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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

衆議院 予算委員会 第四分科会 平成21年2月19日(木)

高木(美)分科員

公明党の高木美智代でございます。

塩谷大臣に初めて質問をさせていただきます。

本日は、拡大教科書の推進と特別支援教育につきまして質問をさせていただきたいと思います。

まず、拡大教科書につきましてですが、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律、教科書バリアフリー法が昨年九月から施行されまして、施行令におきましては、平成二十一年度において使用される教科用特定図書等から適用するとされております。この拡大教科書普及に向けましての現在の取り組み状況、また推進状況をまずお伺いしたいと思います。

附則の第二条では、高等学校、特別支援学校に就学する児童及び生徒については、検討を行い、結果に基づいて所要の措置を講ずる等と、高校段階に対する取り組みにつきましても書いてございますが、その取り組み状況を伺わせていただきたいと思います。

金森政府参考人

視覚障害のある児童生徒のための拡大教科書の普及促進は、教育の機会均等の観点から重要でございまして、必要とする児童生徒に拡大教科書が速やかにかつ確実に給与されるよう措置することは喫緊の課題と考えております。

拡大教科書の普及充実につきまして、文部科学省におきましては、昨年四月に設置をいたしました拡大教科書普及推進会議におきまして、その具体的方策について関係者による検討を進めていただき、昨年十二月、主に義務教育段階を対象とした第一次報告が取りまとめられたところでございます。

現在、文部科学省におきましては、この報告に基づきまして、教科書発行者による自社版の拡大教科書の発行を促進するため、拡大教科書の標準規格を策定、公表いたしますとともに、拡大教科書の作成作業に資するよう、ボランティア団体等に対する教科書デジタルデータの提供を開始するなど、必要な取り組みを進めているところでございます。

また、高校段階における拡大教科書の使用状況につきましては、教科書発行者や民間事業者から発行された拡大教科書はいまだございませんで、現在利用されているものはすべてボランティア団体の作成によるものでございます。全国盲学校長会が昨年十一月に実施した調査によりますと、高等部本科普通科に在籍する弱視生徒三百三十七名に対しまして、ボランティア等が作成した拡大教科書を使用している生徒は二十一名、約六%でございました。

この高校段階における拡大教科書の普及のあり方につきましては、先ほど申しました拡大教科書普及推進会議の中に高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキンググループを設置いたしまして、現在精力的に審議を行っているところでございます。

高木(美)分科員

ありがとうございます。

実は、高校の拡大教科書につきましての陳情を受けました。高校の第一段階といたしまして、盲学校高等部につきまして早急の実施をお願いしたいという要望でございます。高等部、三百数十名でしょうか、対象は二百数十名と詳しい数字は把握できておりませんが、いずれにしても、高校段階の全検定教科書数になりますと九百八十三点あるわけでございますが、盲学校は全国で四十六点に統一をしているという話も承知しております。できないことはないのではないかと考えております。やはり、高校時代の一年間といいますのは、人生を決める大事な時代でございます。そういう観点からお願いをするものでございます。

これはもう既に大臣御承知かと思いますが、ある高校二年生の「拡大教科書について」という文章でございます。この高校生の方は、普通小学校に通っていらっしゃって、学年が上がるにつれて教科書の文字がどんどん小さくなっていく、これでは中学生になったとき周りのみんなに勉強はついていけるのだろうかと不安に思い、盲学校への入学を決意しました。

中学生になり、私は感動と驚きに包まれました。太く大きい文字、シンプルでわかりやすい図、見るもの見るものが、ルーペや眼鏡を使うことなく、楽に、そしてはっきりと見えました。これなら私でも思う存分勉強できる、今までのように目が疲れることはない、私はうれしい気持ちでいっぱいでした。私も健常者と同じ条件で教科書を見ることができるようになったからです。しかも、拡大教科書は補助具なしで読むことができます。見ることではなく、勉強内容に集中することができるようになりました。

