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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

参議院国土交通委員会 2020年3月10日

○木村英子君

れいわ新選組の木村英子です。会派を代表して質問いたします。

三月三日に、新幹線のバリアフリー対策検討会の中間取りまとめが出されました。赤羽大臣には、障害者の交通のバリアに迅速に対応していただき、ありがとうございます。

障害者の交通のバリアについてはたくさんの課題がありますが、今回は視覚障害者の人にとっての駅のホームのバリアについて質問させていただきます。

障害者差別解消法が施行されて約三年が過ぎましたが、様々な障害者の社会参加に欠かせない公共交通機関を使う際のバリアの解消が急がれています。しかし、まだまだ整備が足りず、痛ましい事故が多発しています。

今年の一月十一日、日暮里駅で視覚障害者の人がホームから転落して亡くなりました。資料一を御覧ください。これは、国土交通省が毎年出している駅ホームからの転落に関する状況という資料から抜粋したもので、ホームからの転落件数の推移を示しています。この資料の図を見ていただくと分かるとおり、転落件数はここ数年横ばいの状態で、視覚障害者の人の転落事故も減ってはいません。

また、資料二は、令和元年の交通安全白書に載っているホームからの転落による死傷者数の推移になります。ホームからの転落による死傷者数はここ数年で二百件前後で推移しており、死亡者数も三十件前後で推移しているということが分かっていただけると思います。

つまり、転落事故の件数も死傷者数もほとんど変わっていないのです。現にここ数か月だけでも、先ほど示した日暮里駅の事故だけでなく、茨城県石岡駅や、新宿駅、京成立石駅などで立て続けに起きています。悲惨な事故が後を絶たないのです。

なぜこのような痛ましい事故が起きてしまうのでしょうか。障害者に限らず、ホームからの転落事故を完全に防ぐには、ホームドアの設置が不可欠と考えます。

そこで、お聞きします。

今、どのくらいの駅にホームドアが設置されているのでしょうか。駅の総数とホームドア設置駅の数を教えてください。

○政府参考人(水嶋智君)

お答えを申し上げます。

二〇一八年度末時点で全国の鉄軌道駅は、総数で九千四百六十七駅ございます。また、その時点で、全国のホームドア設置駅数は七百八十三駅となっております。

○木村英子君

ありがとうございます。

全国の約九千五百の駅のうちまだたった七百八十三駅しかホームドアが付いていないということは、事故が減らないのもうなずけます。

資料三を御覧ください。この資料は東京新聞の記事から抜粋したものですが、日暮里駅で視覚障害者の人が階段を下りた横付近で誤って転落をした事故現場の図です。

そこで、大臣にお聞きします。

視覚障害者の人が駅のホーム上を移動する際、どこを歩いているか御存じでしょうか。

○国務大臣(赤羽一嘉君)

平成二十九年三月に国土交通省からの報告書で、新型ホームドア等に対応する視覚障害者誘導用ブロックの敷設方法に関する調査報告書というのがございます。御存じかもしれませんが、そこの五十六ページ、まとめと提言というところで今の御質問に対してのお答えが書かれておりまして、ここに資料五そのものに載っておりますね、ごめんなさい、それが資料五のところなんですけど、視覚

障害者は、ホームでの長軸方面、ホームの、何というんですかね、平行移動というんですかね、での移動は極力行わないのが原則であるが、従来より、乗車駅と降車駅で階段等の位置が異なることからホーム上での移動は現実には必要であると。また、ホームドアが設置されている駅については、ホームドアに沿って、自分の待ちたい場所まで長軸方向を移動するという実態があることは、平成二十一年度調査結果やニーズ調査からも明らかであるとありました。私のこの先ほどの国土交通省の報告書もそのとおりでございます。

ですから、多分、個々人でいろいろな習慣とか、歩きやすいところとか、慣れた駅の状況とかそれぞれなので一概にはどこということではないと思いますが、現実には視覚障害者の方は、今言われたような原則がありながら、現実にはそこを、何というかな、歩かざるを得ない状況もあるのではないかというふうに思っております。

