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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

2014年2月17日 文部科学大臣 下村博文様 文化庁長官 青柳正規様 弱視者問題研究会 代表 並木 正

著作権法の一部改正を求める要望書

日頃より視覚に障害のある人の読書環境の改善にご理解とご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。

既にご案内の通り、我が国も批准した国連障害者権利条約の30条には「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとる。」と定められています。また、昨年6月には、モロッコで「視覚障害者等の発行された著作物へのアクセスを促進するためのマラケシュ条約」が採択されました。

このような情勢を踏まえ、視覚障害者が、更に多くの著作物にアクセスできるようになるよう下記の通り、著作権法の改正を要望いたします。

1 著作権法第37条3項にある「福祉に関する事業を行う者で政令で定めるもの」を「視覚障害者等のために情報を保障しようとするもの(営利を目的とする場合を除く。)」としてほしい。

【理由】
 現行の第三十七条第三項では、政令で定められたもの、つまり点字図書館や公共図書館、学校図書館、大学図書館、国会図書館、老人ホームなどは視覚障害者等のために、著作権者に許諾を得ずに、著作物を拡大文字や音声、電子媒体にすることが可能です。しかし、多くのボランティアグループや志ある個人は、図書館に関係しておりませんので、複数の視覚障害者等のために本を拡大したり、音訳したり、電子化する際に著作権者に許諾を得なければ作業に入れないということになります。これは一般書籍のみならず、子どもの学習に必要な副教材や参考書、問題集などにも当てはまります。グループであれば政令で定めてもらうような仕組みもありますが、そこにも複雑な条件と手続きがあり、現に申請が却下されているグループもあります。しかし、実際は1冊の本でも複数の著者が執筆している場合も多く、著作権者の連絡先を調べ、個々に許諾を得るというのは膨大な事務作業を要します。

一方、これまで我が国で発行された書籍は既に1000万タイトルを超え、毎年新たに約5万タイトルの書籍が発行されていると言われています。しかし、現在サピエ図書館が配信している点字図書は約15万タイトル、音訳図書は約5万タイトルです。つまり、私たち視覚障害者がアクセスできる本は、晴眼者が読める本に比べ、圧倒的に少ないのが現実です。マラケシュ条約が求めているように視覚障害者や読字障害者がより多くの著作物にアクセスできるようにするには、図書館への関与に関わらず、多くの志あるボランティアが、著作権許諾に悩まされることなく視覚障害者等のために拡大写本、音訳、電子化などに取り組めるような環境を整えることが必要であると考えます。マラケシュ条約でも多くの国の著作権法が制限や例外を設けているにも関わらず、バリアフリーな図書が不足しており、著作物をアクセシブルにするためには多くの資源が必要であることを指摘しています。

これからの高齢化社会も見据え、本という知的財産がだれにでも読書できるようご検討の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

弱視者問題研究会 代表 並木 正 担当 宇野和博 <<住所等省略>>