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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

参議院内閣委員会 2024年3月12日

○大島九州男君

大島九州男でございます。

本日は、両筆頭、委員長に、まずは、三十分という時間をいただき、少数会派にも御配慮をいただいたことに感謝を申し上げて、質問に入らせていただきたいと思います。

まず、障害者差別解消法の第八条、事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするよう努めなければならないと。今は努力義務規定ですけれども、これが四月から義務規定ということになります。

それで、差別解消法の環境整備に関する条文の中には、第五条、行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他必要な環境の整備に努めなければならないと。

そして、鉄道事業法の目的、第一条、この法律は、鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、輸送の安全を確保し、鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進することを目的とするという。

こういう法律に沿ってそれがちゃんと実施されているのかという観点からまず質問させていただきますので、ちょっとまとめて質問しますから、よく聞いておいていただきたいと思います。

まず、視覚障害者がホームから転落する事案は一年当たり平均して何件起きているか。そしてまた次に、視覚に障害のない人と比べると転落している率はどのくらい、健常者ですね、比べてどのくらい高くなっているか。それから次に、視覚障害者の転落死亡事故は年平均で何件ぐらい起きているか。そして、全国の駅のホームの番線数と、現在ホームドアがどんどん設置されていますけれども、そのホームドアが設置されている番線数、そしてホームドアというのは一年に新規でどれくらいホームに設置されているかというのを、ちょっとまとめて教えていただければと思います。

○大臣政務官(こやり隆史君)

お答えいたします。まとめてお答えさせていただきます。

まず、転落する事案でございますけど、一年当たり平均して、十年平均でございますけれども、六十六件発生をしております。

視覚に障害のない人と比べると転落している率はどうかという御質問でございますけれども、なかなか視覚障害のある方の鉄道の利用回数、これの全体像が把握できていないということもありまして、転落率としてお示しするというのが困難な状況になっております。

件数で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、視覚に障害がある方の転落件数は十年平均で六十六件、他方で、全体、済みません、視覚に障害のない方の転落件数は十年平均で二千八百件が発生をしております。

次に、転落死亡事故は年平均で、死亡事故ですね、年平均で何件かということでございますけれども、十年平均で一年当たり二件発生をしております。

また、駅のホームの番線数とホームドアが設置されている番線数につきましては、総番線数が一万九千九百十九番線、そのうちホームドアが現時点で整備されている番線数が二千四百八十四番線となってございます。それで、ホームドア、一年に新規で幾つできているかということでございますけれども、ちょっと年によって違いますが、今把握している直近の令和四年の例でいいますと、百四十七番線が整備されているところでございます。

○大島九州男君

ありがとうございます。

そうなると、元々ホームドアが転落事故防止対策には一番だというふうに思うんですけれども、数十年掛かるというような計算ですよね。

そこで、国交省内には、ホームドアのない駅での安全対策を検討するために、新技術等を活用した駅ホームにおける視覚障害者の安全対策検討会が設置されたと承知しております。そして、この検討会が二〇二一年の七月に中間報告を出していますが、その中間報告をまとめるに当たり、転落経験のある視覚障害者にアンケートを取られたということですが、ホーム上のどの方向に歩いているときに事故が多く起こっているかというところを教えてください。

○大臣政務官(こやり隆史君)

委員御指摘の検討会におけるアンケートでございます。回答いただきました七十四件のうち、ホームの線路と平行の長軸方向に歩いているときの転落が四十七件、六三・五%、線路と垂直の短軸方向を歩いているときの転落が二十七件、約三六・五%となっております。

○大島九州男君

我々の基本的な考え方とすると、真っすぐですね、ホームと平行に歩いているより、ホームの方に向かって歩いている方が転落する数が多いのかと思ったら、そうじゃないということなんですよね。

これ、なぜホームと平行して、線路と平行して歩いているときに落ちるのかというのは分かりますか。

○大臣政務官(こやり隆史君)

アンケートの後、ヒアリングを実施しております。ヒアリングを行いましてその御回答があったケースが三十五件、長軸方向に転落したケースでございますけれども、それを分析いたしますと、中央付近を走行しているときに、ホームの端の方に接近していることに気付かずに転落されるケースが十八件、ホームの点、あのブロックですね、の点状ブロック沿いを走行中にホームの端に接近したということに気付かずに転落されているケースが十五件、ホームのブロック沿いを歩行中に他人との接触などにより転落されたケースが二件あるというふうに承知しております。

○大島九州男君

スイミングしているときに目つぶって泳いでいると何か斜めに行っちゃうという、そういう感じなのかなというふうに思いましたが、それを防止するために点状のブロック、これは危ないよと、ここは止まりなさいみたいな形の点状ブロックというのがあるんだというふうに思いますが、今の話でも、端っこ歩いていて、その点状ブロック周辺を歩いていて転落するということもあったということですけど、このガイドラインでその敷設位置というのを示しているということですが、それはどこに設置しなさいとなっているんでしょうか。

○大臣政務官(こやり隆史君)

御指摘のありましたガイドラインによりますと、ホームの線路側の端からその距離が大体八十から百センチ程度、線路に平行して連続的に敷設するということといたしております。

