備していくということもあろうと思いますけれども、現実に、同じ教室で学ぶ場合には今委員御指摘のような問題があるわけでありますから、今回、拡大教科書等々についても、そういう環境整備をしなきゃいかぬということで、特に理科それから社会ですか、これはまだ十分ではなかったということでございますので、その点もきちっとやろうということで、拡大教科書をしっかり活用していただく、それによって学ぶ環境を少しでもよくしてあげよう、その障害者に合った教育をしようということになっておるわけでございます。

一方では、やはり自立活動ということも必要でございまして、そのことは、これから社会に出てからのことも考えていかなきゃいかぬということですから、そのバランスということを今御指摘されましたけれども、そういう意味では、視覚補助具、ルーペ等もございますが、そういうものもうまく使いこなす、ちゃんとそれを育て上げる指導もしなきゃいかぬということで、両方相まってやっていくことによってまさに弱視の児童生徒一人一人の個性、障害の状況に応じた指導ができる、またその指導体制をきちっとつくっていくということが非常に大事だ、こう考えております。

ことし三月の、今後の特別支援教育の在り方についての最終報告、これも、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒を含めて、特別支援教育を進めることについていろいろそういう面の提言がされておりますので、これも十分踏まえた形で、まさに両方のバランスをとりながら、そして弱視の障害を持っているお子さんにとって、将来も考えながら一番ベストな方法をとっていくというのが教育のあり方だ、このように考えております。

肥田委員

今回の著作権法改正は、初中局から文化庁への要望、それが契機となっております。すなわち、何度も申し上げますけれども、弱視の子供たちが普通教室にいるということが前提である。そうだとするならば、弱視の子供たちが普通学級で学ぶために、弱視という個に応じた指導法とか教材とか、そういうものが開発普及され、そのための教員研修なども私は必要だと思うんですけれども、具体的にどのような状況を目指して、どのような施策を実施されていこうと思っていらっしゃるか。

文科省はいつも弱視の子供たちは見え方が多様ですからとおっしゃる。しかし、見え方が多様だから何にもしないということでは許されないと思います。すべての子供たちの学ぶ権利を保障するために、極めて多様な、そしてきめの細かい対応が必要だと思いますけれども、普通学級で学ぶ弱視の子供たちへどういう総合的な施策をされるか、もう一度副大臣、お願いいたします。

河村副大臣

改めて御答弁申し上げたいと思います。

委員御指摘のように、弱視の児童生徒、教科書を学習するとともに、その保有する視覚、視力を持っておるわけでございますから、これを活用して、そして器具も使いこなしながら上手な見方を育てるといいますか、表現があれでございますが、そういうやり方で、その子が持っている、残存するといいますか保有する可能性を伸ばしていく。やはりこれは、努力することによって、また周辺が支援をすることによって伸びるものだ、こう考えていかなきゃいかぬと思います。

あわせて、それによって自立して社会参加ができる、それがまさに教育力であろう、こう思っておりますから、そういう視点でやっていかなきゃならぬわけでございまして、盲学校等の自立活動におきましては、個別の指導計画というものが作成をされ、そしてその指導を図るということで、拡大教科書も一緒に使って適切に円滑にやるモデル教育といいますか、そうした作成をやりながら、それをもとにして全国的に今広めておるようなわけでございます。

先ほどちょっと触れましたように、今回の拡大教科書の中では、これまで不十分であった理科、社会にきちっと対応するということでございますし、また、盲学校とボランティアとの相互連携、これを十分連携をとりながら、弱視の児童生徒のための教育の充実に資する、そうしたネットワークもつくっていくということでございます。

その中には当然いわゆる教員の研修ということも入ってくるわけでございまして、このたびの先ほど申し上げました特別支援教育の報告を踏まえて、さらに充実した教員研修を行いながら、弱視という一つの障害を持った児童生徒が社会に入っていって、できるだけ社会と一緒になって頑張れる、そうした教育を児童生徒の間にきちっとやる、そういうことで進めていかなきゃならぬ、こう考えておるところでございます。

肥田委員

多分、今副大臣がおっしゃったことは、盲学校、それから特殊学級の場合だと思います。普通学級にいる弱視の子供たちには教科書は全く用意されていないんです。

それでは、総合的対策の一部であります拡大教科書、この問題に特化して質問いたします。

私は、拡大教科書問題がなぜ今までこれほど先送りされてきたかということをみずからの反省も含めて考えてまいりました。それはまさに、文科省に、拡大教科書はすぐれて教科書問題であるという明確な問題意識が欠けていたと思います。

例えば、事の重大さに気がついて、私たちが弱視者やボランティアの方々と拡大教科書フォーラムを開きました。その問題解決に向かって取り組みをし、お役所の皆さんが来てくださいましたが、そういう場所にいらっしゃるのは文科省の特別支援教育課長でありまして、教科書課からは課長補佐が出席されております。肩書が物を言う役所ですから、私たちは、今回の著作権法の改正は、やはり教科書の問題としてきちっと位置づけてもらわないと困るなというわけでございます。ですから、そのことにつきましてぜひ御認識を改めていただきたい。

