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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

2015年5月6日 人事院総裁 一宮なほみ 様 弱視者問題研究会 代表 並木 正

要望書

日頃より障害者福祉の充実にご理解を賜り、深く感謝申し上げます。

既にご案内の通り、我が国は2014年1月20日、障害者の権利に関する条約を批准しました。また「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)も成立し、2016年4月から施行されようとしています。障害者差別解消法は、障害者の機会の平等を実現するために公共機関に対し合理的配慮の提供を義務付けており、合理的配慮の不提供は差別に当たるとしています。そこで弱視者問題研究会は、国家公務員採用試験における弱視者に対する差別を解消し、機会の均等を実現するため以下のような合理的配慮を提供していただくことをここに要望します。障害者差別解消法に基づき、今後作成される対応要領においてご配慮いただけますようお願い申し上げます。

●弱視者に対し、文部科学省が定めた拡大教科書の標準的な規格に倣い、18,22,26ポイント、ゴシック体の試験問題を提供すること。

【理由】
弱視者の見え方は一人ひとり異なります。したがって、それぞれの弱視者の見え方に応じた適切な字体や文字の大きさで試験問題が提供されることが必要です。しかし、一人ひとりの見え方に応じた問題を作成することは、過重な負担ともなりかねません。

一方、各種先行研究によると、多くの弱視者にとって読みやすい字体はゴシック体であり、文字の大きさは18~26ポイントにニーズの多くが集中していることが明らかになっています。2008年6月に成立した「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(教科書バリアフリー法)により、文部科学省が定めた拡大教科書の標準的な規格でも、これらの調査結果に基づき教科書出版社は22ポイント、ゴシック体で拡大教科書を作成し、それをさらに0.8倍にしたもの(18ポイント相当)や1.2倍にしたもの(26ポイント相当)も同時に出版するよう求めています。実際に2015年度現在、義務教育段階については全ての検定教科書の拡大教科書がこの標準規格に基づき発行されており、高校段階についても盲学校採択の教科書を中心に拡大教科書の発行が増えてきております。また現在、小6と中3の児童・生徒を対象に実施されている全国一斉学力調査でも弱視児童・生徒用の問題は22ポイントゴシック体で編集されています。

言うまでもなく、試験は人生を決める重要な岐路であり、障害者の将来の自立と社会参加に大きく影響するものです。弱視者にとって「見えにくさ」がハンディとならないような試験問題を提供していただけますようお願い申し上げます。