そして、その方が昨年の四月、高校生になるのですが、高校では拡大教科書が配付されませんでした。教科書を開いてみると、小さい、細かい、見にくい文字が連なっているだけでした。何だか小学生のころに逆戻りしたような気分です。私にとっては深刻な問題でした。想像してみてください、あなたが読んでいる文字がいきなり細く、小さく、肉眼で見ることが不可能な世界になったらと。全盲でも、完全に見えるわけでもない、弱視という立場。これから私たち弱視はどのように学べばよいのでしょうか。もう一度拡大教科書を読むことができる日を私は切に願っています、こういう高校生の方からの文章でございます。

まず、こうした盲学校の生徒に対しまして配慮をお願いしたいと思いますが、大臣のお考えを伺わせていただきます。

塩谷国務大臣

ただいまの生徒さんの文章、本当にその実態といいますか、障害者の方の率直な御意見をいただいたわけでございます。

先ほどもお答えしましたが、文部科学省においては、高校段階における拡大教科書のあり方を検討するために、平成二十年の四月に、拡大教科書普及推進会議の中で、高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキングチームを設置して検討しているところでございます。

現在のところ、正直言って、まだ全く対応はできていないというのが現状でございまして、これにつきましては、ワーキングチームの精力的な審議を踏まえて、今後、拡大教科書の普及に向けて必要な措置を講じてまいりたいと考えております。

高木(美)分科員

恐らく、いわゆる本科、普通高校の使用実績というのは、先ほどありました二十八名ということでしょうか。少ない人数かと思いますけれども、盲学校高等部には取り組みの実績がこれまであるわけでございます。それをむしろ活用しながら、私は、実証的研究、こういう意味からも、ここで一歩大きく踏み出していただきたいと願うものでございます。その際、当然高校生の意見が反映されるということが一番大事でございますので、それぞれ読みやすいポイント数もございますけれども、まずこの盲学校から、実証的研究という意味も含めまして、お取り組みを重ねてお願い申し上げるものでございます。

また、あわせまして、法第七条また施行令についての通知にも詳細にありましたが、発達障害、またその他の障害のある児童及び生徒につきましても、拡大教科書のあり方や効果的な指導方法等について実証的研究を行う、こういうことが記載されておりました。発達障害の親の方たちからもこういうお話を多く伺うわけで、そこで法律にも盛り込まれ、施行令、通知等にも盛り込まれたと承知しておりますが、確かに、読み飛ばしが少なくなるとか、また、図がわかりやすいとかという声は既にいただいているところでございます。

こうした発達障害に対しましても、今後どのように進めるおつもりか、大臣のお考えを伺いたいと思います。

塩谷国務大臣

ただいまの発達障害の生徒さんにつきましては、今おっしゃったような学校教育法の改正においても、特別支援教育を行うことが明記されたわけでございまして、先ほども申し上げましたが、現在、必ずしも十分と言えない状況でありますが、支援体制の整備を進めてまいりたいと思っております。

特に、教員研修の充実や個別の教育支援計画等を作成して、各学校の特別支援教育体制の整備を図ることが重要だと考えておりまして、これらの取り組みを推進するための事業を実施しているところでございます。

以上でございます。

高木(美)分科員

大臣、大変何度も恐縮でございますが、この教科書バリアフリー法、平成二十一年度からということで、この盲学校の生徒さんたちも大変楽しみにしていらっしゃる。モデルケースという形等を含めまして、大臣の裁量で、ぜひここへの配慮をお願いできればと思っております。

ぜひ、平成二十一年という、これは一つ、教科書につきまして障害者に対するバリアフリーが実現するという意義もありますので、私は、きょうはこれは大臣に質疑通告はしていないのですが、一度盲学校等に視察にお越しいただきまして、そこで直接生徒さんからの要望、それは小学校でも中学でも高校でも構わないんですけれども、一番望ましいのは、大臣の配慮で高校への、高等部へのバリアフリーの教科書が実現できた、そこに大臣がお越しになるというような形が一番美しいのではないかと思っております。

やはり今、障害者に対する意識の変革を国を挙げてどう行っていくか、ここが大事なポイントでございまして、大変誠実に、また、まさにまじめに取り組んでいらっしゃる大臣でいらっしゃいますので、ぜひとも、そういった点も今後御検討いただければと思っております。これはまた御検討ということでお願いできればと思います。