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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

生活向上委員会【白杖編その4】

編集局

弱問研の定例会などで度々話題になる白杖についてシリーズで取り上げてみたいと思います。

事例4:
20代女性。視力は右0.02、左0。視野狭窄は自覚していないが、片目なのでやはり見える範囲は狭いと感じる。暗い所は苦手。

Q:白杖を使っていますか?
A:移動時には日常的に使っていますが、職場内や慣れた場所では動き辛いので持ちません。電車やバスでも席を譲られると気まずいので(苦笑)乗ったらすぐにたたむようにしています。
Q:いつ頃からどんなきっかけで使うようになりましたか?
A:大学進学を機に田舎から上京して、行動範囲が格段に広くなり、夜道を歩く機会も増えました。その当時は0.08程度の視力がありましたが、日常的に人にぶつかっていましたし(都会の人の多さにビックリ!)店員さん等にモノを尋ねても「これ」「それ」「あそこ」等で返されて、ストレス満載の日々でした。周囲に自分の見え方を上手く説明できずに、外出が億劫に感じることさえありました。
そんな時に弱問研と出会い、弱視でも(全盲でなくても)杖を持って良いのだと知りました。
最初は、人混みや慣れない場所、量販店等助けを必要とする場所、夜道等で一時的に持っていましたが、視力が落ちてきた今は、日常的に使うようになっています。
また、東日本大震災以降、節電の影響で街が暗く歩きづらくなったこともきっかけです。災害に遭った時、杖を持っていた方が何かと心強いかと思い、持つようにしています。
Q:特別な訓練は受けましたか?
A:特別な訓練は受けていません。今はシンボルとして持っているだけですが、歩行用としてガッツリお世話になる時が来たら、きちんと訓練を受けたいと考えています。
Q:白杖はどこで、どんな種類を購入しましたか?
A:日本点字図書館で購入しました。7段折のシンボルケーンです。軽くてコンパクトなので鞄にも仕舞えますし、必要な時だけ持ちたい弱視さんにはおススメです!
Q:白杖を使っていて良い点、逆に困ることはありますか?
A:まだまだ完全な周知には至っていませんが、それでも杖を持っていれば「目が悪い」ことは一目瞭然に相手に伝わります。人混みではよけてもらえますし、ぶつかってもそこまで嫌な顔はされません(逆に謝られます。苦笑)。お店や駅等で、何かを尋ねたり頼んだりしても、快く対応してもらえることが多いです。見えにくいことで感じていた多くのストレスが、杖を持つことで緩和されたと感じています。
一方で、個人的に経験はないのですが、特に女性の場合、杖を持って1人でタクシーに乗ったり、夜道を歩いたりしていると、犯罪に巻き込まれることがあるようです。私も、見ず知らずの男性から誘導等の声掛けをされた場合、申し訳ないと思いつつ辞退するようにしています。そういう意味では注意が必要かもしれません。
Q:思わぬ声掛けや過剰な介助をされたことはありますか?
A:突然腕を掴まれて誘導されたことは何度かあります。街を歩いていると声を掛けてくださる方も多いですが、必要なければ丁重にお断りしますし、甘えたい時は多少過剰でも助けて貰います(笑)。
Q:その他、みなさんへのアドバイスなどがありましたらお願いします。
A:鈍感な私は、杖を持っていて人目が気になることはほとんどないのですが、そういった点で抵抗を感じる方もいらっしゃるかと思います。もちろん考え方は人それぞれですが、日常的に人や物にぶつかって歩いている方、どうか杖を持ってください。
見えにくい中で丸腰で歩くということは、歩きスマホ並みに危険な行為です。自分はぶつかってもいいと思われるかもしれませんが、相手が小さな子どもや高齢者の場合、自分が加害者になる可能性もあります。こちらが見えない・見えにくいことを示すことで、防げる事故はたくさんあります。自分の安全を守ることももちろんですが、周囲のためにも白杖を活用して頂けたらと思います。一度持ったら一生持ち続けなければならないというものでもないですし、気楽に手に取ってみてください♪