○木村英子君

そうですね、今大臣がお答えいただいたように、新型ホームドアに関する視覚障害者用のブロックの敷設方法についての報告書のとおりということですが、そうなると、階段から近くの乗車口までのルート以外は歩けないということになります。

資料四を御覧ください。資料四のガイドラインを見ていただくと分かるように、点字ブロックには進行方向を示す線状の誘導ブロックと危険な場所や目的地を示す点状の警告ブロックがありますが、ホーム上に線路と平行に引かれているのはホームの端から八十センチの警告ブロックしかありません。そのため、視覚障害者の人がホーム上を線路と平行移動する際には、仕方なく線路脇の危険な警告ブロックの上を歩かざるを得ないという状況です。

実際にどのくらい危険かについて、筑波大学附属視覚特別支援学校の宇野先生と一緒に私が実際に、事故のあった日暮里駅に視察に行ってきました。

資料六を御覧ください。これは、実際に宇野先生に線路脇の警告ブロックを歩いてもらっている写真です。御覧のとおり、この八十センチ幅では人と擦れ違うのが難しいと思われます。また、介助者が同行した際、肩か腕を持って歩くのですが、並んでは歩けず、横向きになって介助しているのが分かります。

また、写真の矢印のように、つえをホーム脇に落として線路側を確認する場合があります。ここで擦れ違う人との間でアクシデントがあった場合には、当然ホームから転落する危険性が高いことがお分かりになると思います。

視覚障害者の人は、ホームを歩く際、つえを左右に七十センチくらいの幅で床にスライドして点字ブロックを確認しながら進み、障害物を回避しながら歩きますが、点字ブロックの上に人がいたり荷物が置いてあったり、視覚障害者の人のつえが人の足に当たったり荷物にぶつかることが多々あります。ぶつかった際、視覚障害者の人は当然体をとっさによけます。そのとき、通常なら線路側によけることはないのですが、人や荷物との衝突を避けるため線路側によけてしまい、焦って方向感覚を失うなど、何らかのアクシデントにより足を踏み外して転落してしまう場合があるそうです。

日暮里駅で転落して亡くなった視覚障害者の人が階段脇の狭い通路を歩いていたのは、乗車駅と降車駅で階段等の位置が異なることから、線路と並行にホーム上を移動していたと推測されます。

視覚障害者の人の場合、つえを左右に振って点字ブロックや壁などに沿いながら方向を確認しつつ、なおかつ、柱や障害物などの危険を回避しながら歩かなくてはならないのです。目の見える人でも避けるホームの端を目の見えない人が歩くことを余儀なくされており、とても危険です。目の見える私でさえも、視察に行った際、線路脇の警告ブロック沿いを通ったときに、とても狭くて恐怖を感じました。

やはりホームからの転落事故を防ぐためには、ホームドアの設置が絶対不可欠だと実感しました。大臣はどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(水嶋智君)

今の先生の御指摘に際して、事実関係を私どもの方も確認してまいりましたので、まず私の方から事実関係について御説明をさせていただければと思います。

この資料六でございますけれども、これは日暮里駅のホームでございまして、お手元の方に赤い線と黄色の斜めの線が見えております。ここが八十センチの幅がございまして、この黄色の点状のブロックが内方線付き警告ブロックということで、これはホームの端から八十センチ、ホームの内側に付けてくださいというのが我々の方の規則になっております。

また、このホーム全体の幅でございますけれども、ホームの幅は一・五メートル取るようにということが我々の基準で定まっておるんでございますけれども、この左の壁のようなところが、白くちょっとてかった壁のようなものが男性のバッグの後ろの方に写っております。これはちょうどバリアフリー化の工事を日暮里駅でやっておるということで、エレベーターの取付工事をやっているところの箇所でございます。このホームの幅、狭く見えておりますけれども、一応この白い壁とホームの端の間までは、現場では一・六メートルの幅が確保されておるということのようでございます。