○大島九州男君

となりますと、我々も経験ありますけど、人がたくさん並んでいますから、ホームの一番端の点字ブロックの間を歩くとき、ちょっと恐怖がありますよね。それを目の見えない人が歩いているということでございますから、このガイドラインで本当に大丈夫なのかと、それを私どもは率直に思うんですけれども、このガイドラインでは、今言うように、視覚障害者はそこを歩けというふうに指導しているということなんでしょうか。

○大臣政務官(こやり隆史君)

ガイドライン上、具体的にどこを歩いてくださいというようなことを規定をしているところではございません。ございませんけど、基本的には、さっき申し上げました点字ブロックの内側を歩いていただくということを想定をしているところでございます。

他方で、実際の駅ホームというのはいろんな駅ホームがございまして、その障害の程度でありますとか介護者の有無、あるいは利用されるときの状況や御自身の経験、そうしたことが違うということから、いろんなそういう要素を背景に安全に経路を選んでいただくということと、選んでいただいているというふうに認識をしております。

例えば、歩行訓練士の方が訓練指導の参考にする歩行指導の手引というのがございまして、そこには、例えば相対式ホームにおきましては壁側を歩行する、あるいは島式ホーム、両側に線路がある場合にはできるだけ移動を避け、まず避けるようにする、移動しなければならない場合は、点字ブロックのような手掛かりがあればその利用法を正しく御理解いただくというふうに規定されているというふうに承知をしております。

○大島九州男君

ホーム転落事故の六三%がホームの中央を歩いているつもりが斜めに歩いて転落をしていると、本来沿って歩くべきではない点状警告ブロックに沿って転落するケースも半数あるということだけれども、ガイドラインではそもそも視聴覚障害者がホームを歩く動線を示していないと。

これ、中間報告の中では、ホーム中央に歩行動線の道しるべとなるマーカー、例えば線状ブロックを設置する案や内方線付き点字ブロックの内側の領域を活用する案が挙げられていますけど、これどちらの案がいいのかという実証実験をやるというようなお考えありますか。

○大臣政務官(こやり隆史君)

今、先ほど先生、委員御指摘の検討会におきまして、引き続き実証実験の実施も含めて議論を深めているところでございます。

他方で、その実証実験を行う場合に当たりましては、さっき申し上げましたように駅の構造等が様々違うということで、試験フィールドとして実際に実証試験をするときにどのような駅を使えばいいのかということとか、あるいは、さっき三方向で転落事故があるというような話がありましたけれども、その背景要因として、焦りであったり疲れであったり、そうしたことがその背景にあるというふうに承知をしております。

こうしたことも踏まえながら、より効果的な実証試験というのはどういうものがあるべきかということについて議論を深めていきたいというふうに思っております。

いずれにいたしましても、現状、安全に、より安全にしっかり視覚障害者の方にホーム上を歩いていただくための方策、これを今検討会で検討しているところでございまして、今、例えば今年の一月にもモデルの取組をしたところでございますけれども、白いつえを適切に使用してホーム上で安全に乗降する方法の普及促進、これをまず、これが重要であるというような御指摘も踏まえながらその検討を進めているところでございます。

○大島九州男君

そもそも、障害者差別解消法の合理的配慮を持ち出す前に、先ほど、鉄道事業法やバリアフリー法に輸送の安全や移動の安全ということが書いてあるわけですから、ガイドラインになくても事業者がしっかりやるべきなんだと、私はこれ事業者の怠慢なんじゃないかというふうに思うんですけど。

私鉄はそういうのを対応しているところがあったりとかする話も聞くんですけど、JR東日本とかJR西日本というのはちょっとそこが遅れていると、大丈夫かということがあるんですけど、そこら辺ちょっと聞いてくださいとお願いしたんですけど、どういう考え方だったでしょうか。

○大臣政務官(こやり隆史君)

先ほど委員御指摘の検討会においても、この御指摘のありましたJR二社も参加をしているところでございます。

例えば、中央に誘導ブロックを敷設するということについても、これは視覚障害者の団体の皆さんからも賛否両論があります。新たに敷設することによってより混乱をさせる可能性があるとかですね、いろんな問題点が上がっておりまして、これを今整理をしながら検討を深めているところでございます。

そうした状況の中で、ある特定の各会社がばらばらに対策を進めていくとなると、視覚障害者御自身の皆様の安全性をより損なうことも、リスクもございますんで、しっかり検討を深めながら各社統一のガイドラインとしてお示しをし、それに従って対策を取っていただくということが重要であるというふうに認識をしているところでございます。

○大島九州男君

それはもうおっしゃるとおりだと思うんですね。もうだから、それでいうなら、もうガイドラインでぴしっと地下鉄もJRも私鉄もこうやりなさいというふうに決めてしまえばもうそうなるわけでありますから、是非、中間報告が公表されて三年たってもほとんど何の具体的な策も講じられていないというのは大変な問題だという意識。

ホームドアの普及を待ちつつも、一日も早く、もう一日も早く視覚障害者が安心して渡れるというか、歩けるようなホームを造ってもらいたいという、そういう強い願いがありますので、是非先生たちのリーダーシップでガイドラインを早期に決めていただくことを要望して、次の質問に移ります。