文科省は、弱視全体の問題ですからということで、私は、意図的に大きなところに教科書問題を埋没させてしまっていらっしゃるような気がしてならなかったんですね。ですから、全体として検討中ですというお答えがいつも来るわけでございますけれども、やはりこれが先送りの原因だったと思っております。

これらの経過は、子供たちの幸せ、それから制度の維持、このどちらを大切にするかという、私は行政のあり方が問われていると思います。恐らく初中局にも理屈はあると思いますけれども、しかしその理屈は、私たち、それから弱視の子供たち、親御さんたちには通じないと思います。ですから、わずか千人です、恐らく千人ぐらいが普通学級に入っている弱視の子供ですけれども、その子供たちさえ救えない人々が、一千五百万人の子供たちの将来を託されて本当にいいのかどうかということを感じる人も少なくないというふうに私は思っております。

そこで、大臣にお尋ねしたいと思います。弱視の子供たちへの対策全体ではなく、拡大教科書問題に絞って伺いたいと思いますが、昨年末議論されてきたこの問題につきまして、あるいは全体について検討中ということを繰り返してきたこれまでの初中局の対応につきまして、今どのようにお感じでいらっしゃるでしょうか。制度の内容とか検討状況についてお尋ねするのではなく、大臣の率直なお気持ちをお伺いしたいと思います。

遠山国務大臣

弱視の児童生徒につきましては、これまで、教科などの学習と同時に、その持っている視力というものを活用して上手な見方を育てる、それが将来自立して社会参加するのに大事だということでやってまいったと思います。

いわゆる拡大教科書につきましては、弱視の児童生徒が教科の内容を理解するのに有効であるということから、文部科学省としては、その作成が適切かつ円滑に行われることが大事だというふうに考えてはいるわけでございます。

このために、小中学校国語、算数、数学、理科、社会の拡大教科書モデルの作成などの取り組みも行ってまいりました。それから、今回、著作権法改正ということで、著作権の手続が簡略化されるわけでございまして、拡大教科書を作成する上で非常に大きな負担であったものが軽減されるということで、その作成が一層適切に行われるようになると思います。

文部科学省としては、こうした初中局の取り組みにおいてさまざまな施策を推進してきたところでございますけれども、一定の努力を重ねてきている。今回、それを大きく踏み出して、拡大教科書をさらにつくりやすくしていくということにおいて大きな決断をして、今後そういう面の充実を図っていこうという姿勢であるわけでございます。

肥田委員

大臣のお考えはよくわかりました。

それで、今まさにそばにある問題として考えていただきたいんですが、そうだとするならば、法改正の趣旨を最大限に生かすとすれば、私は、費用負担がぜひ大切な問題として話し合われなければいけないと思うんです。

今教科書は、普通の子供たちはただなんですね。弱視の子供たちは一万円単位のお金を払っているわけですが、この負担というのは保護者にとって大変なんですね。ですから、これを本当に軽減する方向へ持っていかれるおつもりなのか。

いろいろ方法はあると思うんですよ。文部省自身が教科書をつくってくださってもいいし、それから教育委員会が教科書をつくってくださってもいい。いわゆる教科書無償の制度でも私はいいと思います。また、ボランティアへの補助でもいい。御父兄への援助でもいい。学校への支援でもいいんですが、少なくとも、この改正案で経済的な支援をきちっと約束していただかないと、私は、今まで役所の方々からいろいろな答弁をいただきました。ところが、先に希望が見える答弁が出ないんですよ。

ですから、今回ぜひ大臣にお願いしたいのは、関係者の方々に希望を与えられるような、そういう御答弁をいただきたい。ぜひ具体的に、経済的な援助も含めてお願いしたいと思います。

遠山国務大臣

拡大教科書につきまして、著作権法上のこれまでの難しさがこれで解除されるわけでございますので、私どもとしましては、拡大教科書をぜひとも、できるだけ無償という形で、実質的に無償というふうになるように予算措置をしたいと思っております。

いろいろな、どこでつくるかとか、どんなふうにつくるかとか、研究が必要な面もございますけれども、できるだけ早い機会に、できれば来年の四月から子供たちが親御さんの負担を経ないで適切な拡大教科書が使えるように、来年の春から弱視の子供たちの笑顔が見られるように、何とかしたいと思っております。

もちろん、これから研究をして、予算要求をして、それを獲得してという大変な作業がございますけれども、私は、これは初中局と一緒になって、何とかその方向に向けて歩み出したいと思っております。(発言する者あり)

肥田委員

ありがとうございます。私たちもぜひ応援団にならせていただきたいと思います。

終わります。