この黄色の真ん中の警告ブロックでございますけれども、これ、私どもの考え方といたしましては、ここから先に行くともうホームの端に行ってしまいますよということで、そういう場所であることを警告するためのブロックということで設置の考え方を定めておりまして、私どもの理解としては、この上を歩いていただくというよりは、むしろ、ここから先は危険なので、ここから先、ホームの端の方には行かないでくださいと。点状のブロックの左の方に真っすぐな線みたいなのが一本写っておりますが、これは内方線といいまして、こちら側に来ていただければホームとは反対側なので安全ですよということを一応、視覚障害者の方に示すような、そういうブロックの考え方で設置を進めてきたところでございます。

○木村英子君 分かりました。

今お伺いして分かったのは、それでも一・六メートルしかないんですよね。一・六メートルって、電動車椅子で走ってみたんですけどかなり怖くて、運転するのが難しかったんですね。ましてや電車が通過するときとか、かなり風圧がばあって来ますので、それで私なんかは結構びっくりしてしまって、運転を誤ってしまうときがあります。

視覚障害者の人の場合、その一・六メートルの中の警告ブロックから壁までの間というのは何センチでしたっけね。そんなにないと思うんですよね。今壁に白いのが写っているという、バリアフリーのエレベーターの工事をしていると言いましたけれども、それを取ったにしても一・六メートルというのは結構狭い幅だというふうに私は感じています。

なので、普通の健常者の人でしたら危険な場所を避けてホーム上を自由に動けるんですけれど、視覚障害者の人はこのブロックだけが頼りなんですね。だから、ブロック以外のところというのは歩けないんです。ですから、誘導ブロックではない警告ブロックを歩くというのはとても危険な状態で、これを歩かざるを得ない状況が毎日続いているということです。いろいろと国土交通省で工夫していただいているところではあるんですけれども、やっぱり危険と隣り合わせにいるという状況は今も変わっていないということになります。

次に、資料七を御覧ください。

この写真は、東京メトロ有楽町線の護国寺駅の写真です。この駅には、ほかの駅とは異なり、ホームの中央に誘導のための線状ブロックが引いてあります。この駅の近くには視覚障害者の特別支援学校があり、その学校の要望によって、歩行訓練のためにホーム中央の誘導ブロックが設置されていたと聞いております。この誘導ブロックのおかげで、この駅には、ホームドアが設置される前から今まで転落事故は起こっていないそうです。

ホームドアが設置されていない駅においては、せめてホームドアができるまでの間、護国寺駅のようにホームの中央に誘導ブロックを設置してもらえると、危険な線路際を歩かなくて済みますし、痛ましい事故を防ぐことができると思います。

そこで、大臣にお願いです。ホームドアが設置されるまでの間だけでも、ホーム中央の誘導ブロックの設置を検討してもらえないでしょうか。

○国務大臣(赤羽一嘉君)

まず、そもそもの話ですけど、ホームドアの整備につきましては、元々言うと、なかなかコストも高かったりとか、車両によってドアの位置がそろっていないという課題がありました。

ただ、転落事故というのが続いたことを踏まえて、私も、国土交通省のという以前に、公明党のバリアフリーのPTとして、これはホームドアしっかり進めていけるような時代にしていかなければいけないということで相当強く申入れをし、今は法律の中に、二〇二〇年までに全国八百駅という目標が設置をされたところでございます。

現状、利用者数十万人以上の駅からやっていくということで、今七百八十三駅まででありますので、まだこれ全体から見るとたったと言われるかもしれませんけれども、この間、多分五年間ぐらいだったと思います、二〇一五年ぐらいからだったと思いますから、それなりに着実に始まっているというふうに思っておりますので、西日本でいうと、西日本というのはほとんどホームドアがなかったんですけど、それも最近はホームドアが出てきまして、ホームドアが当たり前の状況になりつつあります。

