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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

生活向上委員会【白杖編その2】

編集局

弱問研の定例会などで度々話題になる白杖についてシリーズで取り上げてみたいと思います。

事例2:
30代女性。視力は両目とも0.1。視野は中心5度。眩しいのが苦手で、外出時は遮光眼鏡が手放せない。

Q:日常的に白杖を使っていますか?
A:日常的には使っていません。初めての場所に1人で行かなければならない場合は持つこともありますが、普段使わないので、いざという時どこにしまったかわからなくなったり、持って行っても出さなかったりで、結局使わないことが多いです。
Q:日常的に使わない理由はなんですか?
A:視力的に使った方がいい事はわかっています。便利なことも重々承知しています。でも「人に見られてる感」がどうも嫌なんですよね。私がすごい美人だから見てくれてるならいいんだけど、そうじゃないですからね(笑)。
優しく声をかけてもらい、白杖を持っていて助かったことも数え切れないほどあり、本当に感謝しています。交通機関で誘導をお願いする際も便利です。でも、どうしても目立つのが気になります。あちこちぶつけながらフラフラしてれば白杖を持っていなくても十分目立つのですが。
ウインドウショッピングしたくても店員さんに「何かお探しですか?」と聞かれると何も買わないのが気まずくなったり、「若いのに可哀想に」とささやかれたり、電車で背後から無言で肩を捕まれて席に誘導されたり、白杖を持っていて残念な気持ちになることもどうしてもあります。
とにかく一挙手一投足に注目されているような気がして、どうも嫌なんです。
Q:使わなかったことで歩行の危険を感じたことはありますか?
A:沢山あります。電柱やポールにぶつかったり、看板を蹴り飛ばしたり。歩行者や自転車にぶつかることも日常茶飯事です。白杖を持っていれば相手が謝ってくれますが、持っていないのでとにかく平謝りです。晴れの日は日傘、雨の日は雨傘を持ち歩いているので、それを杖代わりに使ったりもします。
Q:街中で人に聞きたいことがあった時や、サポートしてほしい時に困ったことはないですか?
A:ありますねぇ。目が悪いことに気づいてサポートしてくれる場合もありますが、うろうろしてみてもどうにもならない時は諦めて帰るしかないですね(笑)。役所など、サポート必須な場所へ行く際は白杖を持っていきます。
Q:その他、思ったことがあればお願いします。
A:日常的に白杖を持たなければ、と思って早10年が経ちます。今日から毎日持つぞ、と何度決意したことか。でも今も持っていません。
昔、弱問研の合宿で、全盲の女の子に相談したら、「私も嫌で、相当視力が下がるまで持てなかった。見えなくても無理して持たずに歩いてた。だから○○さんもきっと持たなきゃやれなくなるまで持てないと思うし、それでいいと思うよ。」と言ってくれました。私も今はそれでいいのかなと思っています。だって持つの嫌なんだもん(笑)。

●取材を終えて
ウインドウショッピングの話や、思わぬところへ無言で誘導されるなど、自分も経験したことが何度もあり、すごく共感しました。私の場合、見られているという感じは視力的にわかりませんが、言葉の反応などはすごく気になってしまいます。
みなさんはどう思われましたか?