日本弱視者ネットワーク ロゴ画像

日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

2017年10月6日 国土交通大臣 石井啓一  様 弱視者問題研究会
代表 並木 正(角印省略)

要望書

日頃より視覚障害者の鉄道利用における安全性の向上にご尽力いただき、深く感謝申し上げます。

10月1日、JR阪和線「富木」駅で、視覚障害者がホームから転落し、電車にはねられ、死亡するという痛ましい事故が起こりました。昨年8月の銀座線「青山一丁目」駅、10月の近鉄大阪線「河内国分」駅、今年1月の京浜東北線「蕨」駅に続き、この2年間だけでも4人の視覚障害者が尊い命を落としています。このような悲劇を繰り返さないために、昨年来の繰り返しになりますが、下記事項を要望いたします。ちょうど5年に一度のバリアフリーガイドラインの改定作業が進められていますが、この機を逃すとまた有効な安全策を講じる機会が5年先になってしまいます。

何卒速やかなご検討をよろしくお願い申し上げます。

【要望事項】
・誘導ブロック等によるホーム上の安全な動線確保

(理由) 近年のホーム転落事故は、視覚障害者が比較的慣れた駅でホーム端の警告ブロック沿いを歩いている時に起きています。点字ブロックには、線状の誘導ブロックと点状の警告ブロックがありますが、ホーム端の警告ブロックは本来「止まれ」を意味するものであり、それに沿って歩くものではありません。しかし、誘導ブロックがホームの前方から後方までは敷設されていませんので、視覚障害者は警告ブロック沿いに歩かざるを得ないわけです。多くのホームで、誘導ブロックは、ガイドラインにあるように、階段から数メートルのところで、直角に曲がり、ホーム端の警告ブロックにつながっています。すべての駅で同じ位置に階段があればこれでも問題ありませんが、実際は乗車駅では3両目だけれど、降車駅では5両目というようにずれていることがほとんどです。この状態は交通弱者である視覚障害者が線路までわずか0.8~1mのもっとも危険な場所を歩いているということを意味します。中には警告ブロックの内側は人や柱があるので、更に線路側を歩く人もいます。これがヒヤリハットになっており、転落の危険性を高めているのです。ホームの中央に動線があれば、多少動線からずれても落ちることはありませんし、警告ブロックが真に「止まれ」を意味する警告として機能します。

本来、ホーム転落を防止するにはホームドアが最善ですが、コストやドア数の問題もあり、全国の多くの駅に設置されるまでには相当な時間を要します。ホーム上に誘導ブロック等を使い、安全な動線を確保することはホームドアほどのコストと時間はかかりません。まずはすぐにでもできる可能な限りの対策を速やかに講じていただきたいと考えております。