そうした意味で、まず、ホームドアの整備というのをしっかりと進めるということをやっていきたいと思います。

そして、その間の間、今お示しをいただいた護国寺の駅のように、中央に視覚障害者の皆さん用の誘導用のブロックの整備をということでありますが、これもいろいろ障害者団体の皆さんにヒアリングをすると、ちょっといろんな意見が実はありまして、全てのホームにこれ真ん中で設置できる状況じゃないので、普通は、このブロックというのはホームの端の中にあるということが大半ですから、そこと、何というかな、間違えて、そこが端だと思ってしまってかえって危険だというような御意見も実はあったり、現実に、今、大体ホームの真ん中にはキオスクですとかそうした売店があったりとか階段があったりとか、構造物的にちょっと難しい駅もいろいろありまして、そこに例えばラインを引くと、必ずそこで方向転換をするような形になるんですね。そうすると、方向転換が回数多くなると、視覚障害者の団体の皆さんからは、それがかえって正しい方向が分からなくなるというリスクもあるというような御意見もあって、ちょっといろんな意見があって、障害者団体の皆さんのまず意見をよく丁寧に聞いていかなければいけないということと、あと、現実的にそれが実際可能かどうか。

ちょっと護国寺の場合は、先ほど御説明あったとおりの状況がありましたので、若干特別な状況であれを造ったということでありますので、安全、それが定着するという、今の御意見は御意見としてしっかり承りたいと思いますが、ちょっとそれは少し、視覚障害者団体の皆さんともよく検討させていただければと思います。

重ねてになりますけど、できるだけ毎年着実にホームドアの設置を、二〇二〇年度の目標で終わりではなくて、その後の継続的な目標を掲げて、その設置をしっかりと進めていくということに努力していかなければいけないと、そういうふうに思っているということでございます。

これは、交通政策基本計画、これ、二〇一五年の二月十三日に閣議決定した第二章の中にホームドアを設置するというのが、初めて具体的な数字を入れましたので、これを継続、発展をさせていきたいというふうに思います。

以上です。

○木村英子君

ありがとうございます。

もちろん、ホームドアを付けるにはかなり予算も掛かりますし、時間も掛かると思います。視覚障害者の人が毎日通勤や通学しているときに、すごく怖がりながらそこを通るわけですね、警告ブロックの上を。なので、資料四のところを見てもらうと分かるんですけれども、誘導ブロックが引かれているところというのは、階段脇両側の右か左に曲がる、一、二メートルぐらいしかないんですね。誘導ブロックというのは真っすぐ歩いてくださいというサインだと思うんですけれども、これは、この誘導ブロックは必ず警告ブロックの方、端っこを指していますよね。端っこに行かざるを得ないんですね。ですから、真ん中にその誘導ブロックを引いてもらえれば安全だという視覚障害者の方々の御意見もあります。

ホームの端の内方線を中央の線状ブロックと誤認するということですけれども、通常、階段からホームに着いた後、直角に曲がり数メートル歩かない限り内方線付き警告ブロックには出くわせませんし、ホーム中央の誘導ブロックは階段の延長線上の真っすぐな動線ですから、そもそも直角に曲がる必要はなく、誤認するということはほとんど考えられないと聞いています。

様々な障害者団体からの意見はあるとは思いますが、これからも障害を持った当事者の意見を重視した上でホーム中央の誘導ブロックについても検討をしていただきたいなと思っております。

もう時間がないので、視覚障害者の人たちがこれから駅を安心して利用でき、また、視覚障害者に限らず全ての人の転落事故を防ぐためには、まずホームドアの設置が絶対に必要だと思います。さらに、日常的に危険と隣り合わせで駅を利用する視覚障害者の人たちにとって、護国寺駅で実践されているホーム中央の誘導ブロックは、事故を回避するための最も有効な方法と考えます。したがって、ホームドアを設置するまでの間だけでもホーム中央の誘導ブロックを早急に各駅に設置していただけるよう考えていただきたいと思います。

今日は……

○委員長(田名部匡代君)

申合せの時間が来ておりますので、質疑をおまとめください。

○木村英子君

済みません。はい。

今日は見守りについてもやりたかったんですが、時間がありませんので、次回にさせていただきます。

ありがとうございました。