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日本弱視者ネットワーク
Network of Persons with Low vision

(旧称:弱視者問題研究会・弱問研)

2012年7月15日 文部科学大臣 平野博文様 内閣府 障害者制度改革推進会議差別禁止部会長様 独立行政法人 大学入試センター長様 弱視者問題研究会 代表 並木 正

弱視者のための試験問題に関する要望書

日頃より弱視児童・生徒の学習環境の充実につきまして、ご理解とご尽力を賜り、深く感謝申し上げます。

既にご案内の通り、弱視児童・生徒の見え方は一人ひとり異なります。よって厳密に言えば、それぞれの弱視児の見え方に応じた適切な字体や文字の大きさも一人ひとり違うと言えます。しかし、各種先行研究によると、多くの弱視者にとって読みやすい字体はゴシック体、文字の大きさは18~26ポイントにニーズの多くが集中していることが明らかになっています。2008年6月に成立した「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」(教科書バリアフリー法)により、文部科学省が定めた拡大教科書の標準的な規格でも、これらの調査結果に基づき教科書出版社は22ポイント、ゴシック体(B5判)で拡大教科書を作成し、それをさらに0.8倍にしたもの(18ポイント相当)や1.2倍にしたもの(26ポイント相当)も同時に出版するよう求めています。実際に2012年度現在、義務教育段階については全ての検定教科書の拡大教科書がこの標準規格に基づき発行されており、高校段階についても盲学校採択の教科書を中心に拡大教科書の発行が増えてきております。

また現在、小6と中3の児童・生徒を対象に実施されている全国一斉学力調査でも弱視児童・生徒用の問題は22ポイントゴシック体で編集されています。

しかしながら、大学入試センター試験では、10ポイント程度の問題用紙を単純に1.4倍に拡大コピーしたものしか提供されていないため、弱視生徒にとっては問題を読み間違えたり、読み速度が遅くなるというハンディが生じています。また、事実上センター試験がナショナルスタンダードとなっているため、それに準ずる国公立大学の二次試験や私立大学入試、高校入試などにおいても弱視生徒に適切な試験問題は提供されていません。言うまでもなく、試験は次の進路を決定する重要な岐路であり、将来の自立と社会参加に大きく影響するものです。

つきましては、文部科学省が定めた拡大教科書の標準的な規格に倣い、弱視受験生には18,22,26ポイント、ゴシック体の問題を提供していただけますようお願い致します。この現状は差別を禁止している障害者権利条約や改正障害者基本法の理念にも反していると思いますので、2013年に予定されている障害者差別禁止法の立法時においてもご配慮いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。

また、国家試験や様々な資格試験においても現状は障害者が受験できる環境が整っていなかったり、特別措置対象者の定義や時間延長の倍率、解答方法の配慮なども不統一な状態になっています。将来的な共生社会の実現に向け、国全体の試験における障害者への適切な配慮のナショナルスタンダードについても抜本的な検討を開始していただけますよう併せてお願い申し上げます。

(連絡先) 弱視者問題研究会 <<住所等省略>>