本は私たちの文化的な生活を支え心を豊かにしてくれるだけでなく、過去からの英知を受け継ぎ、未来へと引き継ぐべき崇高な知的財産と言えます。しかし、日本には私たち弱視者をはじめ通常の活字図書をそのままでは読むことができない視覚障害者、高齢者、学習障害者、上肢障害者などの読書障害者が数百万人いると言われています。障害のない人が本屋で本を買ったり、図書館で本を借りたりするのと同じように、私たち読書障害者にも読める媒体で本を買ったり、借りたりできるようにする、それが読書のバリアフリーです。理想的にはすべての本が拡大文字や点字、音声といった媒体に変換されることですが、その試金石となるのが電子データです。電子データが加工しやすく、かつ障害者や高齢者がアクセスできる状態になっていれば、図書館やボランティアがそれぞれのニーズに合わせて読みやすい媒体に変換するのはそれほど大きな負担にはなりません。しかし、原稿の著作権法では図書館や老人ホームなどでは著作権者の許諾を得なくても本を電子データ化すたり、拡大文字に変換したり、音訳することは許されていますが、地域の拡大写本ボランティアや音訳ボランティアの場合、著作権許諾という問題が大きな足かせになっています。
我が国も批准した国連障害者権利条約には「障害者が他の者と平等に文化的な生活に参加する権利を認めるものとし、利用可能な様式を通じて、文化的な作品を享受するためのすべての適当な措置をとる」と定められています。私たち弱視者問題研究会はこのような読書のバリアフリー化を目指し、他の視覚障害者団体とも連携し、「読書バリアフリー法(仮称)」の制定を求める活動を続けています。
2013年6月、国連の専門機関である世界知的所有権機関において「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約(仮称)」が採択されました。私たちは、日本盲人会連合、DPI日本会議とともに、マラケシュ条約批准と著作権法改正、そして読書バリアフリー法の制定を求めています。